まるで“読むデトックス”! 1杯のココアから始まる話題の連作短編集を、読書メーターユーザーはこう読んだ

文芸・カルチャー

更新日:2020/9/21

※「第5回 レビュアー大賞」対象作品

木曜日にはココアを
『木曜日にはココアを』(青山美智子/宝島社)

 一日一日を乗り越えていくだけで、どうしてこんなに疲れるのだろう。日々の仕事を終えるとヘトヘト。しかし、そこに達成感はない。私は何のために頑張っているのか。誰か自分を癒してくれないものか――そんなことを思う人には、日々のストレスがデトックスされるこの本を読んでみてほしい。

『木曜日にはココアを』(青山美智子/宝島社)は、頑張り続けて、でも疲れ果ててしまったという人に、日々を生き抜くエネルギーを与えてくれる作品。読書家の間で、「癒される連作短編集」として話題の作品だ。

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 舞台は、小さな喫茶店「マーブル・カフェ」。その喫茶店の1杯のココアから始まる12編の色鮮やかな物語は、ゆるやかにつながり、やがて大きな物語を生み出していく。毎週木曜日に決まって同じ席でココアを注文し、エアメールを書くひとりの女性客。主夫である夫の代わりに初めて息子のお弁当作りに挑戦するキャリアウーマン。誰にも認められなくても、自分の好きな絵を描き続ける女の子。銀行を辞めて、サンドイッチ屋を開業した男性。厳しいお局先生がいる幼稚園で悩みながら働く、新米教諭…。この作品には、人知れず頑張っている登場人物たちを応援するような温かさがある。人は知らないうちに誰かを救い、誰かに救われながら生きているのかもしれない。この本を読むと、そんなことを素直に信じられる気がするのだ。

 読書メーターユーザーたちはこの作品をどう読んだのか。

“私たちは1秒先のことも知らされないまま暮らしている。自分の意志だけではどうしようもない、抗えないことも向こうから訪れる。…”の文章に今のコロナが思い浮かんだ。ではどう生きていたいか、そんなことを考えさせてくれたり、寄り添ってくれる作品でした。

きなこ

不安に取り込まれてしまった時に、真っ直ぐに生きる事を取り戻したい時に読みたい一冊。自分が存在することは悪くない、そう信じられました。

タカユキ

なんて、やさしくてあたたかい物語だろう。ふとした瞬間の思いやりが満ちていて、思わず胸が熱くなる。「人を想う」とはこういうことなのか、と改めて教えてもらえた。(中略)もし。もし、ほんのすこし勇気を出して差しのべた手が、一生懸命に相手を想った行動が、だれかの救いになったなら。それはとても幸せなことだ。そっと寄り添ってくれるような、ふんわりと包みこんでくれるような、そんな幸せの連鎖にふいに涙がこぼれた。

うーぽん

“気持ちのデトックス”って、こういうことなのですね。心に刺さったトゲトゲが、ポロポロ抜けてしまったみたいです。心がポカポカしています。

snow’s library

 もしかしたら、私は誰かの役に立っていたのかもしれない。頑張りすぎていろんなことが見えなくなっていたのかもしれない。読み終えた時には、自分のことを認めてあげたくなる。読めば、心が軽くなるこの作品は、いつも頑張りすぎてばかりいるあなたに読んでほしい本。“読むデトックス”ともいえるこの本をぜひともあなたも体験してみてほしい。

文=アサトーミナミ

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第5回 レビュアー大賞

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