実在する洗脳タクシードライバー。乗客を新興宗教に勧誘する“裏仕事師”の驚きの手口
公開日:2020/8/13
世の中には、まだまだ自分の知らない世界があるんだな…。『平成の裏仕事師列伝 BEYOND』(「裏モノJAPAN」編集部/鉄人社)は、そんな想いに駆られる興味深い1冊だった。
本書に掲載されているのは、決して明るみには出ないダークビジネスの数々。平凡に生きることを拒み、光の当たらない世界で成功を収めてきた25人の“裏仕事師”たちがシノギの手口を明かす。
焼けつくような人生を歩むアウトローたちが身を置く世界には、どうやら私たちの知らない「金策」があるようだ。本稿では数あるエピソードの中でも、個人的にド肝を抜かれた「洗脳タクシードライバー」の生き様を紹介したい。
乗客を宗教に引き込む「洗脳タクシードライバー」
大宮拓也さん(仮名)は、ごくごく平凡な中年男性。しかし、彼は乗客をマルチや宗教に引き込む「洗脳タクシードライバー」だ。
ダークビジネスに手を染めたきっかけは、小学校の同窓会に出席したこと。そこで、ひそかに恋焦がれていたクラスいちの美少女・淑子が宗教団体の信者であることを知る。
淑子の誘いを受けた大宮さんは断り切れずに後日“勉強会”に出席。しかし、教団に対して良い印象が持てなかったため、辞めるよう淑子に諭した。すると、彼女は激しく抵抗。その姿を見た大宮さんの心には、ある邪な思いが生まれた。宗教一色の彼女に理解を示し、手助けをすれば、自分になびいてくれるかもしれない…。
その教団で信者が評価される方法は、お布施と布教活動の2つ。そこで、大宮さんは乗客に勧誘トークをし、布教活動するようになっていく。すると、ある日、教団から活動支援やお礼として金一封を渡された。
さらにその後、教団は大宮さんに1人あたり1万円の紹介料と入信した時の成功報酬3万円を支払うことを提示。こうして、宗教への勧誘は淡い恋心を実らせるためのものではなく、サイドビジネスになっていった――。
それにしても、なぜ大宮さんは乗客の心を巧みに引き付け、勧誘することができるのか。その答えは試行錯誤した末に辿りついた、独自の会話テクニックに隠されているようだ。大宮さんは“無責任な第三者”という視点から、乗客を勧誘する。
「勧誘しちゃダメ。あくまでも助言を与える“人生の先輩”を演じるだけでいいんです」
初対面の人と同じ車に乗り、雑談を交わす「タクシーの中」は改めて考えてみると、妙な親しみやすさと緊張感が入り交じる不思議な空間。だから、つい愚痴や弱音をこぼしてしまいそうになるが、そんな心の隙を狙う裏の仕事師もいることを肝に銘じ、私たちは自分の身を守っていく必要がありそうだ…。
このほかにも本書には、警察が音を上げたような行方不明者も探し出す人探しのプロフェッショナルや、ボッタクリ人生を歩み続ける74才の現役キャッチガールなど、非合法な商売にも手を染める裏仕事師がズラリ。
驚くべきアイデアや才覚で大金を稼ぐ彼らは、どんな風に平成という時代を切り抜け、令和を生きようと考えているのか…。ぜひその目で確認してほしい。
文=古川諭香
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