『愛の不時着』『梨泰院クラス』…韓国ドラマを見直すときはこのキャラに注目! ヒットドラマを彩る名脇役たち
更新日:2021/5/4
せっかくの休みだが、コロナウイルスの影響でなかなか遠出は難しそうだ。それはもうしょうがないので、そんなときこそドラマ三昧。気になっていた未見のあの作品、そして一度はどっぷり浸かったあの傑作をもう一度。いずれにしても一気に観るには時間がかかるドラマシリーズをがっつり観るチャンスです。
初めて触れる作品はもちろんストーリーをしっかり追いかけるのがいちばん大事、というか基本だが、あえて主人公ではなく脇役たちに注目してみるのも一興。韓国ドラマには、ときには主人公以上に強烈な印象を残す名脇役が目白押しなのだ。
たとえばいまだNetflixではランキング上位に居続ける『梨泰院クラス』。群像劇という側面をもっているだけあってキャラクターの宝庫だが、そのなかでも多くの人の共感を呼んだキャラクターといえば、セロイの店「タンバム」でコックを務めるヒョニだ。トランスジェンダーというデリケートなテーマを一身に背負いながら気丈に振る舞ってきた彼(彼女)が見せた涙に、もらい泣きした視聴者もたくさんいたはず。難しい役柄に向き合ったイ・ジュヨンの名演もあって、同作屈指の名キャラクターになった。イ・ジュヨンは主演映画『野球少女』の日本公開も来年3月に控えている。そういう意味でもいま一度注目しておきたい。
『梨泰院』ではもうひとり、地味ではあるが超重要なキャラクターがいる。セロイの父の轢き逃げ事故の担当刑事だったビョンホンである。真犯人を見逃した自分を責め続け警察をやめた彼の存在は、ドラマ終盤に向けての鍵となるという役回りとしての重要性はもちろんだが、同作のなかでは数少ない「セロイ側の大人」であるという点で、ドラマに安定感と安心感をもたらしているキャラクターだ。娘のヘウォンのかわいさと賢さもいい。まさかミンジョン専務とイイ仲になるとは思ってもみなかったが……。
『愛の不時着』もいいキャラのオンパレードだ。リ・ジョンヒョクの部下である第5中隊の面々(とくにジュモク)やソ・ダンの家族(デパート社長の母親とへっぽこ軍人のおじ)も捨てがたいが、いい味出しているのはやっぱり社宅村の奥さんたちだろう。おいしいものと噂話が大好き、権威とイケメンには弱くダンナには強い、愛すべきご婦人たち。とくに人民班長のウォルスクのキャラクターは最高だった。北朝鮮の貧しくてちょっと暗い風景のなかで、彼女のコメディエンヌぶりがドラマを盛り上げる一助となったのは間違いないし、しかもじつはけっこういい人だというのがよかった。あと注目すべきはユン・セリの会社で彼女の右腕である広報チーム長だ(名前はチャンシクという)。セリにこき使われながらも根底では彼女を慕い、セリが行方不明になったあとは友人の保険会社調査員(こいつもいい味出している)と彼女の捜索を続ける。『スタートアップ:夢の扉』のパク・ドンチョン主任(のちに課長に昇進)とともに、クセの強い上司に振り回される哀れな中間管理職キャラ。身につまされる。
難しい家庭事情やトラウマをもっている主人公を支える「とにかくいいヤツ」の存在もドラマには不可欠。『サイコだけど大丈夫』の主人公ムン・ガンテの無二の親友(形容ではなくて、文字通りガンテには彼以外友達がいない)ジェスがそれだ。ガンテが引っ越す先についてきては、常に彼に寄り添う、彼のいちばんの理解者。自閉症であるガンテの兄サンテとも真正面から心を通わせる、正真正銘のいいヤツだ。
そんなジェスと似たような役回りのキャラクターなのが、『青春の記録』で主人公サ・ヘジュンの親友であるジヌだ。ヘジュンと彼のライバルでもあるへヒョとともに小さい頃からの仲間としてともに過ごしてきた彼は、フォトグラファーを目指す青年。3人のなかではいちばん幼い感じを醸し出しながらも、じつは親友ふたりにも内緒でへヒョの妹と付き合ったりしている、やることはやってる男である。自分の夢を追いかけながらも、親友たちの背中を全力で押す。男たるものこうありたいと、彼を見るたびに思う。意外と男気もあるし。
そんないいヤツらとは正反対ではあるものの、韓国ドラマを観る上で欠かせないのは、こちらも個性的で強烈な「悪役」のみなさん。『梨泰院クラス』のチャン・デヒの化け物っぷり、『青春の記録』のテスや『スタートアップ:夢の扉』のサンスの小悪党っぷり、『サイコだけど大丈夫』のヘンジャのサイコで大丈夫じゃない感じ。主人公を脅かす存在でありながら、どこか憎めない感じがあるのも人間的でいい。善人にしろ悪役にしろ、噛めば噛むほど味が出てくる登場人物の面々。そういった奥行きの深さもまた、韓国ドラマの魅力なのだ。
文=小川智宏