運転免許証の番号は個人情報だらけ!? 私たちが知らないさまざまな「番号」に秘められたドラマの数々

社会

公開日:2020/9/21

番号は謎
『番号は謎』(佐藤健太郎/新潮社)

 引っ越しをすると悩まされるもののひとつに、番号がある。郵便番号や番地、固定電話番号を覚え直すのは正直タイヘンだが、避けることはできない。思えば、私たちは膨大な数の番号に囲まれ、生かされている。先の番号のほか、運転免許証の番号、自動車のナンバープレート、銀行の口座番号、趣味の領域に目を向けてみると好きな選手の背番号や交響曲の作品番号など。意味を知る人だけがわかる、数字の羅列に留まらないその番号の楽しみ方や味わい方、重要性がある。

「番号の世界」を解説する『番号は謎』(佐藤健太郎/新潮社)が興味深い。本書の冒頭では、番号の一部が私たちを管理していることに触れている。例えば、運転免許証の番号。この番号の12桁は、ただの数字の羅列ではなく、並び順に意味がある。最初の2桁は免許証を発行した都道府県を示す番号、3・4桁目は取得した西暦年の下2桁…と続き、最後の桁は紛失や盗難によって再発行された回数で構成されている。全国の公安委員会が発行する一見ランダムに見えるこの12桁は私たち一人ひとりを表したものであり、読み解き方がわかれば、赤の他人でも、その人のゆかりの地や個性の一部まで把握できてしまうという恐ろしさがある。

 本書は、私たちの身近にあるさまざまな番号のよもやま話を詰め込んでいるが、ただの雑学集ではなく、一見すると無味乾燥な番号に秘められた「ドラマ」を描き出しているところがおもしろい。例えば、クラシック音楽が好きな人なら知っている「第九の呪い」。交響曲には番号が振られる。よく知られるベートーベンの「運命」は交響曲第5番であるし、「第九」はそのまま9番目に作られた作品だ。

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 さて、「第九の呪い」だが、これは「第9番交響曲を書き上げるとその作曲家は亡くなる」というジンクスで、実際にベートーベン、ブルックナー、ドヴォルザーク、「未完成交響曲」を含めたシューベルトが9曲までで生涯を終えている。呪いの9から逃れようとしたのが、マーラーだ。彼は第8番の後に作った曲を交響曲とみなさず「大地の歌」と名付けて発表。しかし、これで安心したのか次に第9番を書き上げ死去し、結果として「第九の呪い」を補強する結果となった。

 このトピックに関連するものとして、欠番に関するドラマも興味深い。欠番でよくある理由は、それが「忌み数」だからで、欧米では13階がないビル、13号室であるべき部屋が12a号室などになっているケースが珍しくない。日本では「死」「死に」を連想させる4と42が代表的な忌み数で、プロ野球では外国人選手が背負うことが多い。しかし、彼らは忌み数を背負わされているのではなく、望んでそれを得ていることが少なくない、という。「4」という数字は上向き矢印にも見えるし、42は黒人初のメジャーリーガーであるジャッキー・ロビンソンの番号で、メジャーリーグ全球団の永久欠番となっている貴重な番号でもあるからだ。

 番号は客観的な数字の羅列だが、意味を見出す者には情緒を与える。私たちを取り囲む無数の番号の意味を本書で知れば、生活がより楽しく、豊かなものになるかもしれない。

文=ルートつつみ
@root223