月や火星に住む日も近い!? 宇宙と生命の“すごい”最前線を知るための1冊

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公開日:2021/1/10

宇宙と生命 最前線の「すごい! 」話
『宇宙と生命 最前線の「すごい! 」話』(荒舩良孝/青春出版社)

 12月6日に、「はやぶさ2」の放出したカプセルがオーストラリアに着地し、無事に回収された。世界で初めて小惑星の物質を持ち帰ることに成功した「はやぶさ」が話題になったのは、もう10年以上も前のこと。当時のJAXA(宇宙航空研究開発機構)の関係者がTwitterで、ロボットアニメのエンディング曲『宇宙の星よ永遠に』を聴きながら仮眠することをつぶやいていたのを、今でも憶えている。



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 そして、名前を継いだ「はやぶさ2」が採取した小惑星の物質によって「生命の起源」と「太陽系の起源」が分かるのではないかと期待されており、その物質の分析はこれからだが、続報が報道されても意味を理解できなければ聞き流してしまうかもしれない。そこで予習と復習を兼ねて、『宇宙と生命 最前線の「すごい! 」話』(荒舩良孝/青春出版社)を手にしてみた。

生命の3大要素とは?

 そもそも「生命とは何か」と問えば、顕微鏡などを使って目に見えない微生物を観察する手段の無かった昔は、生命を定義づけることさえ遠く及ばなかった。では、科学技術が発達して微生物の観察が可能になりその課題を解くのが可能になったかといえば、そう単純にはいかない。細菌は生物だとしても、人類を悩ませている新型コロナウイルスのようなウイルスという「生命、非生命のどちらともいえないようなもの」まで発見されたため、ますます生命の定義づけは困難になってしまったのだ。それでも現在のところ、生命の定義は次の3つを満たすものと仮定されるに至った。

1. 膜で外界と区切られている
2. 物質の合成や分解などの代謝をしている
3. 複製・増殖をする

生命存在の3条件がそろう「ある天体」

 地球温暖化を食い止めようと、レジ袋を法的に規制したりガソリン車の製造を中止する目標を掲げたりと様々な取り組みを日本をはじめ、世界各国が行なっている。しかし地球の歴史をひもとけば、太古の地球に生息していた生物は嫌気性であり、光合成によって酸素をつくり出す「シアノバクテリア」が誕生すると、酸素に対応できない生物は死滅していった。それはいわば、「地球で初めて発生した環境汚染なのかもしれません」と本書では指摘している。そして太陽系の中で地球以外に生命の存在が期待されているのは、土星の衛星「エンケラドス」だという。太陽からの熱や光は少ないものの、土星探査機「カッシーニ」の観測記録から、表面温度マイナス200℃の氷で覆われたその下には、熱水が噴出していると予想され、太古の地球に生息していたような生物の存在が期待できるそうだ。

天文学者が宇宙に「生命はいる」と断言する理由

 生命と云っても知的生命体、いわゆる一般的に思い描かれるような宇宙人ではないのか……とガッカリする読者もいるだろう。確かに、地球で観測され予測されている物理現象は宇宙でも変わらないため、長距離を跳躍するワープ技術など夢のまた夢。だからといって、知的生命体が存在しないという理由にはならない。

 例えば本書で紹介されている「ペガスス座51番星b」は、地球の約149倍もの質量を持ちながら、地球と太陽の距離の20分の1という近距離で、主星である恒星の周りを公転している。太陽系の惑星の常識からは大きく外れている惑星であるが、現に存在していることを認めない訳にはいかない。惑星の存在でもそうなのだから、広い宇宙の中、もし生きている生命があったとして、地球の生命と同じとは限らないのだ。

宇宙への移住計画は民間企業から始まる!?

 かつてソビエト連邦があった頃、対抗するアメリカとの間では熾烈な「宇宙開発競争」が繰り広げられた。アメリカが先んじて月面着陸を成功させたものの、両国では多くの宇宙飛行士の命が失われた。ソ連が崩壊してから今もってなお国家間の争いは絶えないが、宇宙は「開発協力」へとシフトしていった。もちろん、それでも国家としての思惑はあるだろう。

 しかし、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、日本、カナダなどが開発した機材を宇宙で組み立てて完成した「国際宇宙ステーション(ISS)」に、アメリカ企業のスペースXが民間企業として初めて無人補給船「ドラゴン」のドッキングに成功した2012年10月を皮切りに、ビジネスとしての宇宙開発が期待されるようになった。その先には、「月ステーション計画」や「火星移住計画」といった絵空事ではない未来があり、もしかすると我々より先んじて宇宙に出ている知的生命体との邂逅もあるかもしれない。

 本書には、「はやぶさ2」のプロジェクトのリーダーである渡邊誠一郎教授と、分析チームのリーダー薮田ひかる教授のインタビューも収録されている。宇宙人と出逢ったときに話題についていけるよう、本書で勉強しておくと良いだろう。

文=清水銀嶺