街中でも、動物たちは生きている! 知ってるようで知らない、身近な生きものたちの愛すべき秘密とは?

マンガ

公開日:2020/12/1

わいるどらいふっ!2 身近な生きもの観察図鑑
『わいるどらいふっ!2 身近な生きもの観察図鑑』(一日一種/山と渓谷社)

 小生の住む横浜は大都会である。横浜駅東口にはウォーターフロントに新築の高層マンションやビル群が広がり、日産自動車や京浜急行といった大企業も本社を構える。しかし一方、駅西口から10分も歩けばもう普通の住宅地であり、雑木林が残る程にのどか。タヌキやヘビも生息するし、野鳥や虫たちも賑やかだ。大都会横浜に引っ越してから、こうも生きものたちに親しむとは思わなかった……。

『わいるどらいふっ!2 身近な生きもの観察図鑑』(一日一種/山と渓谷社)は、元野生動物調査員である一日一種氏がSNSで発表中の、身近な野生動物の生態をゆる~く描いた4コマ漫画を書籍化したもので、今回が第2弾である。愛らしくディフォルメされたタッチの動物たちが繰り広げる、その日常の光景は緩そうに見えても、所々に自然の厳しさが垣間見え、生きることの難しさと奥深さ、そして魅力を感じられると思う。

ヒキガエルの産卵は大冒険?

 冒頭は冬眠から目覚めたヒキガエルが、産卵のために池へと向かう短編が描かれている。道中には側溝や道路を走る車、さらには這い上がれないような段差がある高速道路が行く手を阻むのだが、近年は公共工事の際に、動物たちの安全を配慮した構造を導入することが増えている。たとえば側溝から這い上がりやすいように小さなスロープや階段が設けられていたり、道路の下を潜り抜けられるトンネルがあったりなどだ。もしかしたらそれらの設備は、読者の皆さんも近所で見られるかもしれない。

advertisement

タヌキとアライグマ、その顔の見分け方

 次に紹介したいのはタヌキとアライグマだ。読者の皆さんは、その顔の見分けがつくだろうか? 実物はどちらも目の下から頬にかけて黒い毛で覆われ、似たような雰囲気。動物好きを自任する小生も理解してなかった。実は、タヌキは耳のフチと手足が黒く、アライグマの耳のフチは白く、顔の真ん中に黒い線がある。勿論、尻尾を見れば多くの人はわかりやすいだろう。アライグマのシマシマ尻尾は、その愛らしさを代表する一面である。なお、タヌキの尻尾は短く先端が黒くなっているそうだ。

タヌキの受難、交通事故

 さらにタヌキの話題を。実は彼ら、交通事故に遭うことが野生動物の中で最も多いというのだ。その原因とされる代表格が、道路を横断中に車のライトで驚き固まってしまい、そのまま轢かれてしまうというもの。性質として臆病ですぐ気絶してしまうため、その様子が「タヌキ寝入り」と称される。演技かどうかわかっていないそうだ。なお、秋は子別れの季節で移動する個体が多くなり、事故に遭う件数が増えるとも。ドライバーの皆さんには、くれぐれもご注意を願いたい。

道端で干からびるミミズのミステリー

 読者の皆さんは、道端で干からびているミミズを見たことがあるだろうか。小生も、子供のころから度々見ており不思議に思っていた。土の中にいるはずのミミズがなぜ、アスファルトの上でミイラに……? 本書によると、大雨が降ると地中の二酸化炭素濃度が増え呼吸困難になり、アスファルトに這い出てくるとか。その後、晴れてもアスファルト上に迷い出ていると、土中に戻れず……ということのようだ。

 実のところ、図鑑とは称しているが、作者曰く「図鑑と呼ぶにはいろいろ端折りすぎています」とのこと。とはいえ、それは身近さを優先したため。そこから興味を深めて詳しく知りたいと思ったなら、専門書を手に取ればよいだろう。そこで改めて、端折られていても本書の正確性には驚かされるはず。

 街中でも意外と小動物は見かけるもの。のんきそうに見えても、その生存競争は大変である。読後は彼らの生活環境にほんの少しでも思いを馳せていただければ。

文=犬山しんのすけ