マナー廃止も!? エスカレーターの片側空けは危険なうえに非効率だった/毎日雑学
更新日:2021/1/3
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エスカレーターには片側を空けて、急いでいる人が通りやすいようにするというマナーがありますね。市街地など特に混雑の多い地域では徹底されていて、ちゃんとこのマナーを守っているという人も多いでしょう。
しかし、このエスカレーターの片側空けのマナーは実は危険な場合があるとご存じでしょうか?今回は、エスカレーターの片側空けが始まったきっかけや、なぜ危険なのかについて解説します。
エスカレーターの片側空けは危険
エスカレーターの片側空けのマナーは、急いでいる人とっては歩きやすいためありがたいものでしょう。しかし、日本エレベーター協会によると、そもそも「エスカレーターは歩行禁止」と呼びかけられています。実際に、2019年の時点で「エスカレーターは歩行せず、手すりにおつかまりください。」といったアナウンスが流れるエスカレーターが多くなっています。また、エスカレーター付近には同様の内容の張り紙などが貼られているのを目にするようになりました。
それでは、エスカレーターの片側を空けて歩行することに、どんな危険があるのでしょうか?
つまずきやすいため
実は、エスカレーターは普通の階段よりもずっとつまずきやすく、転びやすくなっています。エスカレーターは階段と違って、歩行することを想定して作られていないため、通常の階段よりも勾配が急になっています。さらに、ステップの高さや奥行きについても、階段よりも大きく作られており、追い越しをする想定はされていません。エスカレーターは立ち止まって乗ることを前提として作られているため、きちんと手すりにつかまって乗ることを意識しましょう。
緊急停止に対応できないため
エスカレーターは予期せぬタイミングで緊急停止することがあります。緊急停止した場合に手すりにつかまらず歩行をしていると、転んでしまいます。また、自分だけでなく、緊急停止した際には他の人もバランスを崩すことになるため、他の人も巻き込んで転んでしまうことも考えられます。停電や地震などの災害など、いつエスカレーターが緊急停止するかはわかりません。
エスカレーターの故障につながる
また、エスカレーターの左右片側だけが立ち止まり、別の片側だけを歩行する状態が続くと、構造上一方にだけ負荷がかかり続けることになります。そのため、エスカレーターの経年劣化が激しくなり、故障の原因となる場合もあるそうです。
先ほど解説したように、エスカレーターは立ち止まって乗ることを想定して作られました。つまり、片側だけでなく、左右両側に立ち止まって乗ることを想定して作られているのです。予期せぬ故障は緊急停止につながりかねませんし、この点でも片側を空けて歩行することは危険なマナーといえるでしょう。
片側空けは本当に効率的?
実は、各鉄道会社によってエスカレーターの片側空けのマナーが推奨されていた時期もありました。駅のエスカレーターは特に混雑しやすいため、混雑を少しでも緩和しようと考えたのです。しかし、エスカレーターの片側を空けることによって混雑は緩和されるのでしょうか? 止まって乗ろうとする人が片側だけに並んで渋滞を起こし、かえって混雑が増してしまう場合もあるでしょう。
過去に行われた検証
イギリスのロンドンではこうした疑問を解消をすべく、実際に検証が行われました。2015年、2016年にロンドン地下鉄のホルボーン駅で行われた検証によれば、なんと両側で立ち止まった方が効率が良いという結果が得られました。両側に立ち止まって乗った時の方が、片側を空けていた時に比べて、30%も多くの人を運ぶことができたのです。
日本ですぐにルールやマナーを変えることは難しいかもしれませんが、全員が立ち止まって乗るものだと意識を統一することができれば、現在よりもエスカレーターの混雑が確実に緩和されるかもしれません。
歩行を不快・不便に思う人もいる
2019年現在で「エスカレーターの歩行はやめた方が良い」と考える人の数は、7割を超えているそうです。そして、エスカレーターの歩行に対して不快に思う人も少なからず存在します。エスカレーターのように不安定な足場の場所で、横を人がすり抜けていくのが怖いと感じる人もいます。また、高齢の方や足腰が弱いという人にとっても、片側空けのマナーは不便と感じることが多くあります。
片側空けのマナーが始まったきっかけは?
そもそも、推奨されていないエスカレーターの片側空けのマナーがどのようにして始まったのでしょうか。最初にエスカレーターの片側空けのマナーが呼びかけられたのは、イギリスにおいてだとされています。第二次世界大戦中にエスカレーターの混雑を緩和するために、呼びかけられたのがきっかけでした。
きっかけはイギリス
日本で最初にエスカレーターの片側空けのマナーが取り入れられたのは、1960年代のことでした。阪急電鉄の梅田駅が移転した際にエスカレーターが長くなったため、急ぐ人のためにエスカレーターの片側を空けることが呼びかけられたのが始まりでした。
1970年の大阪万博で公開された歩く歩道においても、イギリス式の片側空けのマナーが導入されていたそうです。そして、1980年代になって東京に深い地下鉄駅が誕生するようになると、長距離のエスカレーターはさらに増えていきました。東京でもそのことをきっかけとして、エスカレーターの片側空けのマナーが普及するようになりました。その後はエスカレーターの片側空けがマナーとして全国的に広まっていったのでした。
以上が、エスカレーターの片側空けに関する経緯と見直しについての情報でした。
まとめ
エスカレーターの片側空けのマナーは、構造上歩行が推奨がされていないため、実は危険である。
エスカレーターは立ち止まって乗ることが想定されていることから、通常の階段よりもつまずきやすく転びやすい。
元々は駅のエスカレーターの混雑緩和のために呼びかけられたマナーだが、実際には両側に立ち止まって乗った方が効率が良いという検証結果もある。
最初に片側空けのマナーが呼びかけられたのはイギリスで、日本では最初に大阪・の梅田駅で取り入れられ、やがて全国へと広まっていった。
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