夢に向かうための意思は、どうやって見つけるの?――『コンビニ人間』/佐藤日向の#砂糖図書館④
公開日:2020/11/14
声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像や舞台でも活躍を繰り広げる佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本やマンガから受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
皆さんは普段生活する中で、
なぜ今の職業に就いたのか、
夢を持ったきっかけはなんだったか、
と深く考えたことはあるだろうか。
私は幼少の頃に出会ったキラキラした女の子に憧れて芸能の世界へ飛び込み、
三森すずこさんに出会ってから自分が挑戦したいことにがむしゃらにチャレンジしてきた。
しかし、『コンビニ人間』という作品は、こうして私が自分の意思で夢を見つけて、
ただ真っ直ぐに突き進むことが今出来ているのは特別なことだと痛感する物語だった。
この物語の主人公、古倉恵子は子供の頃から周りから奇妙だと思われやすい性格だった。
家族がきっかけで、とかではなく、自分自身の持つ感性で行動すると”変な子だ” “人の気持ちが分からない” と言われてしまう。
小説内で登場するたとえ話は共感することが難しいものばかりではあったが、私自身も思ったことをすぐ口にしてしまう事で誤解を生んでしまった経験は何度もある。
そして”日向ちゃん、変わってるね”と言われることも沢山あり、自分では周りと変わっているなんて意識したことがなかったのに、その言葉がきっかけで、私は人と何かが違うのかもしれない と意識するようになった。
私には舞台やステージの上で表現する場所があるからこそ、それを個性として受け入れることが出来たが、この古倉恵子にとっては”コンビニ”が一種の演じる場所になっていると感じた。
彼女はコンビニ店員になることでしか、周りが求める”普通”の人間として生きることが出来ないと作中で気づくのだが、ラストに向かうにつれてそれが彼女の生き方であり、生き甲斐でもあることが分かる。
そしてコンビニという場所が彼女の一部になっていると気付かされた。
それはどの人にも当てはまることで、これがないと自分らしさが無くなる物だったり、場所が、きっと誰にしもあるはずだ。
私はこの作品のラストを読んだ時、自分がコンプレックスだと感じていることはもしかしたら考え方次第では個性にもなり得る可能性があり、その個性が将来に繋がることもあるんだと思えた。
特に印象的だったのは最後にある、
「人間の私には、ひょっとしたら白羽さんがいたほうが都合がよくて、家族や友人も安心して、納得するかもしれない。でもコンビニ店員という動物である私にとっては、あなたはまったく必要ないんです」
という台詞。
周りからしてみれば、こうであった方が自分にとって都合が良い、
という人物像がもしかしたらあるかもしれない。
でも人の考えや意見は一旦置いておいて、自分が目指したいものにまっすぐ進む選択をするのも、結局は自分の意思の強さが大事なんだというメッセージを、私はこの台詞から感じた。
このコラムを読んでくれている貴方が、もし、将来に悩んでいたり自分の夢を追い続けてもいいのか迷った時に、きっとこの作品は新しい選択肢をくれると私は思う。
決断をする一歩が欲しい時、是非手に取ってみてほしい。
さとう・ひなた
12月23日、新潟県生まれ。2010年12月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして、メジャーデビュー。2014年3月に卒業後、声優としての活動をスタート。TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(鹿角理亞役)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)のほか、映像、舞台でも活躍中。
公式Twitter:@satohina1223
公式Instagram:sato._.hinata
レギュラー配信番組『佐藤さん家の日向ちゃん』:https://ch.nicovideo.jp/createvoice