素敵で楽しい1日にめぐり合うための、信じる気持ち『34丁目の奇跡』/佐藤日向の#砂糖図書館⑥
公開日:2020/12/12
声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像や舞台でも活躍を繰り広げる佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本やマンガから受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
12月になると、街中が”クリスマス”に染まり始める。
クリスマスは、毎年みんなにとって特別な存在でいてくれる。
「今日はクリスマスだから美味しいものを食べよう」なんて思ったりするかもしれない。
私は誕生日が12月23日ということもあり、21年間ずっと大切な予定のひとつだ。
今回私が紹介する作品は、そんなクリスマスを、サンタクロースを愛おしく思える作品だ。
ヴァレンタイン・デイヴィス氏が書いた『34丁目の奇跡』。
これは、1947年にアメリカで公開された映画(タイトルは『三十四丁目の奇蹟』)とほぼ同時に誕生した物語である。今から73年前の映画だから、もちろん映像は白黒だ。
『34丁目の奇跡』は、クリス・クリングルという1人の老人が巻き起こす奇跡の物語。
クリングルスは自分のことをサンタクロースだと名乗っていて、周りの人達はおかしな人だが優しく愉快な人だと思っている。そんなある日、彼はとあるデパートからサンタクロース役でスカウトをされる。だが、サンタクロースを信じられない大人によってクリス・クリングルが本当にサンタクロースか否かを見極める裁判が始まる。果たして結末はいかに…
というあらすじだ。
作中では、一度もクリス・クリングルが本当のサンタクロースだと明言はされない。
だが、文章の中にサンタクロースかもしれない要素がふんだんに組み込まれている。
なかなか心を開かないトナカイがクリス・クリングルにだけは懐き、12月25日の朝には息を切らし、全身汗ぐっしょりで地面に座り込んでいたり。
そして読み終えたあとには、サンタクロースを信じないよりも信じた人生の方が、きっと何倍も楽しいのではないかと思わせてくれる。
私の持論を展開させてもらうと、サンタクロースは絶対にいると思う。
なぜなら作中でのクリス・クリングルは、ありえないほど出会いの運がよく、彼の言動が奇跡を起こしていたからだ。
それはきっと、彼自身が常に優しい気持ちと純粋な心を忘れずに持ち続けていたからだろう。
そして、クリスマスに行う自分の仕事への誇りも忘れていなかった。
どんな仕事をやるうえでも、キラキラしている人というのは優しさと純粋さを忘れずに持ち続けている人、そして過去の失敗や辛い経験を自信に繋げた人だと思う。
きっと、影響力と自信で満ち溢れ、自分の仕事に誇りを持った人じゃないと
世界中のみんなが楽しみにしているクリスマスを届けることは出来ないだろう。
サンタクロースに限らず、何かを信じることにはものすごく勇気が必要だ。
作中に登場する親子も、目に見えるものしか信じられない、かなりの現実主義者だった。
だが、クリングルに出会ったことで気持ちが変化していく。
そんな親子の母親が、ラストでこう言う。
「万事順調にいっているときに信じるのは簡単だ。けれど、なにがあろうとも信じてこそ、本当に<信じる>と言えるのだろう。」
本当にその通りだと思う。
“信じる気持ち”というのはとても繊細で何か小さな衝撃があるだけで消えてしまう。
だからこそ信じ続けてもらう行動を心がけるのはとても大切だ。
「いやぁ、サンタクロースはいるかもしれない」
という気持ちにさせてくれるクリングルは、やっぱりすごい。
もしかすると、電車の隣に座っている人がサンタクロースかもしれない。
そんな風に思うだけで、日常って楽しくなると思う。
もし大人になってから、サンタクロースをもう信じられなくなってしまった、そんな人がいたら、是非この本を手に取っていただきたい。
最後のページをめくる頃には、今年のクリスマスがさらに楽しみになるかもしれない。
さとう・ひなた
12月23日、新潟県生まれ。2010年12月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして、メジャーデビュー。2014年3月に卒業後、声優としての活動をスタート。TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(鹿角理亞役)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)のほか、映像、舞台でも活躍中。
公式Twitter:@satohina1223
公式Instagram:sato._.hinata
レギュラー配信番組『佐藤さん家の日向ちゃん』:https://ch.nicovideo.jp/createvoice