「無理してがんばらなくても死なないよ?」 私が毎日機嫌よく生きるためのヒント

暮らし

更新日:2020/7/31

『がんばらなくても死なない』(竹内絢香/KADOKAWA)

「がんばらないことを、がんばれたらいいね」
昔、知人に言われたその言葉が、今もずっと筆者の胸に残っている。自分に向けてくれたやさしさが、とてもうれしかったから。でも、完璧主義を目指す自分を捨てることができなくて、気づけばいつも高いハードルを越えようと全力疾走してしまう。
 
 だから、『がんばらなくても死なない』(竹内絢香/KADOKAWA)で、がんばることを諦めてもいいんだと言われた時、涙が出そうだった。ずっとなりたくてたまらなかった自分に近づけるやさしいヒントが、本書には溢れていたのだ。

「がんばる」をデフォルトにしない生き方

 実は作者の竹内さんも、根が真面目ながんばり屋さん。脱サラして夢だった漫画家になったが、それまでずっとコツコツがんばる人生を送ってきたため、売れずに仕事がない状況を「がんばっていない」と捉え、強烈な自己嫌悪に襲われてしまった。

 自分は人より劣っているのでは? もっとちゃんとしないと…そう思い、必死にがんばったが、やがて心身ともに限界に。その結果たどり着いたのが、ずっと無理してがんばり続けるのは不可能だという答え。そこで、できない自分を責めてがんばることをデフォルトにするのはやめ、無理しない暮らしを楽しむようになった。

advertisement

 竹内さんはこれまでの経験を振り返りつつ、生きることが楽になるようなヒントを多数伝授。仕事、人間関係、自分の在り方など、あらゆるシーンで悩んだ時に活かせる「がんばらないコツ」は、ムチを打ち続けてきた自分の心に響く。

他人と比べて劣等感を抱いてしまう時は…?

 あの人と比べたら自分なんてちっぽけでみじめ…そんな想いを抱いたことがある人は多いはず。近ごろは多様な生き方が認められつつあるものの、世間から押し付けられる「こうあるべき」という圧力は強く、生き方に自信が持てなくなってしまうこともあるだろう。

 竹内さんも、友人が出産ラッシュを迎えた際、周りが「立派な大人」になっているように感じ、普通にできていない自分には人間的に欠陥があるのではないかと考えこんでしまったそう。


 しかし、よくよく考えてみると、自分はキャリアと子育てを両立する生き方より納得のいく作品作りをしながら、マイペースによく働きよく遊ぶ人生を送りたいと思っていることに気づく。自分の基準で「いい」と思える毎日を大切にしよう――そう受け止められるようになったのだ。

 適切な自己評価をすることはとても難しい。だから、誰かから賞賛を得たり、完璧な自分を見せたりすることで自分自身や人生の価値を測ろうとする。だが、そんな他人基準で自分の道を歩み続けるのはもったいない。自分の人生は自分で彩るもの、思いっきり自分色に染めてもいいのだ。生き方に迷った時こそ、そんな視点を忘れないようにしたい。

「日常のハードルの高さ」を見直そう

 日本は丁寧な国だ。それは長所であり、短所でもある。以前、竹内さんはイギリス留学した時に日本とイギリスの「日常のハードル」にかなりの高低差があることに驚いた。

 もちろん個人差はあるが、例えば、イギリスではお弁当がイチゴだったり、すっぴん&素足にサンダル通勤の人が多かったりしたそう。だから、帰国してあらゆるものが丁寧な日本の「日常」に触れた時、自分たちに求められているハードルがものすごく高いのではないかと気づいた。

 いつもキレイな身なりでいて、仕事も家事も完璧にこなすことは、たしかに素晴らしい。けれど、そうできない日もあって当たり前。気づけば常に高いハードルを求められ続けている私たちは、「できないこと」に着目し自己嫌悪してしまうけれど、それよりも「できたこと」に目を向け、時には力を抜いたり、自分を褒めたりしてあげてもいいはず。

 そして、完璧であれないのが人間だからこそ、自分だけでなく、周囲にもやさしい視線を向けられるようになりたい。苦しんでいる誰かを「もっとがんばれ」という一言で片づけるのではなく、がんばる以外の心がすり減らない対処法を一緒に探していけたら素敵だ。

 忙しさに溺れて心身を大切にすることを忘れてしまっている私たちに、本書は「自分の愛し方」を教えてくれる。「がんばらなくても死なない」。タイトルでもあるこのフレーズは、ついがんばってしまう日の“万能薬”として心にしまっておきたい。

文=古川諭香

【こちらも読みたい】
▶「うつ病」は便利な病名!? 10年間薬を飲み続けていた患者が、実は…