個人投資家の一番のメリットが分からないとマズいかも…大損する前に知っておきたい資産億超え投資家が指南する「投資脳」とは

ビジネス

公開日:2020/10/6

億超え投資家の株の基本
『マンガでわかる15年勝ち続ける億超え投資家の株の基本』(立野新治:著、黒城ろこ・サイドランチ:マンガ/池田書店)

 コロナ禍において投資を始める人が増えている。2019年11月から概ね2万3000円台を維持していた日経平均株価は、今年3月に大暴落して1万6500円台を叩きだした。ところがその後、上昇と下落を繰り返しつつ、8月以降は2万2000~2万3000円台を維持している。この異様な下落と上昇で、大儲けした人と大損した人、どちらも少なくあるまい。

 8月28日の安倍首相の辞任ニュースで一時500円以上も値を下げたように、今の日本市場は速報ひとつで乱高下が起きる不安定な相場だ。海外に目を向けても、アメリカは大統領選挙が控えており、さらに中国と仁義なきケンカを繰り広げる。ヨーロッパ諸国もコロナの影響で明るいニュースは少なそう。もしかしたら、近いうちにまた異様な下落と上昇が起きるかもしれない。あくまで素人の勘だが。

 それでもコロナ禍で、企業勤めのビジネスパーソンさえ将来の先行きが不透明になった今、投資による資産形成を考える人が増えることは想像に難くない。そこで大切なのは、投資の基本を押さえることだ。

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『マンガでわかる15年勝ち続ける億超え投資家の株の基本』(立野新治:著、黒城ろこ・サイドランチ:マンガ/池田書店)は、普通の大学生だった著者・立野新治さんが「億超え投資家」になるまでの経緯を、マンガ仕立てで分かりやすく解説する。本書を読めば、「常に変化し続ける相場を読む力(相場観)」と「それに合わせて投資を選択する力(投資法)」、つまり「投資脳」を手に入れることができる。

 本書の「マンガとしての大筋」はこんな感じだ。30歳になる主人公・藤原秋人は投資を始めたものの、思うように利益を出せなくて悩んでいた。あるとき相場で勝ち続ける立野さんが妬ましくなり、TwitterのDMで批判的なメッセージを送ってしまう。すると予想に反して、立野さんが開発したVRソフトのモニターに誘われた。

 そのVRソフトには、立野さんが培った15年分の「投資脳」がつまっており、VRソフトの主人公・裕子を通して、秋人は相場のアレコレを学んでいく。

億超え投資家の株の基本 p.15

 このように本書はマンガ形式で解説が進むので、なんだか難しそうな投資の知識も分かりやすく身につけられる。

 それでは本書の「投資脳」にふれていこう。押さえておきたい投資の知識のひとつに、個人投資家の「一番のメリット」がある。これを理解しているかどうかで、少なくとも大損する事態を避ける確率が高まるのだが…それはなんだろうか?

 ここで思い出したいのが、2008年に起きたリーマンショックだ。なぜリーマンショックが起きたのか、その詳細は本書に譲る。とにかくリーマンショックが起きる数年前から世界中で資源需要が高まり、石油や海運関連の銘柄が上昇していた。裕子はこの「資源株」に手を出して、チャイナショックなどを乗り越えながら順調に資産を伸ばしていく。

億超え投資家の株の基本 p.66

 ところがその裏で、サブプライムローン問題がじわりと進行していた。裕子はこの危険すぎる大型爆弾をしっかり認識していたが、「まあ大丈夫っしょ!」と楽観視して持ち株の含み損に対処しなかった。

億超え投資家の株の基本 p.70

 そして2008年9月、リーマンブラザーズの破たんでリーマンショックが大爆発。持ち株を塩漬けにしていた裕子は、数百万円の資産が吹き飛んでしまった。

億超え投資家の株の基本 p.72

 この裕子の投資体験から私たちはこの言葉を胸に刻みたい。個人投資家の一番のメリット「休むも相場」だ。

億超え投資家の株の基本 p.77

億超え投資家の株の基本 p.78

 当時「資源株」は世界中の需要増で値が高騰しており、いわゆるバブル状態だった。もちろん裕子も「PBR」や「PER」など、投資で用いられる指標で常に株価が適切かどうか確認していた。しかしリーマンショックなど世界中の株価が大暴落する事態になると、高騰を続ける株がたとえ割安であっても、暴落を迎えると割高になってしまい、結果的に大損をしてしまうことがある。

億超え投資家の株の基本 p.76

 だからこそ裕子は「休むも相場」を実行すべきだった。立野さんの言葉を引用しよう。

 2015年8月に発生したチャイナショックでも同様に世界同時株安となったことから、今後世界のどこかの地域でデフォルトが起きた場合、「対岸の火事」として捉えるのではなく、常に「自国の経済にも飛び火する問題」として想定して、早めに利確を行い、資金を引き揚げておくといった対応が必要となります。

 裕子はサブプライムローン問題を認識した時点で、「難しい局面でリスクが読めない」と判断して、資金を引き揚げて遠くから事態を静観しておくべきだった。個人投資家は、機関投資家のように無理に投資を続ける必要はない。休みたいときは休むことができる。これぞ個人投資家の一番のメリットだ。

 本書は2019年に出版されたので、現在のコロナ禍における対処法は書かれていない。しかしコロナが完全に解決するまでに、もしかしたら少なくとも1度は株価の乱高下が起こるかもしれない。そのときこそ立野さんが説く「個人投資家の一番のメリット」を忘れずに実行してほしい。

 会社に頼らず資産形成をしようと考える人が増える今だからこそ、投資の基本を押さえた人がコロナの荒波を乗り越えていけるのではないか。その点において本書は良い教科書であり、立野さんのアドバイスを忠実に守っていれば、大損による市場退場を避けて、着実に資産形成できるのではないかと思う。

文=いのうえゆきひろ