生理痛の痛み止めの「効果が下がる」ってホント? 医師に聞く薬の仕組みと注意点
公開日:2020/11/6
女性特有のからだの不調やトラブルで悩んでいませんか。「お医者さんに行くほどではない…」「デリケートなことなので人には聞きにくい…」そんな体の悩みを、All Aboutガイドであり、ポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長の清水なほみ先生に聞きました。自分のからだと向き合い、健やかに過ごす手助けとなってくれることでしょう。
一般的に、月経痛の治療薬として薬局などで手に入る市販薬は、いずれも「非ステロイド性消炎鎮痛剤」に分類される薬剤で、痛みの伝達物質である「プロスタグランジン」という物質を作る過程をブロックする作用があります。単純に「プロスタグランジン」が作られないようにするだけなので、痛みを抑える部位は選別されません。つまり、服用すれば、頭痛も歯痛も関節痛も月経痛も、「プロスタグランジン」が原因で引き起こされている痛みはすべて抑えられるのです。
この痛み止めについて、たまに「何度も飲むと効かなくなるんですよね」「痛み止めは飲んだら体に悪いんですよね」というご質問をいただくことがあります。もちろん、あらゆる薬には、アレルギーを引き起こしたり、「副作用」というデメリットがありますから、飲まなくて済むなら飲まない方がいいでしょう。副作用が強く出る可能性もありますから、「体に悪い」こともあります。
鎮痛剤が抑える「プロスタグランジン」は、血流をよくしたり、胃の表面を保護する働きも持っています。なので、鎮痛剤で「プロスタグランジン」を抑えすぎると、腎臓の血流が悪くなって「腎障害」が起きたり、胃の表面が荒れて胃が痛くなったり胃潰瘍になったりすることがあります。
なので、鎮痛剤は服用する量や頻度が決められており、過剰に服用すれば上記のような弊害が出る可能性はあるのです。
また、鎮痛剤が「途中で効かなくなる」ことがあるのか、ですが、理論上正しいタイミングで服用していれば「効果が下がる」ことはありません。もし、以前は鎮痛剤を1錠服用すれば抑えられていた月経痛が、最近は飲んでもあまり効かないといったことが起きているようであれば、それは、「痛み止めの効果が下がった」のではなく「痛みの程度が上がった」と言えます。
強い痛みを感じ始めてから、つまり、プロスタグランジンが大量に放出された後にいくら痛み止めを飲んでも効きません。いったん作られたプロスタグランジンを「消す」働きはないからです。痛みが強く出る前、プロスタグランジンが「作られ始めた」タイミングで服用すれば、それ以上痛みが強くならないようにする効果が期待できます。
月経痛に対して「痛み止めを使うな」というのは、上記のような鎮痛剤の副作用を心配して言われている可能性もありますが、もっと根底に「生理痛は病気じゃないんだから我慢しろ」といった間違った通念が入り混じっていることもよくあります。
どの薬も、「何のために服用するのか」「自分にとってなぜその薬が必要なのか」をきちんと考えて、賢く活用していくとよいでしょう。