多くの民族を束ねる古代帝国が誕生。世界を形づくり、その後の文明発展の基盤を築いた/365日でわかる世界史③

文芸・カルチャー

公開日:2020/11/1

学校の授業や受験勉強で頭に詰め込んだ知識ではつかみきれなかった、世界史の全体像が見えてきます。1日1ページずつ読めば教養としての世界史が身につく1冊から、10ページでわかる世界史の大きな流れをご紹介します。

365日でわかる世界史 世界200カ国の歴史を「読む事典」
『365日でわかる世界史 世界200カ国の歴史を「読む事典」』(八幡和郎/清談社Publico)

365日でわかる世界史 世界200カ国の歴史を「読む事典」

通史 10ページでわかる世界史の流れ③
「世界」をつくった古代帝国の誕生

 日本の天皇は、ソロモン王とシヴァの女王の子孫とされるエチオピアのハイエ・セラシエ帝が1974年に退位したあと、世界でただひとり皇帝(エンペラー)を名乗っている。世界史で皇帝とか帝国というのは、多数の国とか民族を束ねた政治形態をいうのが普通で、そういうものの存在が、世界文明の発展に寄与したことは事実だ。大英帝国もその頂点にあったのは女王(クイーン)であって肩書は関係ない。

 帝国が西洋史で最初に現れたのは、紀元前7世紀にメソポタミアからエジプトまでを統一したアッシリアがそのはしりで、さらに完成した形にしたのは、紀元前6世紀にダレイオス1世(在位前522~486年)のもとで全盛期を迎えたアケメネス朝ペルシアだとされている。ペルシアはインド北西部からギリシャの一部やルーマニア、エジプトにまで領土はおよび、「王の道」が建設され、「王の目、王の耳」といわれた監察官が置かれた。ペルシアはギリシャを飲み込もうとしたが、反撃に遭い、マケドニアのアレクサンドロス大王に前330年に滅ぼされた。ペルシアの業績は、ギリシャ、エジプトからインド北部にまでおよぶ版図を持つアレクサンドロスとその後継者の帝国に引き継がれた。

 ギリシャは、ペルシアの脅威にさらされながら、哲学、自然科学、文学、美術など広範囲にわたって人間への真摯な洞察を含む文明を発展させてきた。

「われわれの法律、文学、学芸のいずれとしてギリシャにルーツを持たないものはない。人間の姿と心はギリシャにおいて完成し、それらは人の心を高め、喜ばせ、人類の続く限りやむことがないであろう」と19世紀の英国の詩人パーシー・ビッシュ・シェリーがいったことは誇張ではない。

 そのギリシャの文明が、この帝国の出現によってオリエントの文明が蓄積した知恵と融合して世界に伝播していった。

 アレクサンドロス大王の帝国の系譜は、前30年にクレオパトラを女王とするエジプトのプトレマイオス朝を滅ぼしたローマ帝国によって継承された。

 ローマ人は分割統治、異民族も活用した軍隊の組織、奴隷の安定的な活用、すぐれた建築、土木技術などを駆使して、長期間にわたって帝国の統治を安定させた。とくに、その支配がアルプスの北側やイベリア半島を含む西ヨーロッパ全域におよんだことは、のちの西欧文明が誕生する基盤になった。

 

教養への扉 ローマ帝国が広めた文明には、レバノンから興ってカルタゴなど多くの植民地都市を建設し、アルファベットを発明するなどした、海洋民族フェニキア人の貢献も大きい。

<第4回に続く>