洗剤の「まぜるな危険」が生むガスは戦争でも使われた猛毒。身近な“化学”を図解で紹介
公開日:2020/11/20
新型コロナの病床を支え続けている医療従事者。そんな英雄たちへの感謝を込め、ほんのわずかな時間であるが日本各地でサプライズ花火が上げられた。この粋な計らいに胸を熱くした人は多いのではないだろうか。
日本が誇る火の芸術、花火。でもどんな仕組みなのかと聞かれると、よく分からない人が多いはず。考えてみれば、身のまわりには“知っているけど原理が分からない”なんてことがたくさんある。
そんな疑問に分かりやすく答えてくれるのが、名古屋工業大学名誉教授の齋藤勝裕氏。『図解 身近にあふれる「化学」が3時間でわかる本』(齋藤勝裕/明日香出版社)は、誰もが1度は感じる「なぜ?」に焦点を当てた1冊だ。
化学や理系科目が苦手な私でも、身近な具体例と図解のおかげで、あっという間に読み切ってしまった本書。ここではその魅力的な内容のなかで、特に「これは知ってよかった!」と感じたトピックを3つ紹介しよう。
洗剤の「まぜるな危険」が生むガスは、戦争にも使われた猛毒!
トイレ用洗剤やキッチン用の漂白剤のパッケージに「まぜるな危険」と書いてあるのを見たことがあるだろう。しかし、実際に何を混ぜると“危険”な状態になるのか、分からない人はきっと多いはずだ。
混ぜてはいけない洗剤は、塩素系洗剤と酸性洗剤。この2つを混ぜると、猛毒の「塩素ガス」が発生するんだとか。
ちなみに、第一次世界大戦でドイツ軍が開発した毒ガス兵器がまさしく、この塩素ガス。殺傷能力はすさまじく、初めて使用された際5000人もの兵士が命を落としたそう。
こんなガスが身近で発生したら、危険極まりない。洗剤に「まぜるな危険」の表示がある場合、取り扱いにはくれぐれも注意しよう。
水や小麦粉が爆発!? 知らないと恐ろしい水蒸気爆発と粉塵爆発
油を引いたフライパンに水滴をたらすと、パチパチ弾けて熱い思いをしたことはないだろうか。実はこれは水蒸気爆発と呼ばれる現象だ。「熱い!」程度で済めばまだいいが、天ぷら料理には要注意。爆発して油が飛び散ると火事につながることも。
危ないのは水や油だけじゃない。無害に見える小麦粉や砂糖といった可燃性の粉は、辺り一帯に舞い散った状態で火が付くと一気に燃え上がる。これを粉塵爆発という。
この爆発はかなり厄介。というのも、火だけでなく、電源プラグに溜まったホコリや静電気でさえもトリガーになってしまい、予兆なく爆発してしまうこともある。そんな危険を避けるためにも、日頃の掃除や換気を心がけたい。
花火には中高生の理科実験の知識が使われている…?
花火の発射や玉の爆発に使われるのは火薬。それなら、あの美しい色も火薬の性質…かというと、厳密にはそうではないらしい。
花火が生み出すあの美しい色は、花火の玉の中に詰め込まれている火薬と金属の粉末を混ぜた「ホシ」によるもの。カルシウムはオレンジ、バリウムは緑など、金属によってさまざまな色を発しながら燃える“金属の炎色反応”を利用しているのだ。
難しく感じるかもしれないが、中高生の頃、炎色反応を調べるために様々な物質を燃やして強い光を出した理科の実験と同じ原理。そう考えると、花火も身近な化学の延長というわけだ。
新型コロナの影響で今年の花火大会は軒並み中止となった。残念ではあるけれど、この機会にじっくり“予習”しておき、花火を一緒に見に行く友人や恋人に、
「花火のオレンジってカルシウムなんだって!」
「緑に光るのはバリウム。何だか人間ドックを思い出しちゃうね」
なんて、花火うんちくを語ってみるのもいいかもしれない。
本書にはこのほか、「なぜステンレスがさびないのか」「コンクリートに入れた水はなぜ消えるのか」「お酒にはどんな種類があるのか」など、好奇心をくすぐる化学の話題が盛りだくさん。
専門的な話は難しくて苦手…、でもテレビや映画で化学の話が出てくるとおもしろくてつい見てしまう。そんな“かくれ化学ファン”の心を、本書はワシ掴みにして離さないはずだ。
文=冴島友貴