肩書や実績を話すのはナンセンス! コロナ時代の「新しい自己紹介」で何を語る?
公開日:2021/1/5
最近、新しい人と親しくなる機会がめっきり減った。会社で部署の顔合わせがあっても、自己紹介はZoomで、持ち時間はひとり1分。結局大したことは話せず、直接仕事をする人以外とのつながりは生まれにくい。プライベートでも、交流会などのイベントに参加することは少なくなり、ご飯も親しい友人と2~3人で食べるだけだ。
人と会う機会が減り、出会いがオンライン化した今、どのように人脈を広げていけばいいのか。本書『新しい自己紹介 コロナ時代の人脈構築術』(高嶋大介/ICE)は、そんなコロナ時代に使える自己紹介術を語る。著者は「100人カイギ」というコミュニティ活動を主催する高嶋大介氏。「100人カイギ」とは、毎回その街に在住・在勤する5名のゲストに話を聞くイベント。本書には、「100人カイギ」で約500名の自己紹介を聞いてきた著者の気づきが詰まっている。
「相手のメリット」をアピールする自己紹介はむずかしくなった
類書によく書かれているのが、自己紹介に「相手のメリット」を含ませるという手法だ。本書によれば、これまでは有効だったが、近年は効力を失いつつある。大きな理由は、SNSとコロナによって、“1対1”の自己紹介の機会が減ったからだという。
SNSのプロフィールは、誰かひとりに向けて書くものではない。ネット上で見ている誰かが、内容に興味をもって投稿を読んだり、フォローしてくれたりする。また、コロナ時代では、交流会もオンラインが主流。Zoomの「ブレイクアウトルーム」機能で3~4名の部屋を作り、順々に自己紹介というパターンが多い。こうした環境下では、「相手のメリット」をぴったり提示するのはむずかしい。著者は、自己紹介が“1対n”であることを意識すべきだと語る。
肩書や実績よりも「個人の悩み」を話すのが有効
では、具体的にどうすればいいのだろうか。著者が「100人カイギ」500名の自己紹介で気づいたのは、「肩書きや実績ばかり話す人に限って、あまり話が面白くない」ということ。たしかに、自分が誰かの自己紹介を聞くシーンを振り返ると、肩書や実績といった“外見”の話はどうにも頭に入ってこない。著者は、代わりに以下の3つを話すといいという。
1.課題=どんなことに悩んだり困ったりしているのか?
2.人柄=どういう人間なのか?
3.どんな未来を作っていきたいのか?
ここでは「1.課題」について触れよう。課題は、「悩み」や「困りごと」といった言葉に置き換えてもいい。本書によれば、人は誰しも自分以外の他人に貢献したい欲求がある。だが、村や集落といったコミュニティが希薄になり、科学技術が発達して誰もが便利になった今、誰かの役に立つという実感が得にくい。「個人の課題」は、こうした欲求をとらえるという。聞き手に「自分なら○○で助けられるかも」と思わせ、積極的なつながりのきっかけを生むのだ。
本書は他にも「名刺と自己紹介は全くの別物」「人柄は物語にして伝える」などのノウハウに加え、それらを組み合わせた「100人カイギ流メソッド」を紹介する。フローにそって考えていけば、誰もが人を惹きつける自己紹介が作れる。脱・肩書、脱・実績の自己紹介で、数少ないチャンスをものにしよう。
文=中川凌(@ryo_nakagawa_7)