人々に普遍的な価値観をもたらした三大宗教。世界文明に規範を与え、文明全般の伝播に貢献した/365日でわかる世界史④
公開日:2020/11/2
学校の授業や受験勉強で頭に詰め込んだ知識ではつかみきれなかった、世界史の全体像が見えてきます。1日1ページずつ読めば教養としての世界史が身につく1冊から、10ページでわかる世界史の大きな流れをご紹介します。
通史 10ページでわかる世界史の流れ④
古代文明を人類普遍のものにした三大宗教
世界三大宗教といえば、キリスト教、イスラム教、仏教である。これらの宗教の本当の意味の功績は、民族などを超えた普遍的な世界観がつくりだし、世界の文明に規範を与え、宗教としてでなく、文明全般を広く広める内容を持っていたことである。
仏教もキリスト教もイスラム教も、教えだけでなく、経典を理解するためには高い言語能力が必要だし、外国語を学ぶ意欲をかき立てる。また建築、道具、衣装、音楽、教団の組織などが充実しているので、そうしたものを伝播させるのである。
日本に仏教が伝来したのは、6世紀になってからだが、それまでは、漢字が伝来したといっても、読み書きができるのは、漢族系の帰化人に限られていた。それが、仏教伝来で一気に普及し、飛鳥文化に見られるように先進文明が導入された。
聖徳太子はおそらく有力者で本格的に読み書きができる初期の人だろうと考えられ、遣唐使が本格化した大化の改新よりあとになると、支配層はだいたい初歩的な読み書きができるようになった。
インドで紀元前3世紀にアショカ王が仏教を国教にしたのは、仏教が民族を超えた普遍的な人類愛を訴えた希有な宗教であることに着目したからだ。
仏教はガンダーラのペルシア系のアケメネス朝のもとでギリシャ文明と融合し、中国でも4世紀から6世紀の南北朝時代に大きく花開いた。日本には、このうち南朝系の仏教が百済を通して伝わり、遣唐使の派遣によって北朝にルーツを持つ隋、唐時代に発展した新しい考え方も含めて受容された(写真はアンコールワット)。
ローマでは、属領の民族もローマ市民として吸収していった過程で、ローマの伝統的な神々への信仰が社会に合わなくなって多くの新興宗教が生まれたが、そのうち、一神教であるユダヤ教から民族的な要素を抜き去り、民族を超えた愛を謳ったキリスト教が勝ち残った。
これは、キリスト教が信仰の自由と彼らの考える社会規範を尊重すれば、皇帝の権力と対立しないことも帝国の秩序を守るためには好都合だったのだろう。
それに対して、7世紀に成立したイスラム教はどのような政治をするかまで最初からかなり具体的な指針を示していたので、ある意味でキリスト教の進化形だった。
教養への扉 『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』(クリストファー・ロイド著、文藝春秋)という人気の世界史の本では、世界史上の重大事件のひとつとして、アショカ王による仏教の国教化を挙げている。ブッダによる悟りや布教よりこちらを選んだのがおもしろい。