26歳のヤクザがお嬢のために高校に裏口入学!? ——過保護すぎる保護者の行き着く先は同じ学校に通うこと?

マンガ

公開日:2020/8/7

お嬢と番犬くん
『お嬢と番犬くん』(はつはる/講談社)

 充実した高校生活とキケンな極道生活…両極に位置するふたつの生活を両立するのは、なかなかスリルがありそうです。『お嬢と番犬くん』(はつはる/講談社)は、組長の孫娘と組の若頭の恋物語に高校生の青春を織り交ぜた作品です。

 主人公の瀬名垣一咲(せながきいさく)は、幼い頃に両親を亡くし、祖父に引き取られてすくすく育った高校1年生。一見普通の女子高生に見える彼女には、秘密があります。一咲の祖父は、“三代目瀬名垣組組長”。泣く子も黙るヤクザの孫娘だったのです! そんな家庭の事情から、中学までは周囲に恐れられて孤立し、寂しい学生生活を送っていました。孤独な生活を変えるため、一咲は地元から遠く離れた高校に進学。「いよいよフツーに友だちを作って、フツーの恋愛ができる!」と思ったのもつかの間、一咲の世話係兼瀬名垣組の若頭の宇籐啓弥(26歳)が、なぜか男子生徒の制服を着て入学式に出席していたのです。

 なんと彼は、高校で一咲に悪い虫(男)がつかないように“番犬”として同じ高校に裏口入学したそうです。こうして、お嬢と番犬くんのあぶないハイスクールライフがスタートします。現在放送中のドラマ「親バカ青春白書」でも、心配性の父親が娘と同じ大学に入学する、という設定が話題になっています。もしかしたら、過保護すぎる保護者の行き着く先は“同じ学校に通うこと”なのかもしれません。

advertisement

 一咲が“フツーの恋”に憧れている理由は、本当の恋を断ち切るためでもありました。彼女は、啓弥に出会ったその日から、彼に恋心を抱いていたのです。

 一方の啓弥は、一咲の気持ちに気づいているのかいないのか…。ときには「どんな男でも俺から一咲さんをとる人間は 俺はダメです」なんてほぼ愛の告白のようなセリフを吐いて、彼女を翻弄します。ふたりの関係は、まさに保護者以上恋人未満…! 新たなジャンルが誕生しました。

 ふたりの微妙な関係性もさることながら、主人公・一咲の“お嬢力”も同作の魅力。慣れていない“フツーの学生生活”では、なかなか周囲と打ち解けられない一咲ですが、啓弥の前ではお嬢節が炸裂します。

 たとえば、体育館裏で啓弥が“ちょっと一服”しているのを発見すると、どすの利いた声で「オイ」と言ってタバコを取り上げたり、一咲の連絡先を入手しようとする男子生徒に啓弥が突っかかると、変顔で「ヤメローーーーーー!」と叫んだりと、たとえ相手が好きな人でも組長の孫として若い衆の素行を一喝するのもお嬢の務め。一咲には姐さんの気質があるようです。

 かと思えば、啓弥との動物園デートでは彼にほめられたい一心で、慣れない靴を履いて、何日もかけて服を選び、髪を巻く練習をしてメイクも考える…そんないじらしい一面も。

 お嬢力と乙女力をあわせ持つ一咲だからこそ、啓弥も心の底から慕っているのかもしれません。ふたりの恋の行方も気になりますが、今後一咲がどんな女性に成長するのか、楽しみですね。

文=丸井カナコ