モンテッソーリ教育で自己肯定感を高める

　本書によれば、モンテッソーリ教育では自己肯定感を高めることで、才能を伸ばすことができます。その理由は、本書に紹介された「成長サイクル」を読めば一目瞭然。簡単に説明すると、たとえば子どもが「ティッシュの中身をひっぱり出す」動きを始めたとして、それは子どもが「手先を自由に使える」力を習得しようとしている時期だから。そこで子どもは「自分で試してみよう」と集中して繰り返し、やり遂げることで満足感を得て、自己肯定感が高まるのだとか。この一連の流れが「成長サイクル」です。

　このサイクルを繰り返すために必要なのが、親が子どもの環境を整え、わかりやすく教えること。まさにモンテッソーリ教育なのです。0～3歳の時期、これから生きていくために必要な力をひとつずつ習得して、そのたびに自己肯定感も徐々に高まっていく。すごいサイクルだと思いませんか？

　ちなみに本書では、「成長に必要な環境を整えること」と「先回りすること」の違いについてもわかりやすく説明しています。

子どもが夢中に！ “使い方がひとつだけ”の教具

　とはいえ、忙しかったり、危なっかしかったりして、ゆっくり見守ることができないときもありますよね。そこで活用したいのが、モンテッソーリ流の教具です。

　たとえば、「モノを落とす」動きを繰り返して満足感を得る“貯金箱＆チップ”のセットや、箸を使うための練習にもなる“毛糸玉をトングで掴む”道具など。モンテッソーリ教育の教具は市販では高価なものが多い印象ですが、本書には、100円ショップで揃えて自作できるような教具がたくさん紹介されています。

　驚くのは、これらの使い方がひとつしかないこと。最近はいろんな種類のおもちゃがあって、「ボタンを押すと音が出て、文字も覚えられる」など多機能なほうが、子どもが楽しめて知育にもなる…と選びがちでしたが、思い違いだったかも。本書を読むと、使い方がひとつだからこそ集中して遊べることがわかります。著者が主催するモンテッソーリ教育のサロンでは、普段は落ち着きがない子でも驚くほど「お仕事（普段の活動）」に熱中し、片付けまでできるようになるのだとか！ これならバタバタしているときも安心して見守ることができそうです。

　教具だけでなく、衣類や家具を選ぶときのコツが紹介されているのも興味深いです。子どもの衣類やインテリアを選ぶとき、デザインや機能性で迷いがちですが、本書のように“成長の原理”に適ったものを選べば決断しやすいかもしれません。

本当に子どもに必要な教育とは？

子どもはすべてのことができるように生まれてくるのです。もし、できないことがあるとすれば、物理的に不可能な環境にあるか、どうすればいいのか、やり方がわからないだけなのです。

　これは、モンテッソーリ教育の開発者であるマリア・モンテッソーリの言葉。子どもは生まれながらにして、努力しなくても繰り返すことで力が備わる「無意識的記憶」を持っていて、3歳を過ぎるとその力が徐々に薄れていくそうです。そもそも備わるべき力を与えられないのはもったいないし、0～3歳の子どもが持つ驚くべき力を十分に生かさない手はありませんよね。

　著者は、理論と実践で必ず効果が出るモンテッソーリ教育を、論理的に物事を進めるのが得意であることが多い男性にもすすめています。子育てに関心のあるママはもちろん、初めての子育てで何から始めていいのかわからないパパにもいかがでしょうか？ 考え方と実践を一度に学ぶことができ、今すぐ始めたい人におすすめです。

文＝麻布たぬ