コロナ禍で加速する社会のオンライン化。求められる“個人の武器”とは?
公開日:2020/7/29
ふたたび感染者数の増加が懸念されているが、社会は徐々に「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」へ向かいつつある。コロナ禍による職場のリモート化をはじめとする“働き方”の変化は、そう遠くないうちに私たちの価値観すらも大きく転換させるはずだ。
これまでの常識が通用しなくなる時代に、ビジネスパーソンはどのように対応していくべきなのか? そのヒントを与えてくれるのが、『あえて数字からおりる働き方』(尾原和啓/SBクリエイティブ)だ。
コロナ禍が“個人で稼ぐ”時代へと拍車をかける
さまざまな場面で、世の中のオンライン化に拍車をかけた新型コロナウイルス感染症。オンライン化は必ずしもメリットばかりではなく、テレワーク化できない職種や職場についての議論もたびたび起こっており、一律の解決策がないというのも事実だ。
今まさに目を向けるべきなのは、“働き方”ではなく、個人の“稼ぎ方”ではないかと本書を読むと強く感じる。なかでも注目したいのは、現代は「人的資本主義」に突入しつつあるという著者の主張だ。
著者が述べる人的資本主義とは、個人の持つ資質や時間を浪費しながら働くのではなく、個人の力を投資やリターンによって拡大させ、再投資させていく「拡大再生産型」の経済体制を表す。資本主義の本質である「投資をリターンして資本を増やしていく」という仕組みに、従来の価値であるお金やコンテンツ、事業といった原資だけではなく、「個人の資質」が加わったという見方だ。
そして、これからは個人同士で「1対1」で積み重ねた信頼が、やがて連鎖して掛け算のごとく複利的に大きな成果へ繋がる時代がやってくると著者は見通す。
ネットは自分の“好き”が誰かの心に刺さる場所
個人でも“稼げる”ようになった時代では、オンライン上でのコミュニケーションスキルが必須となる。著者はみずからを“コミュ障”と謙遜しながらも、ネットを効果的に活用するための心得を説く。
ネットの長所は、「自分が放電した『好き』が、すでにアンテナが立っている人(同じ『好き』を持つ人や似たようなことを考えている人)に雷となって落ちる」ことだと、著者は語る。思いつくままに誰もが検索できるようになった現代では、特にふとした瞬間にポッとつぶやいた一言が、誰かの心に刺さりやすいのだ。
ただ、自分の発言が誰にも響いていないと心が落ち込みそうになる瞬間もある。それでも、次はどう投げれば受け止めてもらえるかな? と考えればよく、そのコツをつかむまで繰り返すことで自信や表現する力、勇気が少しずつ鍛えられれば、「いつしかその力をリアルコミュニティでも活かしていくことができる」と著者は背中を押してくれる。
新しい生活様式が浸透しつつある今、オンライン環境を活かして存在感を示す必要性はますます高まりつつある。めまぐるしく社会が変わり始めたこのタイミングに、本書を通して新たな“ビジネスパーソン像”を目指してみたい。
文=カネコシュウヘイ
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