ゾウとカエルが戦ったら、どちらが勝つ?! 体格差を排したトンデモ異種格闘技戦、ここに開幕!
公開日:2020/8/5
読者の皆さんは子供のころ「ゾウとライオンどちらが強いか?」などと考えたことはあるだろうか。小生もそんなことを考えていたが、後に「1対1ならゾウが強い」と知る。いくら百獣の王といえども、あの巨体に正面からぶつかって勝てはしない。しかし、体格差がなければどうだろうか。
『篠原かをりの「史上最強はコイツだ!昆虫・爬虫類・哺乳類 異種格闘技バトル図鑑」』(篠原かをり:監修/宝島社)は、昆虫・爬虫類・哺乳類を同じ体重と仮定し、バトルをシミュレーションしている。体格が違えばパワーの差は歴然だが、同じなら対等に戦えるはず。あとは、その動物の持つ特性で勝負は決まるのだ。
だが監修の篠原かをり氏は、前書きでこう断言する。「この異種格闘技バトルの最終勝者が一番強い生き物ではないということだ」と。なるほどもっともな話で、お互いの相性や戦う場所によって勝敗が決まることも多い。たとえば海の王者たるサメも、陸上では戦えないのが典型だろう。また「戦った時の強さもあれば、戦わないという強さもある」と篠原氏は述べる。この考え方に小生は惹き込まれてしまった。
ここで監修者である篠原かをり氏について説明しておきたい。ご存じの方も少なくないだろうが「女ムツゴロウ」との異名を持つタレント兼作家で、TBS系『日立 世界・ふしぎ発見!』においてミステリーハンターとしての活躍を目にした方もいるはず。深すぎる「動物愛」ゆえに、自身でも昆虫を400匹、他にも小動物を多数飼育中。勿論、動物に関する著書も共著を含めて出版を重ね、講演活動も精力的である。そして、とても眼鏡の似合う美人なのだ。
本題に戻ろう。本書最初のバトルはゴキブリ対人間である。バトルの規定通り人間と同じ大きさになったゴキブリなど、それだけで怪人めいており結果は想像できるだろう。人間も隠し持っていた市販の殺虫剤で挑むが焼け石に水で、かなわないと知るや逃げ出してしまった。実際に、殺虫剤への耐性を持ったゴキブリが増えており問題となっている。現実社会において、この対決はまだまだ終わらないようだ。
では、ゾウとカエルの戦いはどうだろう。実は、カエルといっても馴染みの「アマガエル」ではなく熱帯雨林産「モウドクフキヤガエル」なのに注目。このカエルは外敵から身を守るために皮膚に毒を持っており、原住民が狩りの際にその毒を矢じりに塗って利用するほど強力な代物である。そんなカエルに迂闊にも噛みついてしまったゾウは、瞬く間に卒倒してしまった。その後、毒が雌雄を決するバトルがいくつかあるが、それだけでは済まないのがこのバトルの面白さである。
2回戦に進出したモウドクフキヤガエルは、動物から吸血する「ヒトノミ」と対決する。どちらも瞬発力と跳躍力に優れているのだが、ノミはさらに持久力も加わるのだ。カエルが疲れて動きが止まったところで、ノミが飛び掛かり吸血を始める。ゾウをも倒すカエルの毒も、昆虫であるノミには通用しなかったのだ。どうやら毒にも相性というものがあるらしい。
当然ながら、本書でのバトルは架空の話である。そもそもゾウに匹敵する体格を持ったカエルなど、それはもう怪獣というべきだろう。しかし、それぞれ動物たちの能力は事実に基づき、その体格に合わせた威力を発揮させたもの。ましてや、毒に関してはそのままでも十分な危険性を持つものが多い。毒を持てば角や牙、腕力などがなくても効率よく自分より大きな敵を倒すことができる。我々人間など、それを受けてしまえば、あとは医学の力に頼るしかない。皆さんはバトルに参戦しようとは思わぬように。
文=犬山しんのすけ