ひとりで悩まない。PMSの症状、対処法とは? 女性の8%が該当するというPMDDとの違い【診断チェック付き】
更新日:2020/11/13
「身体が妙に重ダルい…」「無性にイライラする」など、原因不明の不調に悩まされていないだろうか。もしそうした不調に定期的にみまわれるとしたら、もしかしたらそれは生理の前の女性を悩ませる「PMS」のせいかもしれない。「PMSとは何か」「どう対処したらいいのか」など、まずは基礎知識をおさえておこう。
PMSとは?
「PMS」(月経前症候群〈Premenstrual Syndrome〉)とは、月経(以下、生理)の数日前から心身に不調が起きる女性特有の症状のこと。ちょっとしたことでイライラしたり、怒りっぽくなったり、あるいは落ち込んだりとメンタル面に不調が出たり、頭痛やむくみ・倦怠感など身体面に不調が出たりと症状はさまざまだが、ひどい場合は「人が変わったみたい」と周囲に驚かれたり、日常生活に支障をきたしたりすることもあるので困ったものだ。
ただし、いずれも生理が来たら治ってしまうのがPMS。丸の内の森レディースクリニック院長の宋美玄さんによれば「生理のある女性の70%~80%にこの症状があるといわれており、クリニックにもたくさんの女性が相談にきます」(『医者が教える 女体大全』ダイヤモンド社)とのこと。PMSの症状は20代初め頃から出るようになり、多くはそのまま閉経まで続く。「年齢が進むにつれて重症化する例もあり、三十代、四十代になって初めて婦人科を受診する人も少なくありません」(『からだと性の教科書』E・S・ダール、N・ブロックマン:著/NHK出版)とノルウェーの医師も著書でのべるように、世界中の女性の悩みのタネなのだ。
PMSはなぜ起こるのか?いつ出るのか?
PMSの原因には諸説あるが、主な原因は「ホルモンバランスの変化」と考えられている。生理の約2週間前の排卵を境に女性の身体は黄体期に入るが、その際に2種類の女性ホルモン「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が妊娠に備えて急激に増減し、そのバランスの変化がさまざまな不調につながっていくという。詳しいメカニズムはまだ解明されていないことも多いが「排卵から生理へとホルモンのバランスが変化するとき、身体がその変化に対応しきれず、心身が不安定になる」と池下レディースクリニック銀座院長(現在は東峯ラウンジクリニック院長)・池下育子さん(『PMSの悩みがスッキリ楽になる本』東京書籍より)。なおPMSの症状は排卵直後から現れる人もいるが「生理の一週間ほど前から出始め、2、3日前から生理開始までの間に最も強く出る人が多い」(同)という。
PMSの症状とは?
PMSの主な症状には身体的なものと心理的なものがある。人によって症状の出方や程度に違いがあるが、いずれも生理がきたら治るのがPMSだ。以下に主な症状をあげたので思い当たるものはないかチェックしてみよう。こうした不快な症状は確かに悩ましいが「PMSは出産のためになくてはならない重要な身体の働きの産物」(『PMSの悩みがスッキリ楽になる本』池下育子:著/東京書籍)であり、むしろそうした働きが安定していることの証だと考えれば決して悪いことではない。
〈主な身体的トラブル〉
頭痛/肩こり/腹痛、下腹部痛/便秘、下痢/むくみ/胸が張る/摂食異常(過食・拒食気味)/味覚の変化/眠気、不眠/疲れやすい、だるい/肌荒れ、湿疹/冷え性/耳鳴り/関節痛/めまい/吐き気、嘔吐/のぼせ、ほてり/多汗、にきび、脂性/のどの違和感/おりもの/体重増加、など
〈主な心理的トラブル〉
情緒不安定になり、涙もろくなる/無気力になる/理由もなく憂鬱になる/ちょっとしたことで死にたくなるほど落ち込む/イライラしやすくなる/否定的、悲観的になる/性欲が異常に増進、減退する/家族や友人、恋人とケンカをしやすくなる/子どもにきつくあたってしまう/感情的になりやすく、暴言をはきやすくなる/人付き合いが面倒くさくなる/集中力、判断力が低下する/無性に整理整頓がしたくなる/衝動買いをしやすくなる、など
(『PMSの悩みがスッキリ楽になる本』池下育子:著/東京書籍より)
PMSでよくあるトラブル
PMSによる不調のうち、特に心の不調は周囲との間に思わぬトラブルを作り出してしまうこともある。なんだか無性にイライラして夫や彼氏の何気ない言動にキレて喧嘩をふっかけてしまったり、ちょっとしたことですぐ泣くなど情緒が不安定で困らせたり。結果的に事情のわからない相手を追い詰める一方になって「もうついていけない…」と相手の気持ちが離れる原因を作ってしまうことも(中には半狂乱で「もう別れる!」と自分から勢いで引導を渡してしまう女性も少なからずいるようだ)。
また、家事に無気力になったり、子どもをちょっとしたことで激しく叱ってしまったり、集中力や能率の低下で仕事でもミスを連発したり、いつもと違う自分の行動に自己嫌悪に陥りさらに気分がどん底に…そんな悪循環に陥ってしまう人もいる。
いずれにせよPMSが終わったときに「後悔」しないよう、本などで最悪の「PMSトラブルあるある」を知っておくのも心構えにつながるかもしれない。周囲にPMSについて理解してもらう(この時期の自分は危険とあらかじめ宣言できるような関係が理想だ)、自分の気持ちのコントロールを意識するなど、いざというときにトラブルにならない工夫を少しでもしておきたいものだ。
PMSの具体的な対策
1. PMSを自覚し、生活を見直す
PMS期の女性特有の心の不調を「女子のうつ」と称する女性ホルモン研究家の西村留美さんは、著書『女子のうつ PMSがラクになる本』(飛鳥新社)の中で「女子うつを受け入れる第一ステップは、女性ホルモンが関係している可能性に気づくこと」という。「どうして、私ってこうなんだろう」と自分を否定するのではなく、ホルモンのバランスの乱れの影響を自覚するだけでも気分は前向きに変わる。お風呂にゆっくり入る、ストレスをためないなど、少しでも気持ちよく過ごすために生活を見直すのもいい。
2.基礎体温表をつける
毎日基礎体温をつけて排卵日や生理日が予測できれば、いつぐらいにPMSの症状が出るか予想することができる。あらかじめその時期に仕事の負荷を調整したり、家族や周囲に伝えておいたり、自分の精神状態の変化に客観的に対応するようにしよう。
3. 症状が重い場合には婦人科や女性外来へ
男性医師に抵抗のある場合は、最近は女性医師もたくさんいるので自分に合った病院を探してみよう。いざ受診する際にも基礎体温をつけておくとより正確な診療ができる。「3ヶ月分の基礎体温表を持参しましょう。もし基礎体温表をつけていない場合には、最低限、最終生理開始日だけは正確に言えるように」。なお「鬱病」「慢性疲労症候群」「甲状腺機能障害」「化学物質過敏症」などの場合にもPMSと似たような症状がでることがあるとのこと。症状が重い場合は素人判断せず、病院を受診するようにしよう(『PMSの悩みがスッキリ楽になる本』池下育子:著/東京書籍)。
4. 低用量ピル(OC)の使用
病院を受診されると多くの場合、排卵自体をなくしPMSが起きる黄体期もなくす「低用量ピル(OC)」を勧められる。ピルは「妊娠しにくくなる」「太る」などの副作用を気にする人も多いが、「副作用は心配がないレベル。女性医師も飲んでいます」(『医者が教える 女体大全』宋美玄:著/ダイヤモンド社)と心強い意見も。とはいえ薬で作ったリズムは薬をやめると崩れてしまうこともある。「大切なのは、ピルを活用するにしても同時に体質改善に取り組むということ」(『女子のうつ PMSがラクになる本』西村留美:著/飛鳥新社)も忘れないでおきたい。
5. 漢方薬の使用
肩こりや腰・下腹部の痛み、便秘や下痢、むくみなど症状によっては漢方薬を使う道もある。ただし使用の際には専門知識のある薬剤師や医師に必ず相談しよう。
PMDD(月経前不快気分障害)とは?
PMSと共通する症状でも、特にメンタル面への影響が大きく感情のコントロールが難しくなるケースは「PMDD(月経前不快気分障害〈PreMenstrual Dysphoric Disorder〉)」と診断されることがある。極度の苛立ちから身近な人を攻撃したり、うつ状態になって自殺願望が出たりするなど深刻な症状が目立ち、人間関係に悪影響を及ぼすことも多い。「全女性の8パーセントがPMDDに該当する。(中略)放っておいては危険」(『からだと性の教科書』E・S・ダール、N・ブロックマン:著/NHK出版)であり、思い当たる場合は速やかに病院を受診しよう。
PMSになりやすいタイプは?
全女性の7割から8割が該当するというPMSだが、症状が出やすいタイプというのはあるようだ。10代から50代までの女性300人にアンケートしたところ、PMSの症状が出やすい人には以下のような特徴があることがわかったという(『PMSの悩みがスッキリ楽になる本』池下育子:著/東京書籍より)。中でも嗜好品の摂取量が多い人にPMS傾向が強いという結果もあり、お酒、タバコ、コーヒー、間食の回数・量が多い人は控えてみると症状が改善するかもしれない。
自分にあてはまると思うもの、または、よく人に言われるものにチェックをつけてみましょう。チェックの数が多いほどPMSの症状が出やすいタイプになります。
□律儀
□まじめ
□几帳面
□執着心が強い
□完璧主義
□負けず嫌い
□自分に厳しい
□依存が強いものがある(食、物、酒、タバコ、恋人、親、友人、性交渉など)
□嗜好品の量が多い(酒、タバコ、コーヒー、甘いもの)
□妄想癖(逃避癖)がある
□コンプレックスがある
□自我が強い
□こだわりが強い
□我慢するタイプ
□普段は感情をあまり表に出さない
□生活リズムが変則的な人(夜勤、徹夜がある職業など)
□生理はわずらわしい嫌なものだという意識が強い
□不定愁訴(頭痛、不眠、冷え性、疲れがとれないなどいつもなんとなく体調が悪い)
□自律神経系のバランスが悪い
□ストレス関連疾患を患ったことがある
〈PMS傾向が強い人の特徴〉(『PMSの悩みがスッキリ楽になる本』池下育子:著/東京書籍より)
まとめ
PMSの症状は大なり小なり女性なら誰にでもあるもの。プチ不調やイライラに振り回されたり、いつもと違う自分を責めたり無理にがんばりしすぎたりするよりは、「なんだホルモンのせいだったのか!」と分かれば少し心も軽くなる。むしろ「ホルモンにここまで影響を受ける体って不思議で面白い!」――そんなふうに少しでもポジティブに考えられたらPMSは怖くないのかも。そのためにもまずはPMSを正しく知ることからはじめよう!
文=荒井理恵
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