子育てや仕事、将来に不安を感じたら… 心がスっと楽になる! 不安と上手に付き合うコツ
公開日:2020/11/8
コロナ禍により、社会全体に暗い雰囲気が漂っている。消し去ることができない「不安」という感情と、どう付き合っていけばいいのか。そんな問いを、私たちはずっと投げかけられている。楽しみにしていた学校行事がなくなったり、友達と自由に遊べなくなって時間を持て余したりしている我が子にどう接したらいいのだろうと悩んでいる、子育て中の方も多いことだろう。
そんなモヤモヤを晴らしてくれるのが、『不安を消すコツ――「安らぎ」で心を満たす96のことば』(植西聰/自由国民社)。本書では世界各地のことわざや偉人のことば、心理学の考え方などを交えつつ、不安と上手く付き合える“心の持ち方”を解説している。
「足りない」ことへの不安はどうすれば消える?
この1年で私たちの生活には大きな変化が起こった。行動が制限され、自由に人と会うこともできず、収入も不安定に…。精神的にも金銭的にも、今までの生活と比べて「足りない」と感じ、不安になっている人も多いのではないだろうか。
そんな時だからこそ、心の支えにしてみてほしいのが本書で紹介されている「少欲知足」という言葉。これには、「できるだけ欲を少なくし、少ないものや今あるものに満足することを知るのが大切だ」という意味がある。
満ち足りた生活だと、たしかに心理的な余裕や安心感が生まれやすい。しかし、人生は諸行無常。永遠に晴れの日が続くことはあり得ない。「足りない」ことへの不安はコロナ禍でなくても芽生える可能性があるからこそ、この非常時を機に捉え方を変えていきたい。
本書では、金銭的な不安を抱く人に対し、できるだけ欲を少なくするよう努力し、今あるものに目を向けて、「足りない」という意識を捨てることで自然と不安が解消される、と説いている。心の重荷を減らせるこの考え方は結果的に節約にも繋がりそうだ。
この考え方が役立つのは、金銭的な不安に対してだけではない。コロナ禍の子育てに不安を感じた時、不自由なこの時を「我が子と向き合える貴重な時間」だと捉えてみてほしい。人が集まる場所には出かけにくいが、自宅で小さなイベントを設けて盛り上がってみたり、我が子が興味を持っていることを一緒に楽しんだりしてみるのもよさそうだ。「足りない」からこそ、目の前にいる我が子の成長に気づけ、親子間の絆を深められる…。こんな風に考え方ひとつ変えるだけで、張り詰めていた心はスっと楽になるはずだ。
なお、「少欲知足」の精神は、お金の使い方を考えるきっかけにもなる。お金は生きていく上で必要なものだが、たくさん貯めこんだからといって必ずしも安心感が保証されるわけではない。多額の貯蓄があっても予期せぬ事態に見舞われ、想定していたよりも早く命を落としてしまったら本末転倒だ。
だからこそ、少しのお金で満足し、多く得られた富は社会貢献に使ったり、自身や家族が楽しく暮らしていくために有効活用したりしていこう。このご時世なら、飲食店に貢献するのもひとつの手。テイクアウトをして、家族団らんの時をさらに盛り上げてみてもいい。
「足りない」という不安から自分を解放することは、他者や自分にとって大切な人を満たすことにも繋がっていくのだ。
「死」の恐怖を和らげるブッダの教え
自分だけでなく、大切な家族の命を奪う可能性もある未曾有のウイルス。その猛威を見聞きしていると、未来への不安も募る。失いたくない存在がいるから、「死」がやたらと怖く思えてしまう。だが、ブッダの言葉を知ると、考え方が少し変わる。
“明日、自分の命があると、誰が断言できるだろう。命には限りがあるということをよく理解して、今日できることに一生懸命になって励むことが大切だ”
不安という感情は重荷になりやすいが、見方を変えれば、有意義な人生を掴むためのきっかけにもできる。なぜなら、私たちは不安を通して、大切にしたい人や時間の価値に気づくからだ。どんな生命にも永遠はないとあらかじめ肝に銘じておけば、未来に対する不安を「今を大切に生きる」という肯定的な目標に変換することができる。
それでも自分になにかあったらどうしよう…と不安になってしまう時には、禅の「任運騰騰」という考え方をお守りにしてほしい。この言葉には、「自分の運命を天に任せる」という意味がある。不安が募ると何事に対しても悲観的になりやすいが、いい意味で開き直ることも心の重荷を減らすためには大切。危険への注意や準備は十分にしつつも、何事もない今を大切な人と思いっきり楽しんでみてほしい。
なお、本書にはプレッシャーを感じた時に役立つ心の持ち方なども記されているので、ビジネスマンにもおすすめ。具体的に紹介されている「心を和らげるコツ」も役立ててみてほしい。正しく恐れるだけでなく、正しく不安がる。それこそが、この時代を生き抜いていくためのカギだ。
文=古川諭香