人気コピーライターの企画書も公開!あなたの人生を大きく変える「超言葉術」

ビジネス

公開日:2020/7/13

『心をつかむ超言葉術』(阿部広太郎/ダイヤモンド社)

「愛」と書かずに、「愛」を伝える。

 かつて夏目漱石は「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と訳したという。
――今のあなたなら何と訳しますか?

 とあるセミナーで講師をつとめる著者の問いかけに、受講生たちは「愛とは何だろう」と自問自答する。

「半分こにしようか」「卒業したから、生徒じゃないです」「全部あなたと出会うためだったんだ」「今、会えない?」…

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 それぞれの答えに味わいがあり、各人が大切にしている思いや情景が温かく胸に広がる。自分だったら何と訳すだろうか、著者の企てに冒頭から心地よく引き込まれていく。

「愛する」とあえて書かずに伝えることで、キャッチフレーズという言葉通り、僕たちの心はどうしようもなくつかまれてしまう。
書かずに伝えること。
一見矛盾しているようにも感じるこのことこそ、心をつかむ言葉の秘密なのではないか。

 話題のビジネス書、『心をつかむ超言葉術』(阿部広太郎/ダイヤモンド社)は、発売から5日で重版が決定、高評価のレビューを集め、目利きの書店員からの注目度も高い。阿部氏は、流行語「今でしょ」を生んだ某予備校CMなど、数多くの広告を手掛けてきた気鋭のコピーライターである。その著者自らが、「この本に綴る『言葉術』を知ることで、人生は大きく変わっていく」と明言するほど、力のこもった1冊だ。

企画書はラブレター。自分と向き合い、愛と熱をこめてつくる。

 自己紹介、プレゼン、書類作成、日々のメールやSNSの発信まで、現代に生きる私たちは、「伝える」と「伝わる」の間で常に悩んでいる。

「伝える」と「伝わる」の境界で、僕が10年以上の月日をかけてあがきもがいてつかんできた、そのすべてをここに記したい。

 著者は、自身が学び得てきた「言葉術」を、読者の悩みに寄り添いながら、ひとつひとつ丁寧に誠実に伝えようとする。身近なテーマを題材に、「言葉とは何か」という本質にせまりつつ、「伝わる言葉」について次々に提示される答えやヒントは明快だ。

 圧巻は最終章の「企画書はラブレターだ」。

 企画とは、「幸福に向かう矢印」であり、企画書とは、その矢印を共有し、実現に向かうための書類だ。…血の通った信頼関係をつくるために、僕は企画書をラブレターだと思い書き続けている。

「愛と熱のこもった」企画書に刻まれた言葉が、クライアントの心をしっかりつかむ。そんな最高の瞬間を、読者は目の当たりにする。とことん自分と向き合い、企画の意味を考え抜き、言葉を追い求める著者の姿が胸を打つ。

「ドレスを1枚ずつ脱いでいくように」書かれた企画書。そこには、次のページをめくりたくて仕方がない刺激、ドラマがある

読書の枠を超える、新しいスタイルのビジネス書

 高橋源一郎氏が『一億三千万人のための 小説教室』で語ったように、小説は「ここではないどこかへ行きたい」という読者の願いをかなえるものだ。一方、ビジネス書に対して読者が求めるものは、今いる場所でよりよく生きるための、有益な学びと新しい視座だろう。

 ところが著者は、こうした読書の枠を超えて、より実践的な場所へと読者を温かく誘う。本書に共感した多くの読者が、思いを言葉で伝えようと次々に発信し、本書を中心に新しい企画や交流の場が生まれ、パワースポットのようなたたずまいを見せているのだ。

 本書を読み終えた時、あなたの目の前には、きっと絶景が広がっているはずだ。そこで見た景色について、あるいは、「I LOVE YOU」の訳し方について、あなたの思いを言葉にしてみよう。

文=鈴木美由起