病気ではないと診断された… 謎の不調の原因は、自律神経の乱れかも/図解 自律神経の話①
公開日:2020/10/27
心と体のパイプ役を果たす自律神経。原因不明の体調不良の多くは、自律神経を整えればある程度改善できます。私たちが日常生活で実践すべき自律神経を整えるコツなどを、専門医が図解でわかりやすく解説します。
病院に行っても解決しない謎の不調の正体
原因は自律神経の乱れにあり
「なんとなく気分が沈む」「何をするにも億劫に感じる」「ついイライラして怒りっぽくなる」……。忙しい日々に追われていると、そんな心の不調を感じる場面が数多くあります。ほかにも、めまいや頭痛、動悸、肩こり、腰痛、冷えやむくみ、不眠といった不快な身体症状に悩まされている人も少なくないでしょう。病院で詳しく検査をしても特に原因が見つからない場合、これらの症状は「疲れ」として一括りにされてしまいがちです。
しかし、疲れにも対処の必要な疲れと、そうでない疲れがあります。趣味のスポーツで思いきり体を動かした後に感じる心地よい疲労感は、体にとってプラスになる疲れといえます。一方で、仕事や人間関係で強いストレスを受けると、たとえ肉体を酷使していなくても体がずっしりと重くなるような酷い疲れを感じることがあります。問題となるのはこうした不快な症状を伴う疲れです。
不快な症状を感じるとき、私たちの体ではどのような変化が起こっているのでしょうか。そのカギを握るのが「自律神経」です。怒りや緊張といった強いストレスに直面すると自律神経が乱れ、そのシグナルは冒頭に挙げたような不快な症状となって私たちの体に伝わります。「ストレスの多い毎日で体調が優れない」「年齢とともに体力や気力の衰えを感じる」……それらは自律神経の乱れにより引き起こされているのかもしれません。
強いストレスが自律神経を乱して不調の元凶に
ストレスや生活習慣で自律神経が乱れていく
そもそも自律神経ってどんなもの?
血液の流れや内臓の動きを司る
「自律神経」の役割について解説する前に、まずは「神経」とは何かについて確認をしておきましょう。神経は脳と体の各器官が互いに情報を伝え合う〝道〟のようなもの。体の内側、外側からのあらゆる刺激は情報として神経を伝わって脳や体の各器官へと送られ、様々な動きや反応を引き起こします。私たちが痛みを感じるのも、埃っぽい場所でくしゃみが出るのも、情報が神経という道を通って伝わり合っている証拠なのです。
情報を伝える神経は大きく2つに分けられます。脳から脊髄へとつながる「中枢神経」と、そこから全身の隅々へと伸びる「末梢神経」です。さらに末梢神経は「体性神経」と「自律神経」とに分けられます。体性神経には感覚を伝える「知覚神経」と、手足などの筋肉を動かす「運動神経」があります。一方の自律神経は、内臓の働きや血液の流れなど、生命を維持するための機能を司っています。
自律神経は自分の意思でコントロールすることができません。心臓を動かして血液を全身へと送る、呼吸をする、食べ物を消化し栄養素を吸収する、暑いときに汗を出し、寒いときに体を震えさせて体温調節をする――これらはすべて自律神経の働きによって制御されているものです。起きているときも、眠っているときも、私たちの意思に関係なく、体の機能を維持するために自律神経は24時間休みなく働き続けているのです。
自律神経の位置づけ
自律神経は自分の意思でコントロールできない
寝ているときでも絶えず働き続ける
自律神経は自分の意思でコントロールしなくても24時間365日稼働しているため、睡眠中にも呼吸を続けられたり、体温を約36度に保ち続けられたりするのです。