「PMDDは深刻な病気」…月経前のつらすぎるその症状、もしかしてPMDD(月経前不快気分障害)かも?
公開日:2020/12/13
「PMDD」(Premenstrual Dysphoric Disorder:月経前不快気分障害)という名前を聞いたことがあるだろうか。PMDDとは、月経前の数日間、死にたくなるほどの重いうつ状態に陥ったり、暴力的になってトラブルを起こしたり、普段では考えられないような暴言をはいたり…月経前に別人のようになって自分がコントロールできなくなってしまう女性特有の病気のこと。アメリカの精神医学界では精神科での治療の対象とされている重篤な症状だが、残念ながらまだ日本ではあまり認知されておらず、ひそかに苦しんでいる人も多い病気だという。PMS/PMDD専門カウンセラーである森井恵子さんの著書『いつもやってくる殺したくなる自分にサヨナラ 毎月のつらすぎるその症状 あなたはPMDDかもしれない!?』(ヴォイス)は、そんなPMDDについてわかりやすく教え、さらに解決法をアドバイスしてくれる貴重な一冊だ。
月経前の不調というと、「PMS」(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)を思い出す人も多いだろう。どちらも女性ホルモンの影響による月経前の女性に起こる特有の症状であり、月経が来るとたちまち治ってしまう点は共通なのだが、PMSはあくまでも「症候群」であってPMDDのような病気ではない。またどちらかというと身体的不調(頭痛、腰痛、腹痛など)を訴える人が多いPMSに対し、PMDDではより重度な精神的障害が問題となってくる。森井さんによれば「PMDDは深刻な病気であり、PMSは風邪に伴う諸症状(咳や鼻水、頭痛、寒気など)のような、月経に伴う諸症状と捉えるとわかりやすいかもしれない」とのこと。
とはいえPMSでもメンタルな不調は起きるし、たとえば「生理の前は落ち込みやすい」という人はPMSかPMDDなのか判断に悩むところだ。そんなときは本書の「PMDDかどうかを知るためのチェックリスト」を参考にするといい。チェックした症状の傾向で「要観察レベル:PMS」「要注意レベル:PMSとPMDDの境界線」「要治療レベル:PMDD」を判断してくれるので、まずは自分の「現在地」を確認することができるだろう。もし、いきなりPMDDと診断されたら不安になってしまいそう…そんな方もご安心あれ。森井さんによればPMDDはどんなレベルであっても多くの場合、軽減、もしくは解消ができるとのことだ。
実はかつて森井さん自身も重度のPMDDに苦しみ続け(普段ならありえない暴言を親にはいたり、最悪のときは泣きながら包丁を振り回して警察に保護されたりした経験まであるそうだ)、紆余曲折ののちにそれを克服したという。もし「要観察レベル」や「要注意レベル」のPDMM未満なら、本書にある対策やワークなどで自分の心と体にきちんと向き合って心身のバランスを整えていけば症状を確実に軽減させることができるというし、「要治療レベル」でも、専門家の治療の前に同様の対策をすることでプラスの変化が生まれてくるというから心強い。
もしも生理前の自分のメンタルに不安を感じているならば、恐れずにまずはPMDDを知ることからはじめてみるといい。「私が実際にPMDDを経験した中で見出してきたことは、きっとPMSやPMDDに悩む人たちにもお役に立てるはず」と森井さんはこの本の執筆動機を語るが、ひとりで悩んでいるより本書を手にとるほうが「解決への近道」になるかもしれない。
文=荒井理恵