日本初のコロナ童話! 「日本村」の私たちにできる“パンデミックの乗り越え方”
公開日:2020/9/30
いまだ収束の気配が見えないコロナウイルスは私たちの身体だけでなく、心も蝕んでいる。人との関わり方に新しい常識を取り入れた結果、大切な人との関係にヒビが入ったり、他者に対して温かい気持ちを持てなくなったりしているからだ。
そんな今こそ、自分の在り方を見失っていないか振り返りたい。『日本村100人の仲間たち The HOPE』(吉田浩:著/松野実:絵/辰巳出版)は、そう考えたくなる日本初の“コロナ童話”だ。
本書は45万部超の大ヒットを記録した『日本村100人の仲間たち 統計データで読み解く日本のホントの姿』(吉田浩:著/浜美登里:絵/日本文芸社)の次回作。前作は「もし日本が100人の村だったら」という設定で、統計データをもとにして日本の本当の姿を伝えていたが、今作では統計データや当時のニュースを交え、コロナにより大混乱に陥った世界を村として描き、ユーモラスに振り返っている。
世界の村々がコロナによってパニックに…
どんな災難がやってきても村人同士で力を合わせて助け合ってきた、日本村。そんな小さな村を突如襲ったのが、コロナという未曽有のウイルス。日本村ではコロナ離婚や内定の取り消しなど、さまざまな問題が勃発。村長が配ったマスクには厳しい意見が寄せられ、村人たちはソーシャルディスタンスの徹底や外出自粛によって大きなストレスを抱えた。
鬱憤は人気アニメ「サザエさん」にも向けられ、一家が連休の旅行を相談した回には、村人から非難の声が。現実とテレビの世界を混同してしまうほど、村人たちは余裕がなくなっていたのだ。
やがて、世界の村々もパニックに陥っていく。厳しい法律を設けることで外出を禁止するなど、独自の対策が取られ始めたが、ますます各村は混乱していった。
だが、そんな先の見えない状況が続くと、徐々に現れ始めたのが希望を配る存在。日本村ではマスク姿のドラえもんがエールをこめてステイホームを呼びかけるようになり、村のあちこちでは「タイガーマスク」と名乗ってマスクやお金などを寄付する人が現れ始めた。
優しい配慮は世界の村々でも見られるように。スペイン村では家で大人しくしている子どもたちに警察官から「よいこ証明書」が配られ、オーストラリア村ではコロナという名前によっていじめられていた少年に、コロナ社が粋なプレゼントとメッセージを贈ったのだ。
物語を通し、今年1年の出来事を振り返ってみると、コロナは「今という瞬間をどう生きるか」と、私たちに問いかけているのかもしれないと考えさせられる。
コロナ禍により、世の中は大きく変わった。自粛警察が現れたり、マスクの着用をめぐるもめごとが起きたりと、誰かが誰かを責めることが当たり前な社会になってしまったように思える。周囲への配慮はもちろん大切だが、自分と少しでも違う考え方や行動をすべて排除し、押さえつけようとする今の風潮は物質的な距離以上に、心の距離ができてしまっているようで悲しい。気分が暗くなり、心に余裕がなくなるこんなご時世だからこそ、希望を取り戻し、自分以外の人に優しいまなざしを向けられる人でありたいと思う。
日本村の私たちは、どんなに大きな災害が襲い掛かってきても自主的にルールを守り、一致団結しながら危機を乗り越えてきた。今回も、世界が罰則を設けて外出禁止を呼びかける中、「要請」という形でステイホームを守り、第一波を乗り越えた。そんな私たちには「誰かを責め続ける」以外にできることが、もっとたくさんあるはずだ。
「コロナ災」と書かないのはわけがあります。「災い(わざわい)」は防ぎようがない天災のことで、「禍(わざわい)」は人々の努力によって防ぐことができます。だから、コロナカゼはみんなの力を合わせれば防ぐことができるのです。
こんなメッセージが記されている本書を、希望を失ってしまいそうな日や誰かに厳しい視線を向けてしまいたくなる時に開けるよう、手元に置いておきたい。
なお、本書は多くの医療機関を救うことを目的としているため、著者印税10%は全額、赤十字などの医療団体へ寄付される予定。こうした著者の心遣いも噛みしめながら、誰かと手を取り合って笑える未来を守っていけるような“苦しみの乗り越え方”を考えていきたい。
文=古川諭香