結木滉星「好きなことで生きていくのは難しいからこそ、自分らしくいたい」――恋愛小説について、ドラマ『危険なビーナス』にかける想いとは?
公開日:2020/11/14
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、若手俳優としての勢いを増している結木滉星さん。本誌でセレクトしてくれたのは恋愛小説『レインツリーの国』。ここではクールな印象からは想像がつかない意外な(?)素顔に迫りつつ、初挑戦となったゴールデンタイムのドラマ『危険なビーナス』にかける想いを伺った。
2018年には『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』で主演を務め、お茶の間の人気者になった結木さん。それから2年。結木さんは俳優としての勢いを増し続けている。
その見た目から受ける第一印象は「クール」。涼し気な目元と落ち着いた話し方は、やや大人びて見えるかもしれない。しかし、口を開いてみると意外にも(?)可愛らしい印象も受ける。しかも、これまた意外にも「恋愛モノ」が大好きなんだとか。
「小説でも映画でも恋愛をテーマにした作品が大好きなんです。なかでもハッピーな物語ではなく、登場人物がなんらかのハードルを乗り越えなければいけないものに惹かれます。だから、『レインツリーの国』はドンピシャで夢中になって読んだんです」
描かれるのは、聴覚障害のあるヒロイン・ひとみと健常者である伸行の恋。しかし、障害があることを引け目に感じているひとみは、伸行に対してなかなか素直になることができない。そんなひとみに対し、一生懸命に障害を理解し、歩み寄ろうとする伸行。その姿から結木さんも学ぶことがあったという。
「中学生の頃、クラスに聴覚障害のある子がいたんです。でも、補聴器も隠さずにつけていたし、クラスみんながその子の障害のことを知っていました。ただ、なかにはひとみみたいに障害を知られたくなくて、隠そうとする人もいるんですよね。その気持ちを考えさせられましたし、いかに自分が恵まれているのかも痛感しました。だからこそ、ぼくはやさしい人間になりたい。ひとみみたいに困っている人に寄り添えるような、人の気持ちがわかる人間になりたいと思いました」
『レインツリーの国』を通じて、それまで知らなかった世界に触れることができたと話す結木さん。そう、ときに小説は、読者と未知の世界とをつなぐ入り口にもなりうる。
それは結木さんが携わっているドラマや映画といった映像作品も同様だ。視聴者は作品を通じて、新しい価値観を知っていく。そんな世界で生きていることを結木さんはどう感じているのだろうか。
「役者になるきっかけはスカウトでしたけど、今はこんなに刺激的な世界で仕事ができていることに感謝しています。しかも、ぼくはこの仕事が大好きなんです。でも、好きなことだけで生きていくって難しいじゃないですか。大人になれば、どこかで妥協しなくちゃいけないことも出てくるし。だから、この世界でいかに自分らしく生きていけるか、をいつも考えているんです」
この秋には、日曜劇場『危険なビーナス』に出演している。ゴールデンタイムのドラマへの出演は、結木さんにとって初挑戦だ。
「東野圭吾さんの小説が原作なので、放送前から期待値が高いことはわかっていました。だから、絶対に面白いと感じてもらいたい。ぼくが演じるのは原作にいないキャラクターなので、尚更。『ドラマ化して成功だったね』と思ってもらいたいんです。そのためにプロデューサーと何度も話し合って役作りしていきました」
ドラマ版のオリジナルキャラクターを演じることで、相当なプレッシャーを感じている。それ以上に、結木さんの胸中にあるのは「やってやる!」という燃える想いだ。
「原作にはいないキャラクターが入ることで、ストーリーは原作通りには進まないかもしれない。つまり、原作を知っている人でも思い切り楽しめるということです。毎週、怪しい人物が出てくるので絶対に見逃せないと思います。謎だらけのストーリーを楽しみながら、初めてミステリアスな役柄に挑戦するぼくを見守ってもらえるとうれしいです」
取材・文=五十嵐 大 写真=江森康之
日曜劇場『危険なビーナス』
原作:東野圭吾(『危険なビーナス』講談社文庫) 脚本:黒岩 勉 演出:佐藤祐市、河野圭太 出演:妻夫木 聡、吉高由里子、ディーン・フジオカ、染谷将太、中村アン、堀田真由、結木滉星ほか 毎週日曜日21:00〜TBS系列にて放送中
●ある日、手島伯朗(妻夫木)の元に現れた謎の美女・矢神楓(吉高)。「弟の妻」を名乗る楓の依頼によって、伯朗は総額30億円とも言われる矢神家の遺産相続争いに巻き込まれ……。
(c)TBS
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