先輩の言葉/富田美憂の「私が私を見つけるまで」⑥
公開日:2020/12/13
人生初めての仕事のことは、今でも鮮明に覚えています。
『干物妹!うまるちゃん』のアフレコが、私の初めての仕事でした。
当時、養成所などに通ったこともなく、声優の勉強をしたことがなかったので、アフレコ現場でのお作法、たとえば別録りとは何なのか、マイクとの距離はどのくらいで立ったらいいのか、など、すべてがわかりませんでした。
ブースに入ってみなさんが「○○所属の○○です」とひとりひとりに挨拶しているのを見て、それを真似し、なんとなく隅っこに座りました。
それを見かねて声をかけてくださったのが、アフレコブースの真ん中に座っていた野島健児さんです。
緊張でガチガチの私に「初めての現場はモニターも役者の様子もよく見れた方がいいから、隣においで」と言ってくださったんです。
この一言に、どれだけ救われたことか……。
「別録りっていうのはね」とか「こういう風に印をつけると台本が見やすいよ」とか、全部を教えてくれました。ガヤを収録する時にあわあわしていたら、話しかけてくださって、自然に台詞を引き出してくださったり。
野島さんだけではありません、様々な現場で尊敬する先輩方に出会い、今の私がいます。
そして6年経った今、自分も「先輩方に教わったことを私が後輩にしてあげることが、お世話になった先輩方の恩返しになるんじゃないか」と思うようになりました。
デビューして間もない頃に「アニメマシテ」という番組のMCを、当時アイカツスターズ!でお世話になっていた津田美波さんと2人でやらせていただいたことがあったのですが、その時に津田さんが言ってくださった、
「美憂ちゃんにも後輩ができた時には、その子を助けてあげてね」
この言葉は、ずっと私の中で大切な言葉です。
私が「こんな素敵な先輩に出会えて良かった」と思ったように、私自身も「この人に出会えて良かった」と言ってもらえるようになりたい。
正直、私自身、役者としてもひとりの人間としてもまだまだだし、大人になりきれていないし、尊敬には値しないかもしれないけど、人に手を差し伸べることもまた、自分を成長させることにも繋がるんじゃないかなって思うようになりました。
何より、私の気遣いで現場の空気を良くできたら、お仕事も楽しいしね!
だから、いい先輩になれるように、まだまだ未熟だけど頑張りたい。
21歳のたくさんある抱負の中のひとつは、「人から尊敬してもらえる人になること」
こつこつ積み上げていきたいな。
(次回へ続く)