自分の性格を今から変えることは可能? 心理学の最新研究からみると…
公開日:2020/11/14
性格とはどうやって決まるのだろうか? 『性格とは何か より良く生きるための心理学』(小塩真司/中央公論新社)は、心理学者である著者がデータに基づく研究から性格を分析する1冊。本書から、「性格は変えられるのか?」、また「今の性格でどうすればより快適に生きられるのか?」を探ってみた。
「性格」という曖昧なものの定義
優しい性格、頑固な性格、性格は肉食系、性格は草食系――「性格」という言葉はさまざまな場でよく使われるが、それらは大雑把な意味合いなのだとか。心理学的な「性格」の意味は、「気質と環境によって形作られるもの」だという。
細かく説明すると、「気質」とは、生まれもった活発さ、敏感さなどのことで、これは一生変わらない。そして、「環境」とは、育つ家庭の環境、親の育て方や育つ土地など、人を取り巻く周囲の状況のことだ。だから、あり得ないことではあるがまったく同じ気質の子どもが2人いたとして、その気質が理解されて育った子と、気質などおかまいなしに親の都合優先で育てられた子では、その性格は違うものになる。
ちなみに、どちらの子が幸福な人生を歩むかといえば、もちろん前者だろう。後者は、自己肯定感が低く、そうすると生きづらさを感じやすくなるという。では、合わない環境に生まれてきてしまった人は、一生不幸なのだろうか? また、性格はずっと変わらないものなのだろうか?
結論からいうと、性格は変わるもののようだ。「気質」は一生変わらないとしても、「環境」は一生を通して変わっていくからだ。確かに、小中高、大学、会社と人の環境は変わっていく。本書によれば、性格は、年齢を重ねるほどに、穏やかに寛容になっていくとのことで、その理由は、幼い頃は自分に合わない環境しか選べなくても、大人になると自分に合った集団をそれなりに選べるようになるからではないかと推察する。
自分の性格を変えることはどこまで可能?
歳をとれば穏やかに寛容になるといわれても、今すぐ性格を変えたいと思う人もいるに違いない。もっと成功したい、もっと会社の人とうまくやりたい、今すぐ幸せになりたいと、人の欲望はきりがないのだ。そんな人に向けて、自分の性格と共により良く生きるための2つの方法を紹介しよう。
その1:性格を無理やり変える
これは、気持ちはともかく言動を変えると性格も変わるので、これで理想の人生をという提案だ。
まず、自分が望む性格の特性を決める。例えば、「外向性のある自分」などだ。そして、実際に無理やり行動してみる。外向性なら、「お店では必ず店員さんに声をかける」「会ったことがない人に自分から話しかける」といった行為だ。
その2:環境を変える
こちらは、自分の性格はここまで生き抜いてきた証拠であり価値あるものだと認める、というかいい意味であきらめる必要がある。その中で、住まいや仕事場の環境を、自分にとって心地よいものに変えることで快適になろうというわけだ。
音の大きさ、部屋の広さ、人の密度、温度は、どのくらいが自分にとって最も快適だろうか。暮らす場所は、都会の喧騒を好むのか、海の近くが好きなのか、木々の多いところが落ち着くのか。すぐに、引っ越す転職するといった行動が難しくても、観葉植物を置く、お気に入りの膝掛けを買うなど、工夫できるところから自分が快適な環境作りを意識してみてはどうだろうか。
ちなみに、本書では2番目の方法を一押ししている。理由は、性格とは多面的な特徴をもつからだ。例えば、几帳面な性格と一括りにいっても、生活のすべてにおいて几帳面な人はなかなかいない。ある部分では几帳面だが、別の部分はそうでもなかったりするものだ。だから、気質に沿い、かつこれまでの歩みに敬意を表する環境を、自分で自分に用意してあげようというわけだ。
結局、自分から自分へのやさしさが、快適な人生につながる大きな鍵になりそうだ。
文=奥みんす