まるで漫才!? 飼い主のボケに愛犬がツッコむ、犬とのお散歩「あるある」コメディ
公開日:2020/11/13
うさぎ、アヒル、フェレットにネコ…これらは、筆者はりまが実際に街中で見た、リードを着けて飼い主と散歩していたペットたちである。その中でも、ネコにリードを着けて散歩するシーンは衝撃的。ちゃんと飼い主(おばちゃん)の横に並び、同じペースで歩いていたのが非常に印象深かった。このようにいろんな種類の動物が散歩する時代になった現在のペット散歩事情。とはいえ、やはり一緒に散歩するペットの代表格といったら…そう、犬! 今回は、その犬の中でも、日本の代表的犬種である“柴犬”を屋外で飼っている家族とその散歩の日々を描いた、お散歩コミュニケーションコメディ、田岡りき先生の『今日のさんぽんた』(小学館)をご紹介。
愛犬との「散歩あるある」が詰まってる! 気になる内容は?
ある家で飼われている柴犬のポン太は、幼いときからずっと飼い主である少女・りえ子と一緒に散歩へ出かけていた。そんなポン太の散歩をリードするりえ子は、天然で能天気なところがあり、ポン太は犬ながらそれを感知しては、心の中でりえ子に向けてツッコミを入れていた。道中で起きるハプニングあり、新たな通り道の発見あり、そしてりえ子の(ポン太にとってどうでもいい)独り言ありと、晴れの日も雨の日も暑い日も、そして家族には内緒の夜も、お互い振り回して、はたまた振り回されての気まぐれなお散歩へと今日も出かけるのであった。
犬との散歩は、飼い主との1対1のコミュニケーションの場だ。犬に好かれているか、また犬が飼い主に対して従順であるか否かは、リードの扱い易さで決まると言っても過言ではないだろう。今回の物語の飼い犬・ポン太は、玄関前に犬小屋を設けて屋外で飼われている。なので、散歩に出かけることになっても急にテンションが上がる…というわけでもなさそうで、至って落ち着いた態度で散歩に挑む。りえ子との散歩は常に行き当たりばったり。そして天然で気まぐれ。それでポン太は思わず「マジかよ」などとツッコまずにいられなくなる性格になったようだ。
彼女の残念っぷりに対してポン太は一見冷めた表情で接しているが、長年一緒に散歩してきたからなのか、りえ子が進学によって離れることになってしまい感極まったときに見せるポン太の表情には、真の関係性が滲み出る。いったいどんな感じなのかはぜひ本作で確認を。
当たり前だがこの作品はフィクションである。だが本作を読んでいると、飼い主の何気ない独り言に対して、もしかしたらポン太のように犬は何かツッコミを入れているのかもと妄想してしまう。そう思いながら読んでいくと、実際に愛犬を飼われている方は次回散歩に出るときに、犬が何を考えているか勘繰る習慣がつきそうだ。そのくらいこの作品のポン太のツッコミには“ありそうな感じ”がこもっている。
この作品は、Twitter上で発表された4ページと、『ゲッサン』本誌で掲載された10ページ弱の短編モノが、今回の第1巻には20話以上収録されている。中盤では、ポン太が0歳の回、つまりポン太とりえ子のコンビとして初めての散歩の話があり、そもそものコンビ関係はどうだったのかがここで確認できる。1話完結っぽいがそうでもなく、りえ子の中でよみがえる昔の記憶から始まる再会のストーリーとか、第1話から過去をたどった、りえ子のボケボケ歴史とか、全て読むことで一層の物語の深みが楽しめる。
さて、ペットと散歩する飼い主の目線で書いた“つもり”の今回のご紹介、そんな自分は実は散歩はおろか、犬を飼ったことがない。中学時代のジャンガリアンハムスターと、高校の数カ月間だけの拾った仔猫くらいだ。きっとポン太はこの事実を知ったらこうツッコむだろう、「マジかよ」って。
文・手書きPOP=はりまりょう