来るなよ…からのキタ―! 巨大蟹が巻き起こす、スリル満点の絶望パニックホラー

マンガ

公開日:2020/12/11

『ガニメデ~殺戮の島~』(高橋構造/日本文芸社)
『ガニメデ~殺戮の島~』(高橋構造/日本文芸社)

 今回はちょっと季節感を出してお送りする。ということで、本格的な冬に突入ですね。冬といえば、こたつとみかんでぬくぬく過ごしたり、お鍋料理が美味しい季節だったりといろいろと風物詩となるものがあるが、その中でも冬における旬の食材といえば…そう、かに料理! かに漁が解禁されて、タラバ、ズワイ、毛ガニと、泣く子どころか、かに好きな人も黙るほどに美味いかにが一堂に会する“かに天国”シーズンの到来である。

 “浪花のモーツァルト”が作曲した「獲ーれ獲ーれぴーちぴち」なCMソングでおなじみのあのレストランをはじめ、ご家庭などでも人々がかにを賞味する最盛期。そんな中でマンガ界では、それとは真逆の“かに地獄”へと導かれた日本のとある孤島が舞台の、絶望残酷な物語が水揚げされたのだ。巨大蟹が島民を食し恐怖に侵食されていく海洋パニックホラー、高橋構造先生の『ガニメデ~殺戮の島~』(日本文芸社)である。人と“かに”の立場が逆になり狩られてしまうその一部をご紹介しよう。

その島民の悲劇は、突然やってくる――。

 島民の反対の声がありつつも、リゾート開発が進行中の漁師の島・厳天島。この島で非常に奇妙で残酷な殺人事件が起きていた。後日、本土から数人の刑事や警察官が島へ上陸。殺害現場へ向かうと、見るに堪えない3人の変死体がそこにはあった。次第に島の天候が荒れていく中、殺人課の刑事・芝が単独で現場検証を始め、死体の状態と、床に付着しているなにかネバっこい液体を確認。さらに調べを進めていくが…。

 一方、荒天のため駐在所で一時避難している他の警官と島民たち。そこには、変死の疑いのある死体の状況を捜査する「検視官」も同行していた。小柄な若い女性で、名前は鈴浦圭。島民からは頼りないのでは…?と不安な目で見られるも、積極的な言動により一瞬で払拭。むしろ警官たちの先頭を切って行動する頼もしさを発揮し、芝刑事のいた現場へ向かうことに。しかし現場に到着すると、何ということでしょう。変死体が3体すべて消えていたのだ。さらに検証を続ける中、とてもショッキングな事態に遭遇する。それは、民家を破壊し大暴れする巨大蟹の姿だった! 以降、立て続けに島じゅうを襲う、パニックと惨状の連続。この状況を見て、とある人物…厳天島の長老が鈴浦たちに語ったのは、これは島に古くから言い伝えられる伝説の巨大蟹「ガニメデ」の怒りに触れたせいだ、ということだった。

 長年の沈黙から目覚め、島民たちを次々と襲うガニメデの恐怖。果たして巨大蟹の暴走を食い止める手段はあるのだろうか。死と絶望の蟹バサミ状態で繰り広げられる、島と島民の無謀な戦いの火蓋がチョッキーンと切られる。

 もう見事なまでのB級パニックホラー作品として描かれている。とはいえ、島民がやられていく様は、容赦ないくらいの残酷っぷり! まさに我々が専用のハサミでかにの脚や身をチョッキンチョッキン断っては食う感じの展開が続々&ゾクゾクだ。巨大蟹・ガニメデ、超つぇーっす。今回は少し長めにあらすじを書かせてもらったが、私の限りある言葉では表現しづらいパニックホラーならではの王道展開やスリルたっぷりな攻防を楽しんでいただきたい。個人的にはホラーやグチャなシーンは好みではないが、ここまで思い切った設定や、「来るなよ」からの「100%来る」なお約束展開は、十分にエンターテインメントとして楽しめる。怖いもの見たさで読んでみたい方には、きっと損させません。つか、この作品の担当編集さんにお尋ねしたい。絶対に冬のかにシーズンに合わせて発売してますよね? こういう仕込み、好きです。

 最後に、今回は今までとは全く違う色の作品を紹介したわけだが、実は今回からこのコーナーの担当さんが替わり、その一発目にこれをご提示されたのだ。思わず「クセ!」と某芸人のようにツッコんでしまった。今後も色の違うタイトルが出てくるかもしれませんが、どうか私に限界が来るそのときまでお付き合いください。そして初代となった担当さま、ありがとうございました。


文・手書きPOP=はりまりょう