高校数学から消えた「行列」が復活!? その背景には政府のAI戦略が
公開日:2020/9/30
時代が変わるにつれて、学校の授業内容にも変化があるもの。最近では「AI人材育成」を目的として、高校数学への「行列」の復活が提案されています。政府の「AI戦略」とは、どういった内容なのでしょうか。
AIの習得には「行列」の復活が欠かせない!?
AIやIoTといった技術革新が目覚ましい昨今。内閣官房の教育再生実行会議は、こうした分野で活躍する人材の育成を目的として「第11次提言」を取りまとめています。同会議には大学教授も多数参加しており、大学側は「文系・理系の垣根なく、全ての学生がAI、数理、データサイエンスの基本的な素養を身につける」ことを目指すと表明。
政府は「AI戦略」の名のもと、年間約25万人の学生を「AIを応用できる人材」へと育成する計画を定めていました。しかし2012年度高校入学以降、AI関連で重要となる「行列」は授業から姿を消し、さらに2022年度からは、「ベクトル」が文系の必修科目から削られる予定となっています。
今回の提言には、「AI戦略」と「高校の学習指導要領」との不整合を解消する狙いが。「行列」は確率・統計などの基盤となる考え方で、AIの中核となる「深層学習」にも繋がる概念といわれており、復活への検討がはじまるそうです。
学習指導要領の変更に対し、ネット上では「むしろ行列って無くなってたの?」「『行列』がそんなに大切な科目だとは知らなかった……」「『ベクトル』もなくなるって、ゆとりは続いてるのか?」といったコメントが多数。
また他にも、「古文・漢文は逆にいらないと思う」「『高等数学』に到達するためには、結局算数からの積み上げが大切だよね」と様々な声が上がっていました。
近現代史がおろそかになりやすい「歴史の授業」
高校の学習指導要領については、文系科目についても変化があるようです。
2022年の必修化が予定されているのは、「歴史総合」。これまでの「日本史」と「世界史」が融合された科目と位置づけられています。
具体的な合算対象となる「日本史A」と「世界史A」は、それぞれ近現代史を中心とした内容。これまで日本史は「地理」との選択科目でしたが、今後全ての高校生が「日本と世界の近現代史を学ぶ」ことになります。
「歴史総合」が導入される背景には、近現代史の内容が「おろそかになりやすい」との課題が。歴史は古い時代から順に学ぶ特徴があるため、近現代史の学習に十分な授業時間が確保できていませんでした。
また他にも、「これからの社会を担う若者が、自国の歴史を学ばないままでいいのか?」「日本史を高校の必修にしてほしい」といった声が多いことも要因のひとつ。
「IT化」や「グローバル化」が進む現代。「学生に何を学ばせるか」というテーマは、引き続き議論されていきそうですね。