災害時、段ボールを使って水を確保するアイデアとは? 災害に備えながら節約もできる「防災力」を鍛えよう

暮らし

公開日:2020/11/24

 地震や台風などの災害に備える場合、お金をかけて防災グッズを購入してこそ、安心感を買えると考えていませんか? 「大切なのは防災グッズを買い揃えることではなく、防災を身近なものとして生活の中に組み込む。そして、いざというときに何とかできる自分でいることです。防災グッズも実は家にあるもので代用できますよ」と教えてくれたのは国際災害レスキューナースの辻直美さん。辻さんが日ごろから実践している防災のコツを紹介してもらいました。

「たとえば、災害が起きて断水するかもしれないという状況になったとします。生活用水を確保する必要がありますよね。かろうじてまだ水が出ている水道の蛇口から、なるべくたくさんの水を溜めておきたいけれど、家にはバケツがひとつだけ。そのときあなたは何を使いますか?

 もし私なら、段ボール箱にゴミ袋を2枚重ねにしてセットしたものを何個も作り、そこに水を溜めていきます。ゴミ袋も段ボールも、水を溜めるための入れ物ではありませんが、これで十分、用を成します。このように、災害時は基本的にモノが不足します。『何で代用できるか』と考える力を身につけているととても役に立ちます。“専用”でなければダメという固定観念を取っ払って、柔軟に考えてみてください。これを日ごろから実践することで、いざというときに慌てない“防災力”を身につけることができます」

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バケツを段ボール+ゴミ袋で代用。ゴミ袋は多めに備蓄しておき、段ボールは捨てずにいくつか取っておきましょう。
画像提供=『レスキューナースが教える プチプラ防災』(扶桑社)

「毎日の料理や掃除も、意識すれば“防災力”を鍛える場になります。調理にアルミホイルを使ったら、普通ならそのまま捨ててしまいますよね。私は調理後に丸めて金たわしとしても使い、ヘタってきたら重曹をつけて包丁を磨いて、それから捨てます。アルミホイルでも意外とフライパンの焦げつきはきれいに落ちます。重曹などの研磨剤を塗布すれば包丁研ぎの代わりにもなるんです。ただし、傷が付きやすいので、傷が付くと困るものには使わないように注意してください。

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 被災時では、アルミホイルをランタンの下に敷いて光の拡散に使うこともできます。それを少しくしゃくしゃにして靴下の上から足首に巻いて防寒に使うことも。それから、金たわしとしても活躍するでしょう。モノが不足する災害時には、限られた資源を無駄にしないことが生き延びられるかどうかに直結しますから『最後まで使い切る』ことも大切です。普段から身近なもので代用する力を身につけておけば、災害時に物資が不足していても、何か他のもので代用できないか考えられます」

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アルミホイルひとつでもさまざまな用途に使えます。モノが不足する災害時は、あるものを無駄にせずどのように使えば生活できるかを考えなければならなくなります。

「専用のものを買わずにあるもので代用すること、モノを最後まで使い切ることは、日常生活ではお財布にも優しい考え方です。節約と防災を兼ねて、楽しみながら“防災力”を鍛えてみてはいかがでしょうか。

 その方法はとても簡単で、いつも使っているものが他に何に使えそうかを考えてみるだけ。たとえばいつもスキンケアに使っている乳液なら? 乳液には油分が含まれるのでメイクを落とすこともできますし、お湯に溶かせば入浴剤にもなりますね。化粧品としてだけでなく、掃除に使うこともできますよ。私はワックス代わりにしてフローリングを磨いたり、革の靴やバッグの艶出しに使ったりすることもあります。

 新聞紙はどうでしょうか? 新聞は、実は災害時に欠かせない万能アイテムです。くしゃくしゃにして新聞の繊維を切って空気を入れ、体に巻き付ければ暖を取れますし、棒状に巻けば怪我をしたときの添え木代わりにも使えます。ボロボロになってしまったら細かく裂いてゴミ袋に入れれば災害用トイレを作ることもできますし、用途はアイデア次第です」

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くしゃくしゃにした新聞紙は首、両手首、両足首などの太い血管がある部分と、腰、背中に巻くのが熱を逃がさないポイント。かさばるブランケットやニットを避難先に持って行くのは大変なので、新聞紙で代用。
画像提供=『レスキューナースが教える プチプラ防災』(扶桑社)

「被災して避難所生活をすることになれば、さまざまなことが不自由になります。冷暖房もなく、食事も思うように摂れず、いきなり他人と隣り合わせで生活することになりプライバシーも守られないなど…。そのとき『あれもない、これもない』と『ないもの』探しをしてしまうとよけいに気が滅入ってしまうので、『あるもの』探しができるマインドを日ごろから持っておくことが、災害を乗り越える大きな力になるのです」

取材・文=箕浦 梢