子どものADHDを疑ったらママもADHDだった…特性をポジティブに生かす方法があります!
公開日:2020/12/23
ぱたぱた動き回っていて落ち着きがない、いつも人をせき立てたり、子のそばにいるだけでイライラしてしまう、なにかというと探し物をしている、忘れ物が多かったり、うっかりモノをなくしたり、部屋の片付けができない…こうしたことに身に覚えのあるママはいないだろうか。
精神科医の司馬理英子先生の著書『ママのピンチを救う本 わが家はみんなADHD!?』(主婦の友社)によれば、もしかするとそんなママはADHD(注意欠如・多動症)の可能性があるのかも。ADHDというと子どもの発達障害と思いがちだが、実は大人にもある。先生によれば、たまたま環境的にADHDを意識しないまま成人したものの、子どもが生まれてやるべきことがぐんと増えてから「いろいろ困るようになった」と自覚するケースも多いのだとか。実際に診察の現場では、家族のなかで子ども1人がADHDというのではなく、「子どものことで相談に来た、お母さん自身にもADHDの傾向が見受けられることがあり、お父さんと子どもが実は似たところがあるといったことも見られます」というのだ。
もしお子さんだけでなくママ自身(もしくはパパ)にADHD傾向がある、つまり「家族がADHD」の場合は一体どうしたらいいのだろう。「ADHDのある人同士はわかり合える面もある一方、トラブルになることも往々にしてある」とのことで、確かに冒頭に紹介したような状況が家族で重なってしまったらかなり大変そう…。もしも「ああ、それってウチのことかも…」とちょっと複雑な気持ちになったママがいたならば、そんな方にこそ本書をおススメしたい。「お母さんにADHDの傾向があるときには、それを知っておくだけでもADHDを持つ子の子育てでプラスになります」と、専門家の立場からADHDのママならではの子育て術・家事術の実用的なヒントを教えてくれるのだ。
たとえばADHD傾向のあるママの子育てには、こんなにプラスの面があるのを知っていただろうか。
●自分の経験を生かせるので、子どもの気持ちに共感できる
●子どもの気持ちを想像しやすい
●子どもが困ることを予測しやすい
●子育てのなかで、あなたが成長するチャンスもある
●柔軟な発想を生かして、楽しい子育ても可能
つい毎日の大変さでネガティブになってしまったり、自分に苦労した経験があるからこそ子どもが苦労しないように親心で厳しく接したりしてしまうママもいるかもしれないが、実はこんなにADHDの子育てにはプラスがあるのだ。「ADHDの特徴をお母さん自身が持っていることを、けっしていけないことだと決めてしまわなくていいのです。いまより少しペースを落として、子育てを楽しむという感覚をとり入れながら、生活を賢く手抜きしながら過ごしていけばいいのです」と先生。こうしたプラスを知っておくだけでも自信になるだろうし、むしろ家事・育児はその特性を生かしてやればいいのだ。
なお本書にはそんなADHD傾向のママのために「ママのピンチ脱出法」として生活シーンにあわせた実用的なテクニックが紹介されている。家事の段取りをアドバイスする「生活段取り編」、苦手な人も多い「片付け実践編」、家族のADHDへの向き合い方を考える「家族の人間関係編」など、どの章にもかなり具体的な解決ヒントが提示されているのでぜひ参考にしてほしい。
ただし、本書のアドバイスを一度に全部やろうとがんばりすぎないように注意しよう。「『まあ、いいか』と楽天的に思うことも、ADHDの子どもを育てるうえでとても大事です」と先生。たとえばこの本を読むことだって、大いなる「はじめの一歩」と捉えてポジティブに。できることからひとつずつ、楽しみながらトライしていくのがよさそうだ。
文=荒井理恵