仕事で達成感を得るにはあの口癖をやめること。禅僧が教える不安に負けない心の整え方

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公開日:2020/8/7

禅僧が教える不安に負けない心の整え方
『禅僧が教える不安に負けない心の整え方』(枡野俊明/主婦の友社)

 情報にあふれる現代社会において“禅”の世界に心惹かれる人は多いだろう。無駄のない空間で衣食住をして1日の始まりには丁寧に掃除をして心を整える。そんな静かで研ぎ澄まされた生活に憧れて禅修行へ足を運ぶ人もいるだろう。

『心配事の9割は起こらない』など多数の著書で知られる禅僧の枡野俊明氏は、禅僧でありながら庭園デザイナーでもある。2006年ニューズウィーク「世界が尊敬する日本人100人」にも選出された。彼は日々の仕事を、禅を取り入れた“不安に負けない心の整え方”でこなしている。

『禅僧が教える不安に負けない心の整え方』(枡野俊明/主婦の友社)は、情報社会のなかで不安にとらわれている人々の心を救う1冊。本書には、何があっても揺らがない心で生きるためのヒントがちりばめられている。

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「忙しい」を口癖にしてはいけない

 たとえば、我々が口にしてしまう「忙しい」という言葉。著者はこの「忙しい」を口癖にしないように諭す。彼によると、仕事はひとつ終わらせてから次に移るのがよいという。あちらこちらに手をつけ同時進行すると注意散漫となり、どれも雑になってしまう。その結果、どれひとつ満足いかない仕上がりになるのだという。

 そのような事態にならないためには「効率」だけに縛られないこと。効率を優先しすぎると、それぞれの物事が少しずつおろそかになるという。それを避けるためには、朝の時間に余裕を持ってその日1日の過ごし方をイメージすること。やることが多くても優先順位を決めることで、1日の終わりに「やれるだけのことはやった」という達成感が得られるという。

 効率は落ちるかもしれないが、何かに追い立てられバタバタする1日と、気持ちにゆとりを持って過ごす1日では質が違う。自分のやっていることに満足していないと心の隙間に不安が入ってくる。「今日もなんだかダメだった…」と気落ちする前に、目の前のひとつひとつに向き合ってクリアしていくよう心がけよう。

仕事の「丸投げ」はNG

 また、仕事を誰かに「丸投げ」するのはNGだ。禅語には「行解相応(ぎょうげそうおう)」というものがあるという。実践と理論、修行と悟りが一致することが、禅における理想なのだそうだ。著者は「言行が一致している人を、人は信頼してくれます」とし、やりたいことの実現に向けて行動すると周囲の人たちが信頼を寄せてくれるという。

 誰かに「あとはよろしく!」と丸投げすると、相手は黙ってやっているようでも心はついてきていないかもしれない。自分を棚に上げず、互いに誠実にはたらきかけるような行動をとることで、その場に信頼や心地よさが生まれる。

 禅修行の毎日の掃除は「心の塵」を払うつもりで行うという。部屋と同様に心の雑多なモノを手放していくとすがすがしい毎日を送ることができる。モヤモヤに引っ張られずに、目の前のことを粛々と誠実にこなしていく。それが「不安に負けない生き方」であろう。

文=ジョセート