コロナ禍で急増する児童虐待。「子育てをすることが難しい」と感じたら/コロナ危機を生き抜くための心のワクチン⑦

暮らし

更新日:2020/9/2

家族、人間関係、経済、仕事、人生――新型コロナ禍の世界で、私たちは様々な悩みや心身の危機とどう向かいあうべきでしょうか? “絶望に陥らないための智恵”と“法律の知識”を、全盲の熱血弁護士が今、あなたに伝えます!

コロナ危機を生き抜くための心のワクチン
『コロナ危機を生き抜くための心のワクチン – 全盲弁護士の智恵と言葉 -』(大胡田誠/ワニブックス)

子どもへの虐待と安全な場所の確保

 厚生労働省が、2020年1月から3月に児童相談所で「虐待として対応」した件数を調査した結果、いずれも前年同月比で1割から2割増加し、コロナ禍で虐待リスクが高まったとされています。

 家庭という閉ざされた空間で、四六時中親子が接していれば、ストレスは増加します。

「巣ごもり」生活が長引く中、児童虐待の増加が懸念されます。児童虐待は、大人が子どもに絶対に犯してはならない罪です。

 学校が休校になっている間は、教員が各家庭を回るという学校もありますが、子どもたちに〝異変〞が起きていないかを、確認する狙いもあるようです。

 児童虐待防止への関心は年々高まっており、4月から施行されている「改正児童虐待防止法」では、親の体罰禁止が定められています。「しつけ」と称して子どもを叩くことは、許されなくなりました。

 家族との関係が悪く、ネグレクト(育児放棄)や暴力などに遇い、家にはいたくないという小中学生や高校生がいます。

 コロナ禍で、彼らの受け皿となっていた子ども食堂や、公的な支援施設が次々と閉鎖になり、一層危機的な状況になっているように思います。家庭が子どもたちの安全な場所でなくなったら、他者を家庭に招き入れるか、外に子どもたちの「安全な場所」を確保しなくてはなりません。そういう若年層が安全に過ごせるような「避難場所、逃げ場」が喫緊に必要だと思います。

 

(主な相談先)
●児童相談所虐待対応ダイヤル(厚生労働省)
(24時間・通話料無料) 189

●24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)
フリーダイヤル0120-0-78310(24時間)

●子どもの人権110番(法務省)
フリーダイヤル0120-007-110(平日午前8時30分から午後5時15分まで)

●チャイルドライン(18歳まで)
フリーダイヤル0120-99-7777
受付時間:毎日午後4時から午後9時
ネットでのチャット(木、金) 
https://childline.or.jp/chat/

●10代のための相談窓口まとめサイトMex(ミークス) 
https://me-x.jp/

 

 虐待は特別な家庭だけに起こるものではありません。

 どんな人でも、様々な事情で追い詰められ、一人苦しみ、心の余裕をなくした末に、虐待にいたってしまうのではないでしょうか。虐待をする親の表面や行動のみを見て判断して責めたり、「自分には関係ない」と思っていては、社会全体で子どもたちを助けることはできません。

 大切なのは、「夫婦だけで、あるいは一人で、子育てをすることが難しい」と感じたら早めに、親兄弟や知人友人、あるいは児童相談所など他者にSOSを発信することです。

 

 僕たちは夫婦ともに全盲で、いわゆる授かり婚でしたので、子どもが生まれるとすぐに、二人だけで子どもを育てる難しさや物理的な困難にぶちあたりました。

 そこで妻の母に同居をお願いし、快く引き受けてもらうことになったのです。

 そのおかげで、僕は弁護士の仕事を、妻は各地で弾き語りのコンサートを続けながら、二人の子どもを育てています。

 義母を中心として、義父、そして僕の父の三人の手助けがなければ、僕たちの子育ては不可能でした。

 他者を家庭に招き入れることで、夫婦や親子間にある問題や軋轢など緊張状態の核心部にメスを入れ、ほぐしていくことが大切です。僕たちは子どもが産まれた時から約10年、義母たちの手助けを得ることで、何とか円満な家庭を築き上げることができています。

 

 仕事を終えて、夜、自宅に帰ると、「パパ、パパ」と二人の子どもが待ちかねたように僕に飛びついてきます。

 二人は、その日にあったことを事細かに僕に話します。一日の疲れでヘトヘトですが、子どもたちの話を聴くのが僕にとって何よりの疲労回復薬になっています。

 平日は子どもたちと過ごす時間が少ないので、量より質と思って、子どもたちとは濃密に触れ合うようにしています。

 でも、僕が疲れて面倒くさがり、子どもたちとのスキンシップをパスするようだと、妻から叱責を受けます。

 僕たち夫妻にとって、最も大切なのは家族です。

 目が見えない僕たちは、日常の中で様々なもどかしさを共有しています。

 お互いの表情や子どもの表情を見ることができないもどかしさ、見てあげられないもどかしさ。それらのもどかしさを子どもたちが補ってくれます。

 

 二人の子どももそろそろ思春期の入り口に入るので、いつまでこの親子の状態が続くかはわかりません。

 あまり先のことは考えずに、今しかないこの貴重な子どもたちとの時間を大切にしたいと思っています。

「夫婦だけで子育ては難しい」と感じたら
他者にSOSを発信すること
他者を家庭に招き入れることで緊張状態をほぐしていく

<第8回に続く>