遺言を書かないで死んだ場合はどうなる? 自分で「シンプル遺言」を書く手引き

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更新日:2020/7/30

自分で書く「シンプル遺言」 簡単なのに効力抜群!
『自分で書く「シンプル遺言」 簡単なのに効力抜群!』(竹内亮/講談社)

 自粛期間中に「断捨離」を決行し、少し身軽になったという人も多いだろう。そろそろ子育ても終了という50代を超えてくると、お腹や背中に無駄についたお肉だけでなく、心身のプチ不調だったり親の介護だったり、何かと煩わしいことが増えてくるもの。だから少しでも身辺が整理されるとシャキッとするし、気持ちにも余裕が出てくる。

 そんなお年頃のみなさんが、もしかしたらそろそろリアルに考えていいのかもしれないこと。それは「自分も死ぬ」ということだ。今回のコロナによって、多くの人が「死は隣にある」ことを実感したのではないかと思う。実際、私(現在51歳)が今回の断捨離で意識したのは「この服はあと何回着られる? 今のうちに楽しまなきゃ」と今までにはない「終わり」のことだった。

 いつか絶対に「終わり」はくるのだから、だったらその現実にしっかり目を向けて生きていくのは、かなり前向きなことなのではないだろうか。人生の終わりへの意識が芽生えてきたら、こんな準備をするのもアリだと教えてくれるのが『自分で書く「シンプル遺言」 簡単なのに効力抜群!』(竹内亮/講談社)。「遺言なんて、いくらなんでも早いでしょう」とハードルを感じる方もいるかもしれないが、何があるかわからない時代だからこそ、意識しておくのは大事なことかもしれない。

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 一口に「遺言」といっても、どう書いたらいいのかわからない、という方がほとんどだろう。実際、複雑な遺言を書く場合には複雑な法律の知識が必要となる。しかし、シンプルな内容であれば、基礎知識を押さえれば誰でも自分で書くことができる。本書はタイトルの通り遺言を「自分で書く」ための一冊であり、必要な法律の基礎知識を押さえながら、書式、文例、保管方法などをコンパクトに教えてくれるのだ。

 ちなみに遺言を書かないで死んだ場合はどうなるのだろう。その場合でも相続は起きるので、民法に従った「法定相続」をすることになる。民法では「子と配偶者の相続分は、各2分の1」といったように、相続分の「割合」を決めているが、実はこの割合というのが難しい。明確に分けられない資産を巡って、遺族間で争いになることも珍しくないというのだ。おまけに自分の頭で考えて書けるうちに書いておかないと、認知症が出始めたら、「誰かに恣意的に書かされたものだ」とあらぬ疑惑を呼んでトラブルの元になりかねない。

「『死』というものは、むしろ残された周りの人のためにあるものなのでしょう。他人に迷惑をかけたくないという意識が、日本人は人一倍強いから、そこまで想像力を働かせれば、遺言を作るのは大切なことだと思えるのでは」と、本書のコラムで著者と対談した精神科医の名越康文氏は述べる。残された家族が自分の死後も仲良くいてもらうために、できることをちゃんとやっておくのは大事なことだろう。

 折しもこの7月から「自筆証書遺言書保管制度」という自筆の遺言書を法務局で預かってくれる制度(なんと保管手数料3900円とお手軽!)が始まり、より遺言が残しやすい環境が整った。気軽に「遺言」を考えるいい機会だろう。とにかく人生、何があるかわからない。いたずらに不安になったり落ち込んだりすることなく、むしろ「終わり」をきちんと意識していけば、今が輝くに違いない。

文=荒井理恵