急増中の「無料」ビジネスは業界全体を破壊してしまうのか?

ビジネス

公開日:2020/12/14

急増中の「無料」ビジネスは業界全体を破壊してしまうのか?

 消費者からすると「無料・安い」といった言葉は素晴らしいものですが、業界全体の視点に立つと必ずしも良いものではない模様。他社による「無料・安い」ビジネスの影響で、職を失うケースもあるようです。

「いらすとや」でイラストレーターが大ピンチ?

 以前Twitter上で話題になったのは、フリーイラスト提供サイト「いらすとや」に関するイラストレーターの嘆き。無料で使い勝手の良いイラストを無料で提供する「いらすとや」の人気に押され、仕事が激減しているイラストレーターや企業もいるそうです。

 確かに最近では、世の中のいたるところで「いらすとや」のイラストを見かける印象。YouTubeの動画、広告、看板、企業のプレゼン、首相官邸ホームページなどでも使われており、「いらすとやは日本を支配しようとしている?」といった冗談も飛び交っています。ここまで支持されている理由としてまずあげられるのは、やはり汎用性の高さ。「意識の高いラーメンのイラスト」といった使いどころが限定されるものまであり、無料で商用利用もできるとあって重宝されてきました。

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 そんな「いらすとや」の素材には、SNSなどでも「確かに高いお金を払ってイラストレーターに頼むんだったら、『いらすとや』の素材を使うよな」「絵柄に変な癖が無くてそこらのイラストレーターが書く絵よりも使いやすい」といった声が。一方で「このまま『いらすとや』が市場を独占すると、業界全体の衰退につながりそう」「消費者が手軽な『無料サービス』に流れるのは良いことなのだろうか……」などとも危惧されています。

「フリーミアム」が浸透しすぎ?

 そんな「いらすとや」の収益はどこからきているかというと、主になっているのは広告収益だと言われています。同サイトにはオンラインコンテンツから収益を得られる「GoogleAdsense」の広告が掲載されており、多くの人が訪れるほど収入が上がる仕組み。また無償で商業利用ができるのは20点までで、21点以上のイラストを商用で使う場合は有償となるそうです。

 無料サービスで集客してより高度なサービスでマネタイズするビジネスモデルは「フリーミアム」と言われており、最近ではすっかり浸透した戦略。例えば今のスマートフォン向けアプリは「基本無料」がほとんどで、プラスアルファの機能を使いたいユーザーが「課金」をしています。

 将来的に課金をする・しないにかかわらず、やはり消費者にとって「無料」は魅力的なもの。しかし「フリーミアム」があまりに普及した昨今では、「無料なのが当たり前になっちゃいそう」などとも指摘されていました。今後も増え続けることが予想される「無料」のサービスは、人々の消費活動をどのように変えていくのでしょうか。