韓国ドラマ「サイコだけど大丈夫」愛を拒む精神病棟の保護士と愛を知らない童話作家が生み出す、切なくときめくラブロマンス

エンタメ

更新日:2020/12/6

サイコだけど大丈夫
Netflixオリジナルシリーズ『サイコだけど大丈夫』独占配信中

 そのドラマは、絵本を開いたときのような、ちょっとおどろおどろしくて、でもどこかワクワクするような演出から始まる。

 Netflixで配信が始まってからずっとランキング上位をキープしている韓国ドラマ「サイコだけど大丈夫」。自閉スペクトラム症の兄と2人で暮らす弟ムン・ガンテ(キム・スヒョン)と、愛を知らない人気童話作家コ・ムニョン(ソ・イェジ)の運命が交差していく、サスペンス要素も含んだラブロマンスだ。ちなみに、キム・スヒョンは最近だと、これまた大きな人気を博した「愛の不時着」にも除隊後の特別出演をして話題になっている。

 舞台は、彼が保護士として働く精神病棟。精神疾患を扱った作品としては、たとえば「キルミー・ヒールミー」や「大丈夫、愛だ」など他にもいくつも素晴らしいドラマがあるが、当作品では病棟にいるさまざまな症状がある患者たち、彼らひとりひとりのドラマにもしっかりと焦点が当てられるのが印象的であった。決して患者として一括りにされるのではなく、彼らがなぜそのような精神状態になってしまったのか、その原因から深く描いていく。

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サイコだけど大丈夫
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 もちろんドラマの肝となるのは、ムン・ガンテとコ・ムニョンとのラブロマンス。お互いに残酷な過去を背負いながらも、ムニョンの傍若無人なキャラやドラマのテンポがあいまって、終始コミカルなのがまた良い。ただし、作品内ではかなりグロテスクな表現や乱暴なシーンが登場するので、苦手な人は要注意だ。

 上記で、ドラマの肝はラブロマンスと語ったが、その一方でこの作品は、ムン・ガンテとコ・ムニョン、そしてガンテの兄・ムン・サンテ(オ・ジョンセ)3人の物語とも言える。それは、彼らが抱える過去と現在が、物語が進行していくにつれて交差し、つねにもつれ合いながら展開していくからだ。3人はときに支え合い、ときに衝突し合いながら、あまりに残酷な運命を受け入れていかなければいけない。時折挟まれる、3人の平穏な日常描写は、その背景を知りながら観ているせいで、穏やかであることただそれだけで泣けてきてしまうほどだ。

サイコだけど大丈夫
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 巧みな人間ドラマの描写とともに、作品はひとつのサスペンスとしての問いも提示する。これは物語の冒頭からずっと「謎」として描かれるものだ。兄のムン・サンテは春の季節になると、必ず悪夢を見る。そして、「蝶」が追ってくる、と叫びながらパニック状態になってしまう。これは、幼い頃に彼らの母親が殺されたことと深く関係しているようであった(母親を殺した犯人を見たのは兄だけであった)。

 果たして彼らの母親を殺したのは誰なのか。それがわからないまま、彼らは唯一の肉親を失ったその日からずっと2人で家を転々としながら暮らしてきたのだった。そして、縁あってガンテが働くことになったのは、かつて彼らが暮らし、そして彼らの母親が殺された故郷。次第に明らかになる真実に、ガンテはひとり直面するのであった。

 群像劇としても恋愛ものとしてもサスペンスとしてもコメディとしても、どこをとっても質が高く、そして見事に融合したドラマだ。勘がいい人は途中から謎に気づいてしまうかもしれないが(かなり分かりやすく演出されている)、ひとつ謎が解けたとしても、常に自由奔放なコ・ムニョンをはじめとした、多種多様で魅力的なキャラクターが予想外の展開を見せてくる見事なドラマだ。

文=園田もなか

▶Netflix公式サイト https://www.netflix.com/jp/