「考えすぎの人/考えない人」どっちがいい? 最先端研究でみる「生きやすさ」のヒント
公開日:2020/9/30
明日への不安や過去への後悔…色々と考えすぎるがあまり、毎日が生きづらいと感じる人は少なくないはずだ。しかし、日々の考え方や行動を変えるだけで、そんな状況を打破できるかもしれない。科学的な見地をたよりに、気楽に生きるためのヒントを教えてくれるのが『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(堀田秀吾/サンクチュアリ出版)だ。
時間があるからいい選択ができるわけではない?
今やネットで何でも情報を入手できるようになった。情報の信ぴょう性という問題はあるが、自分とは異なる経験や考え方に手軽にふれられるようになったり、迷ったときに検討する材料が増えたのはメリットのように思える。
しかし本書は、最適な判断をするために「たくさんの情報を集めること、時間をかけること」は、かえって「よくない選択をすることにつながることがあります」と指摘する。これを科学的に証明した、興味深い実験がある。
オランダの大学で行われたのは、4台の中古車から1台のお買い得な「当たり」の車を参加者たちが選べるかどうかという実験。研究者たちは、参加者たちにそれぞれの車のスペックを細かく説明。決断するまでの時間を測ったところ「よく考えて選ぶグループ」が当たりを引いたのが25%なのに対して、「選ぶための時間が少ないグループ」は60%に達したことが分かった。
そして、この実験で明らかになったのは「時間さえあればいい選択はできる」という思い込みだ。むしろ、時間があると「小さな欠点やマイナス要因」に気を取られてしまい、誤った選択をしてしまうリスクを抱えかねないので、自分なりに「優先順位」を決めて、考え方のムダを省き、「素早い行動」へ繋げる方がうまくいく場合も多いという。
感情が爆発しそうなときは「10」を数える
さて、本書の内容を参考にもうひとつ「考えすぎない」ためのヒントを紹介したい。例えば、ネガティブな感情を吹き飛ばすための方法。日々の生活の中で怒りやイライラが込み上げてきそうな瞬間もあるだろうが、そんな場面では、心の中でゆっくりと「10」を数えるのが効果的だそうだ。
本書によると、脳科学では“怒りのメカニズム”が徐々に解明されつつあるという。そもそも人間は、怒りを覚えるできごとがあると、脳内で神経伝達物質のアドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。そんなときに急に顔が赤くなったり、心臓の鼓動が早くなったりするのもこれらの物質が関わっているとされる。
一方で、脳は怒りを抑制する機能もきちんと持っている。その働きを担うのが爆発しかけた感情を抑え込んでくれる前頭葉なのだが、感情が込み上げてから機能するにはおおよそ4~6秒かかるため、まず「10」を数えて深呼吸するべきというわけだ。
欧米の小学校では、感情的になった生徒に対して「3回深呼吸させる」という教え方もあるそうだ。他にも「水を飲む」など、自分なりに日頃から“いったん冷静になる”ためのルーチンを心がけておくのも大切だろう。
本書ではこれらも含めて、全部で45種類の「考えすぎない」ための科学的な研究結果とヒントがまとめられている。目指したいのは日常生活の「最適化」。今よりちょっとでも気楽に生きたいと願う人たちにとって、必ずや力になってくれる1冊だ。
文=カネコシュウヘイ