食料品、緊急連絡先メモ、入院グッズ…“単身者”が前もって用意しておくべきもの/コロナ危機を生き抜くための心のワクチン②
公開日:2020/8/23
家族、人間関係、経済、仕事、人生――新型コロナ禍の世界で、私たちは様々な悩みや心身の危機とどう向かいあうべきでしょうか? “絶望に陥らないための智恵”と“法律の知識”を、全盲の熱血弁護士が今、あなたに伝えます!
一人暮らしに万が一の備え
2020年4月、都内の社員寮で、新型コロナウイルスに感染した50代男性が部屋の中で亡くなっていた、とのニュースが報じられました。
亡くなる前に、この男性は保健所の帰国者・接触者相談センターに複数回電話をかけていたことも判明していますが、電話はつながらず、PCR検査を受けることはできませんでした。
単身者(一人暮らし)は、未婚や離婚、伴侶に先立たれるなど、相談相手や頼りにできる存在が身近におらず、社会的に孤立している人が多いです。
単身者にとって、コロナ禍での自粛は、普段でも少ない他者との会話が激減し、より孤立を深める可能性があります。
孤立や孤独から免れる最強の方法は、当然ですが、人とコミュニケーションを取ることです。長期間、人と会えないことが、うつ病の発端になることもありますから、注意が必要です。自分の方から率先して「元気?」「どうしてる?」とか、メールやSNSを使って〝生存確認〞の連絡を他の人に取るようにしてください。
ところで、単身者のあなたが、万が一コロナウイルスに感染したときのことを考えてみましょう。
体調が悪くなっても困らないように、保健所の電話番号はネットで調べておきましょう。持病のある人は、かかりつけ医にすぐに連絡を取れるよう、緊急連絡先の電話番号をメモしておきましょう。
生命保険や医療保険に入っていたら、保険会社と証券番号をメモして、健康保険証と一緒に、財布や手帳に入れておくと安心です。
自宅待機となった場合に備え、2週間分の食料品や飲み物の備蓄をしたり、デリバリーやネットスーパーなどのリサーチを行い、食料の確保をしておくことも大切です。
また、急な入院やホテルでの療養に備え、あらかじめバッグに、2週間分の入院グッズを揃えておくと安心です。着替え、マスク、手洗い用せっけん、体温計、シャンプー等のアメニティグッズ、タオル、メモ帳と筆記用具など、そして厚めの文庫本を1冊。
熱や鼻水、咳などの症状があれば、必ず日時をメモにとり、日々の体調の変化と管理を怠らないようにしましょう。
万が一、発熱等で気分が悪くなり、自力で起き上がれず、119番で駆け付けた救急隊員に言葉を話せる状況でなくても、そのメモがあればこれまでの症状の経緯をしっかりと伝えることができます。
もしあなたが感染し、入院することになったら?
その後、重症化し、集中治療室で治療を受けることになったら?
意識が薄らぎ、あなたが自分の「希望」を医療従事者に伝えられなくなったとき、あなたに代わってあなたの「最後の希望」を伝えてくれる信頼できる人を一人、今のうちから探しておくことが大切です。
あなたがどんなことを大切にして生きているのか、どんな価値観を持っているのか、そして、万が一のとき、あなたがどんな医療やケアを受けたいと願っているのか――その意思をあなたに代わって伝える人がいることは、あなたの人生を悔いのないものにし、豊かにすることでしょう。
こうして、万が一感染した際のことを考え、準備しておくことに加え、一人暮らしの生活で孤独に陥らないためにおすすめしたいのが、「自分自身の心を慰めてくれる趣味」を、短い時間でもいいので生活の中に取り入れることです。それも、できれば料理や絵など、自分の手を使って作り出すものはより効果的だと思います。
弁護士をめざし、東京で一人暮らしを続けていた当時の僕の心の慰めは、一本のクラシック・ギターでした。
僕とギターを引き合わせてくれたのは母でした。
小学5年生の時、母は僕に子ども用のクラシック・ギターを買い与え、近所のギター教室に通わせてくれました。近い将来、僕の目が見えなくなることを知っていた母は、「息子にも何か人生の楽しみが必要」と考えたのです。
その頃、すでに僕は視力が落ち始めていたので、譜面が見えません。
先生が弾いてくれる曲を聴き、音を覚え、その音をそっくり真似して弾きました。最初の頃は母に無理やり、ギター教室に連れて行かれている感がありましたが、しばらく通っているうちに僕はクラシック・ギターの響きが好きになり、昼となく夜となく夢中で練習するようになりました。
ギターが紡ぎ出す音は、昔も今も、僕にとって心を癒やしてくれるやさしい光です。音楽家志望の妻と出会ったのも、私がギターを弾いていたからでした。
ぜひこの機会に、僕にとってのギターのようなものを見つけてみてはいかがでしょうか。
保存できる飲料、食料品は多めに買い置き
持病のある人は、かかりつけ医など、緊急連絡先の電話番号を
急な入院のために、部屋着、マスク、手洗い用せっけん、体温計等を常備
発熱、鼻水や咳などがあれば、必ず日時を入れてメモを取ること
日頃から体調管理を怠らないように
「最後の希望」を伝えてくれる人を探す
自分の心を慰めてくれる趣味を持つ