バービー「苦しいまま放置しないで」PMS(月経前症候群)がつらいと言えなくて困っている人への処方箋
更新日:2020/11/9
2020年2月に投稿された「これから生理を迎える君へ『初めての生理』」をはじめ、YouTube「バービーちゃんねる」が話題の芸人、フォーリンラブのバービーさん。女性がより自分らしく過ごせる社会を目指し、自分に合った生理ケアを行うことを推進するユニ・チャームの『#NoBagForMe』プロジェクトに参加するなど、悩みを持つ女性に向けた発信を続けるバービーさん。ご自身は、PMS(月経前症候群)とどう向き合っているのか。お話をうかがいました。
ただ我慢していればつらいだけ。まずは受診をしてほしい
――人によって、出る症状にも軽重にも差があるところが、PMSの難しさですよね。女性同士であっても理解できないケースがある。バービーさんは、PMSは重いほうですか?
バービー 相当ふりまわされて生きてきたほうで、常に、どうやって打ち勝つかという戦争です。どうやら人より生理痛が重いらしい、と自覚したのは大人になってからですけど、思春期のころからホルモンバランスの乱れで心身ともに苦しめられてきましたね。だから、20代のわりと早い段階で病院を頼って、ピルを処方してもらったんですよ。
――効きました?
バービー もちろんゼロにはなりませんでしたけど、改善はされました。まず、信じられないくらいできていたニキビがなくなりましたし、生理痛の感覚も全然変わった。それまでは身体が重くてお腹が痛くて動けないくらいだったのが、ちゃんと普通に生活できるようになったんです。肌も、毛穴が大きくて脂ギッシュだったのが、艶っぽくなりましたし……そうそう、体つきも変わるんですよ。飲んでいるときはくびれのあるフォルムなのに、飲まなくなるととたんにずどんとしたビールっ腹。
――そんなに変わるんですか?
バービー 変わります。私の場合は、ですけどね。性格も若干、穏やかになる気もするなあ。メンタルのアップダウンも和らいで、過ごしやすくなりますしね。もちろん、症状の何もかもがピルで解決するわけではないし、人によって効果にも差はあると思いますが、それを知るためにもPMSに悩んでいる方はまず、病院に行くことをおすすめします。YouTubeとかでいろいろ発信しはじめてから私がまず驚いたのが、苦しいまま放置している人が意外と多い、ってことだったんですよ。
――病院に行かず、ただ我慢している?
バービー そう。私にはない発想だったから驚いた。だって、痛くてつらいのをただただじっと我慢しているのって、つらくないですか? 私も婦人科系の疾患をいくつか持っていますけど、それは病院に行ってはじめて知れたことだし、知ったからには治療することもできる。
中には、それでも打つ手がなくて苦しんでいる人もいるだろうけれど、PMSの悩みの半分くらいは、受診で解決できるんじゃないかと思います。さっき戦争って言いましたけどね、もうほんと、トライ&エラーの繰り返しで模索していくしかないんですよ。私も、受診以外にあらゆることを試しましたし、今もエンドレスで解決策を探している最中ですもん。
――具体的にどういうことをされているんですか。
バービー 自分に合った病院が見つかるまでずいぶんと渡り歩きましたし、布ナプキンにしたら生理痛がなくなると言われたら試し、自律神経を整えたらイライラもおさまると聞けば鍼に行き、最近はファスティングをやってみたり。なんとなくよくなったような気がしなくもないけど、効かないことももちろんある。それでも続けるしかないんですよね。だって、さっきも言いましたけど、じっとしていればつらいままだし、どんなにつらくても働かなくちゃいけないし。
――休めない、というのがいちばんつらいですよね。眠いとか、だるいとか、言葉にすればただの怠けのようにも聞こえてしまって、自分でも我慢が足りないだけなんじゃないかと思ってしまう。生理休暇を設定している会社もありますけど、申請しづらい人も多いでしょうし。
バービー 生理痛で本当に苦しんでいる人がいるっていうことを、ちゃんと考慮できる社会になってくれたらいいですよね。もちろん、男性や、PMSの軽い女性も意識を変えることが大事だと思うんですけど、同時に、PMSの重い女性も、主観的な主張はやめるようにしたほうがいいんじゃないかなと思います。受診もせずにただ「重いんです、わかってください」と言うだけでは、当事者でない人にはやっぱり信じがたい。
第三の目として医療機関を頼り、こういうときは起き上がることもできないくらいの症状が出ます、ということを客観的に立証してもらわないと。個人的には、生理休暇書類をつくってくれる外来があるといいなあと思います。この人は眠気が強すぎますとか、動けないくらい痛みがあるので休ませてくださいとか。そうすれば、会社も納得しやすいし、本人も罪悪感なくちゃんと休めるじゃないですか。
――やはりまずは受診が大前提だと。バービーちゃんねるでも、レディースクリニックの紹介をされていらっしゃいましたね。
バービー そう。でもそのとき、「田舎にはこういうクリニックがないんです」って声も寄せられて。昔ながらの産婦人科しかなくて、昔から知っているようなおじいちゃん先生に診てもらうのも恥ずかしいのに、こんなの我慢しておけば大丈夫だって痛み止めの処方もしてもらえなかったり、にやにやされてものすごく恥ずかしい思いをしたり。
……それはきついですよね。私もいろんな産婦人科に行きましたけれど、先生によって対応も処方も全然ちがうんですよ。はずれを引いたときは、けっこうダメージを受ける。それが、ほかに頼るところもなくて藁にもすがる思いだったらなおさら絶望するだろうし、二度と行きたくないと思ってしまうかもしれない。でも……それでも諦めないでほしいな、と思います。絶対に、助けてくれる先生はいるはずだから。
「恥ずかしくて言えない」人がいることに、同じ女性なのに気づいていなかった
――初のエッセイ集『本音の置き場所』(講談社)は、FRaUで連載が始まったとき、SNS上でかなり大きな反響を呼んでいましたね。『#NoBagForMe』に参加したり、PEACH JOHNとコラボして下着をつくったり、そうした活動を通じて改めて気づいたことはありますか?
バービー 苦しいまま放置している人が意外と多い、っていう話はさっきしましたけれど、「言えない」って人の多さに驚きました。私自身は、欲しいブラジャーがないからつくりたいと思っただけだったし、生理の動画も、困っている人がいるのにどうして助けないんだろうと思って投稿しただけ。特別な意義を背負っていたわけではなく、ナチュラルに疑問を解消しようと思っただけだったんですよね。
でも、たとえばブラジャーの悩みひとつとっても「恥ずかしいからコメント欄ではなくDMでお伝えします」って人がいて……。私にとってはただの日用品でしかないけれど、誰かにとっては性的な意味合いのほうが強いのかもしれない、とか、いろいろ考えさせられました。
――ブラジャーもですけれど、とくに生理は、おおっぴらに口にするのははしたない、っていう感覚を持っている人は多い気がしますね。
バービー 私が生まれ育った北海道って、シャイで恥ずかしがり屋は多いんだけど、はしたないって感覚とはあまり薄いように思います。なんていうんだろう、同じ日本人なんだけれど、開拓を繰り返した人の出入りの多い土地だからか、本州のみなさんよりも歴史とか文化みたいなものを背負っていない。
だからという訳じゃなく私個人の性格かもしれませんが、同じ女性なのに、私は言えなくて困っている人たちが存在することに気づいていなかった。みんな、さまざまな角度からストッパーをかけられて、身動きがとれなくなっているんだなってことに気づかされました。どうして受診しないんだろうというのは今も不思議だけれど、そこにも何かしらの杭が刺さっているのかもしれないなあ、と。
――はしたないという言葉を通じてタブー視されることで、情報が上手にまわっていかない、というのもありますよね。自分ひとりで抱えて、立ち止まってしまう。みんなもきっと我慢しているはずだから、自分もそれくらい我慢しなきゃ、とか思いこんで。
バービー 家族のなかだけで、さらに女性のなかだけで継承されていくから、昔ながらのやりかたを延々と守り続けてしまったりとかね。ナプキンひとつとっても「お母さんに勧められた」というだけで、自分にもっと合うものがあるかもしれないのに、見つけられなかったり。
でもそうやって、女性特有なものを憚ったり、主体的に行動しなかったりすることを、望んでいる社会というものもあったんじゃないかなと最近は思います。女性がいろんなことに気づかないままでいるほうが、コントロールしやすくてラクだ、と思う存在があったんじゃないのかと。
だからこそユニ・チャームさんの活動は意義のあるものだと思うし、女性がみずからの意思で考え、行動することに目覚めてほしいなあ、と思います。
自分で考えて決めていく。それが結果的に自分の心身を癒していく
――ピルを飲んでも症状がゼロになるわけではない、とおっしゃっていましたが、PMSのイライラや不安感などは、ふだんどのように対処していますか?
バービー 実を言うと、メンタル的なことに関しては、あんまりPMSかどうかを意識していないんですよね。私、とっても気分屋なので(笑)。生理前だろうとなかろうと落ち込むときは落ち込むし、イライラするときはしますから。自分のストレスがたまってるなと思ったときの発散方法はいくつかストックしてあるので、それを実践してスカッとしたり、とにかく涙を流してみたり、蓄積した自分データに基づいて対応しています。
私がいちばん落ち込むのは「自分には何もできていない!」と思うときなので、なんでもいいからTo Doリストに書き出して、ひとつひとつの達成感を得て、自己肯定感を高めていくとか、できない原因を書き出してそれを具体的に解決するとか。『本音の置き場所』にも書きましたけど、書き出す、っていうのは私のなかですごく大事な思考整理の方法です。
――自炊をよくされるようですが、バービーさんにとって、お料理もストレス発散の一環ですか?
バービー 30代になってから自律神経の不調を強く感じるようになり、自炊は私にとって体調管理の一環なのですが、ストレス発散にも繋がっていますね。料理って、家のなかでできる唯一の自然との触れ合いって感じがするんですよ。野菜に触れて、無心になって、自分の身体を整えるための料理を作っていると、社会的な立場を忘れ一個人の本能的な感覚に立ち戻れる。そういう時間を定期的に取り入れることで、メンタルの安定にも繋がっている気がします。
――お話をきいていると、バービーさんはすごく客観的にご自身を分析されて、丁寧に向き合って、自分にいちばん合う対処法を構築していっているのを感じます。
バービー そうですね……。もともとの私は、自分の身体に対して鈍感だったと思うんです。その割に感じていたコンプレックスを抱え続けるよりは、ひとつずつ解消していきたいと思って、試行錯誤を繰り返してきた。人見知りだったけど、笑って挨拶できる人間になりたいと思って、本を読んだり鏡の前で笑う練習をしたり。そういう小さな努力を積み重ねてきたことが、結果的に、自分の心身に対して敏感になれる近道だったのかなと思います。
ただ、私がみなさんに声を大にしてお伝えできることって実は、その試行錯誤……トライ&エラーが大事だよっていうことくらいで。私が紹介するクリニックも、ダイエット法も、スキンケアも全部、あくまで私に合った方法というだけで、みなさんにも最適とは限りません。
――人それぞれ、悩みの種類も体質も違いますからね。
バービー だけど今、SNSで発信を続けていて感じるのは、みなさん口コミを信用しすぎるということ。自分の好きな人、憧れの人が勧めていたというだけで、それが何に効くのか、客観的な根拠はあるのか、確かめもせずに追従しようとしてしまう。それなのに肝心の医療機関には行かなかったりする。それはとても危険だなと思って、「バービーちゃんねる」でも必ず最後に「あなた自身で選びとってね」って言うようにしています。
私は専門家ではなく、私の身体で実証した個人的なデータを参考として見せているだけ。知ってほしいのはどちらかというと結果ではなく、過程。こういうふうに考えてデータを出すと悩みを解決する道筋が立つかもしれませんよ、ということなんです。他人の言葉を鵜呑みにしてしまうと、結局、新たな悩みを生み出す温床になってしまうんじゃないかな、と思うので、自分で考えて決めるということの参考に少しでもなればいいなと思いながら、YouTubeはやっています。
――誰かの言葉を鵜呑みにすると、失敗したときに誰かのせいにもしてしまいますしね。誰かに依存していると、メンタルも安定しなくなってしまう。
バービー 大変だとは思うけど、自分のことは自分で考えて決める。それが結果的に、自分を癒していくことに繋がっていくんだと思います。
取材・文=立花もも 撮影=花村謙太朗