「わかりやすいグラフ」に騙されている可能性大!? 悪用厳禁、グラフのウソを見破る技術
公開日:2020/8/5
フェイクニュースの横行などが目立つ現代では、情報に「いかに騙されないか」がいっそう重要になってきた。個人の「メディア・リテラシー」が議論される機会もたびたび目にするが、何が正しくて、何が間違っているのかをみきわめるのは一筋縄ではいかない。
コロナ関連のニュースなどでもよく目にする“グラフ”にも罠が潜んでいるかもしれないと警鐘を鳴らすのが、『グラフのウソを見破る技術 マイアミ大学ビジュアル・ジャーナリズム講座』(アルベルト・カイロ:著、薮井真澄:訳/ダイヤモンド社)である。
数字や内容をじっくり見ないと騙される!
百聞は一見にしかず。まずはひとつのグラフを紹介してみたい(グラフは、本書を参考に筆者が作成)。
このグラフは実際に米議会の公聴会で使用されたものを、一部改変したものだ。当時、議会では「がん検査・予防サービス」の件数が「中絶件数の増加」と同じペースで減っていることが強調されていたのだが、数字を見るとその違和感に気が付くはずだ。
グラフ内では「中絶」の件数が2006年時点で28万9750件で、同時点で「がん検査・予防サービス」は200万7371件となっているが、縦軸の目盛りはない。つまり、このグラフは範囲の異なる2つの変数に異なる縦軸の目盛りを使っているのだが、正しく目盛りを表示すると、以下のとおりとなる。
縦軸を整理したグラフを見ると、もうひとつわかるのが「中絶」の件数に関しては微増となっていることだ。ぱっと見た印象だけではなく、内容の意味をきちんと読み込む必要があるとよくわかる事例だ。
よく見かける3次元グラフは「グラフ界の元凶」
続いて、紹介するのはある企業の売上高を記録した折れ線グラフである。まずは以下のグラフを、見てもらいたい。
見映えが良いのでプレゼン資料などでも使われる3次元グラフだが、著者はこれを「グラフ界の元凶」とまで言い切る。直感的に見ると“成長を続けている企業なのか”と思えるかもしれないが、このグラフにも落とし穴がある。同じデータを平面に直すと、以下のとおりになる。
3次元グラフの例では手前側に見える2017年が「過去最高」とうたわれていたが、平面に戻してみると、表示された期間内でいえばまったくのデタラメであるのがわかる。本書で著者は、視覚効果に強く訴えるグラフは「派手で劇的だが、とうてい情報は伝わらない」と注意を促す
さて、今回紹介したのはほんの一例。本書では実に175個にも及ぶ事例から、巷に溢れるグラフの“危うさ”を伝えている。事実や物事の真偽をみきわめるために、ぜひとも役立ててほしい。
文=カネコシュウヘイ
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