身内が亡くなった直後にすることは? 悲しくても年長者としての役割を/知らないと恥をかく 50歳からのマナー①
公開日:2020/9/19
若い頃は知らないことでも、大人になると知っていて当たり前!? 年齢を重ねたことで初めて遭遇する、マナーの本質から実践までをこの1冊に集約!「マナー界のカリスマ」が書いた、知っておきたいマナーをイラストとともに紹介します。
身内が亡くなった直後の対応①
50歳を過ぎれば、家族や身内の旅立ちを見送ることも増えるでしょう。悲しみに暮れる一方で、別れの儀式は故人にとっても遺族にとっても、後悔のないようにしたいもの。
そのためにお互いが元気なうちに、どういった葬儀がよいかなど、希望を伝え合っておくこともマナーのひとつ。家の菩提寺について知り、気になるなら家族葬や自由葬も調べてみましょう。依頼する葬儀社などを事前に決めておけば、慌てずによいお別れができるでしょう。
家族を看取ったときも、年長者としての役割を
医師や看護師への挨拶を忘れない
お世話になった医師や看護師には、しっかりお礼の言葉を伝えましょう。
入院が長かったり、在宅介護で訪問医療を受けていた場合などは、葬儀後に改めて挨拶に出向き、個包装の菓子折を手渡してもいいでしょう。
中には規則で受け取れない病院もあるので、あらかじめ確認しておきましょう。贈り物に「掛け紙」をかける場合は、無地のものを。
臨終の場に子どもがいたら、心のフォローを
年長者であれば悲しいときでも、周囲のフォローをしなければいけない場面もあります。特に幼い子どもが臨終の場にいたら、放っておくわけにはいかないでしょう。
子どもを臨終の場や遺体から遠ざけるべきか、迷う人もいらっしゃるかもしれません。しかし、最後のお別れをさせることに、何ら問題はありません。亡くなったのが親であったり、かわいがってくれた祖父母であればなおのこと、お別れをさせてあげましょう。
子どもが死について質問してきたら、できるだけ丁寧に答えます。無理に励ますよりも、その子の悲しみや怒りに寄り添うことが大切。手を握ったり、ハグをしてあげることも、安心感と癒しにつながります。
葬儀社を選ぶときは、慌てず、急がず
遺体搬送と葬儀を、別の葬儀社に頼んでもいい
臨終を迎えてから葬儀社を決める場合、ネットや電話などで時間の許す限り情報を集めて、冷静に比較と検討をしましょう。
どうしても検討の時間が作れなかったり、突然の訃報に混乱して、うまく頭が回らなかったりすることもあるでしょう。そのようなときは病院で紹介された葬儀社に、遺体の搬送と安置だけを依頼することもできます。葬儀そのものは後日検討して、別の葬儀社に依頼しても問題ありません。万が一のときのために、あらかじめ検討しておくことも現代では大事なことですね。
表向きの金額だけにこだわると後悔しがち
見積もりは葬儀社によってかなり異なるので、総額だけで比較せず、含まれている費用を見比べつつ検討してください。
できれば事前に複数の葬儀社をたずね、斎場の見学をし、見積もりを出してもらっておくのがベスト。家族のためになるだけでなく、あなた自身の終活の参考にもなります。
なお、葬儀費用に僧侶などへの「御布施」が含まれているかどうかの明細をしっかりと確認してください。ほとんどは、含まれていないようです。御布施については34ページでお話しします。
葬儀までのおおまかな流れ
仏式のおおまかな流れは以下の通りです。詳細はこの章の中で説明していきます。
①末期の水を取る
湿らせた脱脂綿や筆などで、故人の唇をぬらすこと。「死に水を取る」とも言う。病院で用意してくれる場合はその場で、用意されない場合は搬送先で行う。
②遺体の清拭、着替え、化粧
病院であれば看護師が、自宅や斎場であれば葬儀社の担当者が、遺体の処置や着替えを行う。遺族が手伝ってもよい。故人が「死装束にしたい」と話していた衣服があれば、愛用の化粧品と合わせて用意しておく。
③葬儀社への依頼
葬儀社が決まっていない場合、病院に頼めば紹介してもらえる。その葬儀社に正式に依頼するのであれば、早めに担当者と打ち合わせを。自分たちでもっと検討したいときは、遺体の搬送と安置場所の提供のみをお願いして、引き続き葬儀社を探す。
④遺体の搬送と安置
搬送先は自宅か斎場だが、最近は斎場に運ばれることが多い。安置したら遺体の枕元に「枕飾り」を施す。菩提寺によっては僧侶に枕経を読んでもらうことも。
⑤家族と葬儀形式を決める
葬式の形式は、事前に親や本人に確認しておく。菩提寺や故人が所属している教会などがあれば、連絡して都合を聞く。
⑥家族と喪主を決める
喪主は故人の配偶者が一般的だが、高齢などの理由があれば、故人の子どもが務めてもいい。多くは長男が喪主となるが、両親と同居して家業を継いでいるような場合など、次男や三男が務めることもある。最近は女性の喪主も多い。複数人で一緒に務めることも可。
喪主を決める際は、葬儀後の仏事や墓の管理も喪主が引き継ぐのかどうかまで確認すること。仏事や墓の管理は費用がかかるため、その負担をどうするのかも話し合う。
⑦家族と通夜、葬儀・告別式の概要を決める
日程を調整し、規模、葬儀の場所を決めて、葬儀社に伝える。このとき会葬礼状、返礼品(仏式の場合は香典返し)、通夜ぶるまいなども依頼する。いずれも本人と生前に決めておくのがベター。
⑧通夜、葬儀・告別式の通知
親族や知人に訃報と葬儀日程を知らせる。
⑨受付や会計など、手伝いの依頼
親族に依頼するのが一般的。会計は「香典の計算」と「弔問客のリスト作り」も行うので、信頼できる人物に依頼。受付と会計が兼任となる場合、必ず2人以上に。
⑩弔辞の依頼
葬儀の規模によって1~3人。相手は上司や親しい友人など、故人が信頼していた人物。葬儀日程や内容が決まったら、なるべく早めに依頼をするのがマナー。「ほかにどのような関係の人に弔辞を頼んだのか」まで伝えると、相手が話のポイントを絞りやすくなる。
最近は弔辞が読まれず、友人や親族が思い出話を語るだけの葬儀も多い。適任者が思い浮かばなければ、無理に選ばなくてもいい。
⑪菩提寺との打ち合わせ
菩提寺や所属している教会があれば、葬儀社任せにしないで自分たちで依頼する。菩提寺が遠方の場合も連絡を入れて、事情を話して、同じ宗派の近くの寺院を紹介してもらう。先方が紹介できなければ、宗派を伝えて葬儀社に紹介してもらう。
神式の葬儀を依頼する場合、神社へは喪主や喪家ではなく、代理人を立てて依頼に行く。神道には「死を神様に近づけない」との考え方があり、故人の身内は神社に参拝してはいけないため。
⑫遺影の準備
生前の写真から選ぶ。スーツ姿がベストだが、故人の人となりが伝わる写真なら、ラフな服装でもOK。最近はパソコンを使って、必要な部分だけ抜き取れるので、背景は気にしなくてもいい。
⑬戒名を決める
宗派によっては法名、法号とも呼ばれる。菩提寺から授かるのがしきたり。一般的には納棺までに付けてもらうが、菩提寺がなかったり不明の場合や、故人が戒名を拒んでいた場合など、俗名で葬儀を行うこともある。
寺院のお墓に納骨する際、その寺院や宗派の戒名でなければ、拒まれることもあることに注意。納骨まで考えて戒名を付けること。
⑭喪服、お礼の準備
遺族が身に付ける喪服を用意する。僧侶に渡す「御布施」「御車代」「御膳料」や、手伝ってくれた人へのお礼も、通夜までに用意しておく。
⑮葬儀挨拶の準備
喪主はたびたび挨拶をするので、何を話すのかを考えておく。特に通夜と葬儀・告別式の挨拶は、3~5分の長丁場となるため、原稿を用意しておくこと。
⑯納棺
遺族全員で棺に納める。ここで死装束を着せることも。棺には故人が愛用していたものを入れるが、燃えない貴金属やガラス製品などは避ける。
⑰供花、供物を並べる。通夜の席次を決める
花や供物が送られてきたら、故人と親しかった人を中心に置く。後日、礼を伝えるため、花や供物をくれた人の名前、住所の記録を。また、通夜当日までには出席者の「席次」を決めておく(実際に決めるのは親族、親戚、特に縁の深かった人くらいまでで、ほとんどの参列者は自由に座ることになる)。