「Zoomが苦手」「他人と比較してしまう」…現役大学生の悩みに住野よるさんが真摯に回答!『青くて痛くて脆い』大特集!

エンタメ

公開日:2020/8/25

青くて痛くて脆い

〈大学時代は、いわゆる最後の青春〉〈「社会に出る」というタイムリミットがある中で、最後の青春の間にしかできないような、「歪んだ人が何かを覆す話を書きたいな」と思いました〉――そうインタビューで語った住野よるさんの小説『青くて痛くて脆い』(KADOKAWA)。

 文字どおり、青さ・痛さ・脆さ大爆発で、読んでいるだけで心がヒリヒリする最高の青春小説が、このたび吉沢亮&杉咲花のW主演で実写化。これを記念して、ダ・ヴィンチニュースでは「大学生からの青くて痛いお悩み相談」を大募集。住野さんによる真摯な回答や、いかに?

【お悩み①】
私は今、大学2年です。周りの友達は将来中学や高校の教師になるという人が多く、両親からも教師や公務員など安定した職についてほしいと言われます。しかし、私は教師や公務員といった仕事にあまり魅力を感じておらず、どちらかと言うと経済的にも安定しないような職業に憧れてしまいます。その一方、安定しない職業は怖いな…とも思います。住野よる先生は作家という職業につくにあたり、どうやって決心を固めましたか?(大学2年女性)

住野よる(以下、住野):作家という職業を本気で意識し始めたのは、まさに大学2年生のはじめころでした。好きなものに関わる職業につきたい、という気持ちと、人より少しだけ得意なものは文章を書くことかもしれない、という考えからでした。そう思いながらも大学4年生時には就職活動も行いましたし、小説家になる前はお給料を貰いながら社会人をやっていました。何が自分に向いているのかは最後まで分からないものだと思います。もし希望している道が安定していないということでしたら、そちらを全力で頑張りつつ、経験がてら他の道も見ながら歩んでいくのはどうでしょう。ギリギリまで迷い続けることが、人生を真剣に生きることなのかなと思います。

advertisement

【お悩み②】
みんなから置いていかれる感じがして、追いつきたいけど同じことはしたくない、独自性を持っていたいと思うのですが、結局追いつけなくて自分を追い込むだけになってしまった時、どのようにして次に進めばいいのでしょうか?(大学3年女性)

住野:他の人にできないことができるのは個性であり能力だと思うのですが、他の人はできることができないのも独自性であり才能だと思います。おそらく置いていかれる感覚というのは、自分より他人が勝っている点があるという考えから生まれるものだと思います。残念ながら、天才や奇人でない限り、その不安は生涯つきまといます。僕にもあります。でも、大切なのは自分が参加しているレースに本当に興味があるのかどうかなんじゃないでしょうか。自ら選んだ道なら、おっしゃるように大切なのは順位よりも、どういう意志を持って歩いているかということなのかなと思います。

【お悩み③】
友達にはそのつもりがないことがわかっているのですが、私は普段何気ない友達の言葉も、時々とげみたいに心に刺さって、それ以降その友達に会うとそれを思い出してしまいます。でも友達のことは大好きなんです。ただ心が弱くて勝手に傷ついてるだけなんです。上手なとげの抜き方が知りたいです。住野よる先生は今までにこういうことはありましたか? このようなことがあればその時どうしたか、またなくてもアドバイスいただけたらと思います。よろしくお願いします。(大学2年女性)

住野:あくまで自分の場合なのですが、今まで出会った人の中で100パーセント好きな人なんていません。家族や友人も同様です。それでも仲良くしたいと思うのは、嫌いな部分より好きな部分の方が多いからです。そういうものなのかなと思って、怒る時は怒り、それでも大切だなと思うかどうかで付き合い方を決めています。おそらく、人間は皆100パーセント好きになってもらうことはできません。ひょっとしたらご友人も、あなたに対して1パーセントの疑問がありつつ、それでも仲良くしたいと思ってくれているのかもしれません。きっとその1パーセントは好きにならなくてもいいんだと思います。ただ、嫌いな部分の方が大きかったらその時は距離をとった方がいいかなと思います。

【お悩み④】
大学1年です。僕の学部ではよくZoomで交流会をしていて、誰でも参加できるのですが、Zoomでは相手の雰囲気が掴みづらく、会ったことのない人とオンラインで仲良くなることに抵抗を感じてしまいます。たとえ仲良くなったとしてもそれは相手の一部でしかなく、かえっていざ会った時にギクシャクしてしまうのではないかと思ってしまいます。先生はどう考えますか?(大学1年男性)

住野:僕もZoomは苦手です。どこ見ていいかわかりませんよね(笑)。会話というよりどちらかというとLINEなどに近くて、実際に交流するのとはまた違うなと思ってはいます。ただ、相手の一部しか知らないのは、どれだけ会って話しても変わらないことなので、安心していいことかなと思います。家族も恋人も友達も、きっとあなたのすべてを知っているわけではいないと思います。同じように、こちら側が相手のすべてを知ることもありません。お互いに見せあっている一部の相性が良くて、偶然仲良くなれるからこそ、そういう相手のことは大切にしなければならないのかな、と思っています。

【お悩み⑤】
今、小説を書いてるんですけどなかなか落ちを作れずダラダラ書いてしまっています。どうやって完結まで持って行ってるんでしょうか?(大学2年男性)

住野:小説の書き方は十人十色だと思いますが、自分の場合は、ラストシーンは最初に決めてしまうことが多いです。最後のシーンで何を書きたいのか、どんなものを描いて終わらせたいのかを考え、冒頭からどうやったら望むラストにたどり着けるのかを考えて書いています。もちろん決めずに書き始めてだらだらしてしまうこともあるので、そういう時にはいったん立ち止まり、現時点からラストまでストーリーとして書かなければならないことをリストアップして、それらを順番にクリアしていくようにしています。

【お悩み⑥】
人間関係についての相談です。私は一度仲良くなったなと思うと、頻繁に話しかけに行かないし、会話でも2人きりでなければ必要以上に喋りません。また私は関西出身なのですが、大学が関東なので当然周りの友達は関東出身です。なので話す内容や県民性などが違う為、「えっ」と思うことが多々あります。私の友人への接し方はこれで良いのか疑問です。どう思いますか? よろしくお願いします。(大学3年女性)

住野:そういうあなたを受け入れてくれる友人であれば、そのままでまったく問題ないと思います。友人同士というのは他人同士です。もちろん出身地が違うこともあれば、これまで学んできた常識が違うこともあるでしょう。友達の言動で、「えっ」と思うことをどこまで許容できるのか、それは人によって違うと思います。あなたとお友達の間で、その「えっ」を楽しめるうちは、ありのままでいることになんら問題はないと思います。互いに許容できなくなれば、自分が変わるか、違う友達を作るべきだと思いますが、まだ仲良くしたいと感じている間は、友達として接していていいのではないでしょうか。

【お悩み⑦】
関わる人の人数が大学生になってからすごく多くなって、その中で自分の個性が埋もれてしまっているなと感じているのですが、他の人ももし一緒なら周りの人(同性、異性関わらず)のいい個性をどう見つけるべきでしょうか?(大学3年女性)

住野:ひどい言い方だと思われてしまうかもしれませんが、僕はこの世界にかけがえのない人間なんて一人もいないと思っています。どんな偉人もいなければいなかったで世界は動いていたでしょう。だからこそ、どういう気持ちで生きているかが「個性」だと思っています。考え方は、外見や能力のように簡単に見えるものではありませんが、我々の人生なんて世界にとってはどうでもいいからこそ、人生観が個人の持ちうる最大の個性であるように思います。もしよかったら、周りの人たちがどういう考えをもって生きているのかに注目してみてはいかがでしょうか。

文=立花もも

映画『青くて痛くて脆い』
2020年8月28日(金)全国東宝系にてロードショー

https://aokuteitakutemoroi-movie.jp/

青くて痛くて脆い
©2020映画「青くて痛くて脆い」製作委員会

原作:住野よる「青くて痛くて脆い」(角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:狩山俊輔
脚本:杉原憲明
出演:吉沢亮 杉咲花 岡山天音 松本穂香 清水尋也 森七菜 茅島みずき 光石研 柄本佑

(あらすじ)
 人付き合いが苦手で、常に人と距離をとろうとする大学生・田端楓と空気の読めない発言ばかりで周囲から浮きまくっている秋好寿乃。ひとりぼっち同士の2人は磁石のように惹かれ合い秘密結社サークル【モアイ】を作る。モアイは「世界を変える」という大それた目標を掲げボランティアやフリースクールなどの慈善活動をしていた。周りからは理想論と馬鹿にされながらも、モアイは楓と秋好にとっての“大切な居場所”となっていた。

 しかし秋好は“この世界”から、いなくなってしまった…。秋吉亡き後モアイは社会人とのコネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系の就活サークルに成り下がってしまう。変わり果てた世界。取り残されてしまった楓の怒り、憎しみ、すべての歪んだ感情が暴走していく……。アイツらをぶっ潰す。秋好を奪ったモアイをぶっ壊す。どんな手を使ってでも……。楓は、秋好が叶えたかった夢を取り戻すために親友や後輩と手を組み【モアイ奪還計画】を企む。青春最後の革命が、いま始まる――。