50万円の葬式が結果200万円以上に!? 慌てる前に備えておきたい「親の死後」について

マンガ

更新日:2020/7/28

マンガでわかる 実家のたたみ方
『マンガでわかる 実家のたたみ方』(宮島 葉子(著),白沢ふかみ(企画・原案)/講談社)

 新型コロナウイルスだけでなく、大きな災害にも見舞われている昨今。いやがうえにも「死」というものが、実は身近にあるものだということを痛感させられる。そしてそれは私自身もそうだが、身内に対しても同様だ。日本人はあまり不吉なことを話したがらない傾向があるので、日頃から「死」について親と話す人は少ないかもしれない。しかし遠方にいればいるほど、そういうことを親が存命のうちに相談しておくほうがよいはずだ。『マンガでわかる 実家のたたみ方』(宮島 葉子(著),白沢ふかみ(企画・原案)/講談社)は、葬式や実家をどうするかといった親の死後に訪れるさまざまな問題を描くことで、多くの示唆を我々に与えてくれる。

 本書に登場するのは古里ユキ江と東野咲子の二例。それぞれ父親が急死し、その対応に追われるという流れだ。もちろん問題は多岐に亘るので、ここではポイントを絞って紹介していきたい。

葬式費用を見誤り、費用が4倍以上に!

 古里ユキ江は51歳だが独身で、都内に暮らしていた。そんな彼女のもとに突然、父親の訃報が届く。彼女には妹がいたが、妹も都内在住であり、実家は跡取りがいなかった。喪主および施主はユキ江が務めることになり、姉妹は相談して、参加者10人程度、50万円の家族葬で費用を抑えることに。しかしそれが仇となった。実は彼女たちの実家はいわゆる「本家」であり、多くの親戚が存在したのだ。どこから聞きつけたのか、父親の葬儀に多くの縁者が訪れることとなり、参加者は10人を軽くオーバーしてしまったのである。結局、初期のプランに多くの追加料金が発生し、50万円どころか200万円を超えることに。このほかにも「戒名」の費用や位牌の費用など、とかく葬式には金が掛かるのだ。

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もしも親が「認知症」を患っていたら?

 東野咲子は2年間病床にあった父親を亡くしたが、弟と共に無事、葬式を終えることができた。落ち着いてから、父親が遺したカバンを確認すると、中から「遺言書」が。それによると全財産を妻に相続させる旨が記されていたが、その妻である咲子の母親は「認知症」を患っていた。咲子たちは口座名義などを変更するため銀行へ行ったのだが、名義変更には母親の自筆署名が必要だったのである。母親はすでに自筆署名ができない状態であり、咲子たちは銀行側から「成年後見人」を立てるよう勧められる。成年後見人とは、判断能力の十分でない人が不利益を被らないように援助人を立てる制度のこと。自分たちでも手続きはできるが煩雑なため、できれば司法書士に頼むのがよいだろう。結局、後見人には咲子がなり、無事に相続を終えることができたのだった。

居住者のいなくなった「実家」をどうする!?

 古里ユキ江の実家は跡取りがなく、空き家状態となっていた。しかしそのまま放っておけるわけではない。敷地はやたらと広く、近隣から樹木や雑草に対するクレームが頻発。さらにホームレスが住み着くなど、防犯上の問題も発生した。そのためユキ江姉妹は実家を売却することを選択。幸運にも家付き物件として扱われ、更地に戻す費用は掛からなかった。しかし家には大量の荷物があり、その処分をしなければならない。姉妹は連休などを使って遺品整理を進めていくが、それでもまる1年を費やしたという。もちろん業者に頼むことも可能で、時間に余裕のない場合は検討してもいいだろう。

 本書を読んでみて、自分自身にも当てはまる状況は結構あると感じた。いずれ私もそういう事態に直面するのは、避けられないのだ。そしてさらに考えさせられたのは、本書の原案である白沢氏が亡くなっているということ。コロナなどの状況を鑑みれば、私自身も「死」に無関心でよいはずはない。まだ肉親が存命のうちに、親の、あるいは自分自身の死後について真剣に話し合う必要があるのではないか、と思わずにはいられないのである。

文=木谷誠