「ずっと追い続けてきた小説の可能性――伊坂幸太郎の20年」特集番外編
更新日:2020/7/14
20年間、変わらない外見
それ以上に変わらない「実験を続ける」作家スタンス
編集 I
伊坂幸太郎さんのデビュー作の『オーデュボンの祈り』が刊行されたのは、2000年12月。今年2020年は、伊坂さんの20周年イヤーだ。伊坂さんの『ダ・ヴィンチ』初登場は、2001年4月号(3/6売)。『ダ・ヴィンチ』は、毎年の年末号で「来年の隠し球」を各版元に取材するのだが、2000年末に新潮社の新井さんから注目の新人作家として推薦されたのが、伊坂さんだった。年始に『オーデュボンの祈り』を手に取り、その不思議な読み心地に魅かれ、インタビューを申し込んだのだ。
その後も新作の刊行や映像化のタイミングで取材させていただくことが多かったので、20周年テーマの本特集では、そうしたバックナンバーの記事をベースに伊坂さんにインタビュー、そのときどきの発言を振り返り、現時点から当時の自分を分析してもらった。当該号の写真も掲載しているのだが、伊坂さんの風貌はほとんど変化がない。ヘアスタイルも体型もほぼ変わらず、お好きなファッションもずっと同じなのではと思う。
でも、同じなのは外見だけではない。伊坂さんの作家としてのスタンスも、ずっと変わっていない。ロングインタビュー冒頭、「誰も知らないかたちのミステリーを目指して、実験を続ける」と見出しをつけたが、この姿勢でいまも新作に挑んでいるのだ。
今回の特集では、そんな伊坂さんってどんな人なのか――それを探るべく、仕事やプライベートで伊坂さんとお付き合いの深い方々に、交流のエピソードをうかがっている。互いにリスペクトし合う関係として知られ、コラボ企画も多い斉藤和義さんや、傍らで仕事を見ていた担当編集者の方々から、ライブ仲間として一緒にフリーペーパーも作った大塚いちおさんや雑談友達という水野敬也さんまで。伊坂作品を多く手掛けるブックウォールの松昭教さんや『クジラアタマの王様』でタッグを組んだ川口澄子さんは、ロングヴァージョンをWEBで掲載しているので、こちらもぜひ。
伊坂ファンとして、登場いただいたのは、声優の佐倉綾音さん、アイドルの小池美波さん、YouTuberのフワちゃん。話題のお三方には、好きな伊坂作品を紹介いただくとともに、影響を受けた作中の言葉もあげてもらった。
そして、書き下ろし短編「猫は気楽でうらやましい」。
『マリアビートル』の殺し屋コンビ・蜜柑と檸檬が登場する一編。伊坂さんの大江健三郎愛が溢れる作品でもあり、いま注目したい大江作品も示されている。
今回の特集では、たくさんの方々に多大なご協力をいただきました。この場を借りて、深く御礼を申し上げます。