“不機嫌な老人”が生まれるのは「疎外感」の前に根本原因が!? あなたが“暴走老人”にならないために
公開日:2020/9/14
「暴走老人」「わがままジイサン」「正論オジサン」などと揶揄される高齢者たちの傍若無人な言動は、私たちには理解し難いものがある。批判したり、馬鹿にしたりするだけなら簡単だ。しかし、「子ども叱るな 来た道だ 年寄り笑うな 行く道だ」という言葉がある。私たちは、遅かれ早かれ高齢者になる。その時、自分が「暴走老人」になっていないとは言い切れない。高齢者たちが傍若無人な言動をとってしまう理由がわかれば、他山の石とできるかもしれない。
『ルポ 不機嫌な老人たち(イースト新書)』(林美保子/イースト・プレス)は、ルポルタージュから高齢者が“不機嫌”な理由に迫る。「はじめに」では精神科医・和田秀樹氏の著書に触れている。老人は、前頭葉の萎縮により意欲、感情抑制機能、判断力の低下や性格の先鋭化が起き、これによりキレやすくなってしまう、という内容だ。しかし、本書の著者・林氏は、ルポを進める中で、これに加えて“いまどきの高齢者ならではの原因”に気付く。
本書には、実にさまざまな“不機嫌な老人たち”が登場する。街中でキレる人、カスハラをする人、地域活動でビジネス感覚を持ち出してくる人、家庭で威張る人、ネットにハマる人、店員相手に長話をする人…。こういった高齢者たちの言動の原因になっているのは「疎外感」「承認欲求」と一般的には言われがちだが、著者はもっと単純な原因…つまり「元気で暇」なのが大もとではないかと考察する。まだまだ元気なのに暇を持て余しているから、疎外感や承認欲求などの不足感が出てくるのではないか。平均寿命が延び、いまの高齢者は元気だと言われる。まさにこれが、「暴走老人」を生み出しているのだ。
本書の終章では“不機嫌な老人”の典型が示される。男性の場合は、年功序列でハラスメント意識がない社会を、家庭を顧みず生きてきて、定年後は生活が一変、退屈な時間を過ごしている。女性の場合は、男性ほど典型の明確化はしにくいが、歳とともに思い込みが激しくなり、しかし荒波を乗り切るのが得意ではないため、不満を蓄積する。そのうち、思い込みや被害者意識が強くなってしまう。男女別にこういった背景があり、不機嫌な老人になっていく、と考えるとともに、ひとつの予測を立てている。今後、男女雇用機会均等法以後のキャリアウーマンたちが定年を迎える。また、ひきこもりやニートたちも高齢になる。その時、いまの高齢者たちとは別の問題をあらわにするだろう、というのだ。
不機嫌な老人たちの背景から、これから高齢者になる私たちが学べること。それは、「定年前から、次のステージに向けた準備をきっちりすること」と本書は述べる。日本は、世界に先駆けて超高齢社会に突入している。高齢者問題についても、世界最先端なのだ。高齢者が不機嫌な理由を知り、どんな高齢者でも幸せに暮らせる社会をつくることは、世界の手本になることでもある、と本書は締めくくっている。
文=ルートつつみ