キューライスとの初コラボ!ヒグチユウコ最新絵本『ながいながい ねこのおかあさん』の魅力とは?

文芸・カルチャー

公開日:2020/11/7

ながいながい ねこのおかあさん
『ながいながい ねこのおかあさん』(キューライス:著、ヒグチユウコ:イラスト/白泉社)

 発売中の雑誌『MOE』12月号の表紙を飾るのは、うなじで結ばれた赤いリボンがかわいらしい、つぶらな瞳をした子猫。ヒグチユウコさんの新刊絵本『ながいながい ねこのおかあさん』(白泉社)に登場する、けなげでひたむきな主人公だ。文章を担当したのは、ネコノヒーやスキウサギ、ドン・ウッサなどのキャラクターで知られるキューライスさん。絵本だけでなく、マンガやアニメーションの世界でも活躍する新進気鋭の作家との、初の共作に注目があつまっている。

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 子猫のおかあさんは、タイトルどおり、とてもとても長い。なにが? といえば、胴体である。お母さんの顔にすりよる子猫が描かれた絵本の表紙からしてたまらなくかわいらしいのだが、その状態の子猫が、おかあさんのおしりを見ることもできないくらいに、長くて遠い。ところがある日、子猫はおかあさんのしっぽのところまで強い風で飛ばされてしまう。そこから、子猫の大冒険がはじまるのである。

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 声は聞こえるのに、顔は見えない。延々とつづく胴体は横たわっているから、お母さんがそこに“いる”のはわかっている。けれど、走れども走れどもおかあさんの顔にはたどりつけず、最初ははりきっていた子猫も、だんだん心細くなってしまう。

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 その姿にきゅんとしたのは、自分にも覚えがあったからだ。たとえば子供のころ、昼寝から目が覚めたとき、隣にいたはずのおかあさんがいなくて、同じ家の中にいるのはわかっているのになんだかとても遠く感じてさみしくなった。大人になってからも、ひとりで大丈夫と勇んで生きてきたけれど、うまくいかないことがあったとき、しんどい思いをしたときに、おかあさんを思い出してふと泣きだしそうになってしまう。

 ながいながいねこのおかあさんは、安心感の象徴だ。その気になればすぐ子猫を自分のもとに呼び寄せることができるのに、子猫が心配でたまらなくて声をあげつづけても、それをしないで見守っている。きっと一人でたどりつけるところまで走れるはずだと、信じて見守ってくれている。そんな、包み込むようなやさしさの、象徴。

『MOE』12月号では、物語の原案を思いついたのは大学生のときだというキューライスさんと、ヒグチさんの特別対談が掲載されている。どのようにこのかたちが紡がれたのかぜひ、お二人の言葉に触れて感じとっていただきたい。同誌では絵本刊行を記念してヒグチさんの特集が大々的に組まれており、ヒグチさんがイラストを手掛けた映画『ミッドサマー』のアートワークを担当した大島依提亜さんとの映画対談『風の谷のナウシカ』も、見逃せない。

文=立花もも