1/8放送開始! みんなで語るTVアニメ『バック・アロウ』特集①――アロウ役・梶裕貴インタビュー
更新日:2021/1/14
信念が世界を変える! 壁に囲まれた世界リンガリンドに、謎の男バック・アロウが落ちてきた。壁の外から来たというその男をめぐり、リンガリンドの人々が動きはじめる――。『コードギアス 反逆のルルーシュ』を手掛けた谷口悟朗監督、『プロメア』や『キルラキル』の脚本を手掛け劇団☆新感線の座付き作家としても知られる脚本家・中島かずき、『サクラ大戦』シリーズや『ONE PIECE』の楽曲を手掛ける田中公平が組む、オリジナルTVアニメ作品『バック・アロウ』が、いよいよオンエアを開始する。
信念が具現化する巨大メカ・ブライハイトを駆使して、壁の外へ帰ろうとするバック・アロウ。その彼をめぐってリンガリンドの国々は、さまざまな策謀をめぐらしていく。ものすごいテンポ感とともに、壮大な世界が紡がれていく「物語とアニメの快楽」に満ちた、この作品が描こうとしているものは――? オリジナルアニメ作品ならではの「先が読めない面白さ」を伝えるべく、『バック・アロウ』のスタッフ&メインキャストのインタビューを、毎週更新でお届けしていきたい。
第1回は、主人公バック・アロウ役を務める梶裕貴が登場。記憶を失い、この世界にやってきた彼をどのように演じたのか。このオリジナリティあふれる世界をどのようにとらえているのか。たっぷりと語ってもらった。
(監督から)「あなたの声と芝居で『アロウが主役なんだ』とわからせてほしい」と言われて、「やってやるぜ!」と思った
――いよいよオンエアがスタートするオリジナルアニメ『バック・アロウ』。この作品の概要を知ったとき、梶さんはどんなお気持ちになりましたか?
梶:原作がある作品がアニメ化するときのワクワク感と、アニメオリジナル作品のワクワク感では種類が違うと思うのですが、今回は後者。何が起こるのか想像もつかない、新鮮な高揚感を感じていました。監督が谷口悟朗さん、シリーズ構成・脚本が中島かずきさん、音楽は田中公平さん……もう、ものすごい布陣だなと(笑)。僕は、かずきさんとは劇場版作品(『ニンジャバットマン』)でご一緒させていただいたことがあるのですが、レギュラー作品としては初めて。谷口監督にいたっては、まったくのはじめまして。これまでに、個人的にいろいろな作品を拝見させていただいてきてはいますが……仕事として、役者として関わらせていただくのは初。どこか新しい舞台に飛び込んでいくときのワクワクさと、作品自体への期待感との両方を強く感じていましたね。オーディションのお話をいただいたときも「これは是非やりたい!」と思った作品でした。実は僕、最初、アロウとは別の役でオーディションを受けていまして、後日に「アロウ役も受けていただけますか?」というオファーをいただいたんです。なので、まさか自分がアロウを演じることになるとは、まったく想像していませんでしたが……結果、このような形に落ち着いて、とても嬉しく思っています。スタッフ・キャストともに、想像以上の個性の強さ、良い意味でのクセの強さがすごくて(笑)。でも、それが作品にも現場にも、すごくよい形で表れていた印象です。
――中島作品の魅力はどんなところにあるとお感じになっていますか。
梶:本作は、どのエピソードのどの展開、どの台詞を振り返っても、いわゆる“かずき節”“かずきワールド”が広がっているなと感じました。中でもバック・アロウというキャラクターには、かずきさん特有の言い回し、傾く(かぶく)ような表現が随所にちりばめられていて。僕がかずきさんの創る世界が大好きなので、そんな個性的な台詞を言わせてもらえたこと自体の喜びと、その表現が自分の中からすんなりと出てきた嬉しさの両方がありましたね。
――念願叶ったというわけですね。田中公平さんの音楽については、どんな印象がありますか。
梶:田中先生とは以前、別作品(『サクラ大戦・奏組』)でご一緒したことがあるんです。とはいえ、それ以来でしたので、再びご一緒できて嬉しかったです。田中先生の音楽は、一度聴いたら忘れられない。メロディを聴けば、「あの作品だ!」とすぐに連想できるものばかりだと思うんです。そんな楽曲が『バック・アロウ』にも生まれたんだなと思うと、すごく幸せに感じますね。
――谷口監督とは初めてということですが、印象はいかがでしたか。
梶:谷口監督は、アニメ業界を長くけん引されてきた、誰もが知る名監督。いつか、何かの機会でご一緒できたらなと思っていたので、今回『バック・アロウ』で実現ができて良かったです。谷口さんは「こういう作品が作りたいんだ」というビジョンを完璧にお持ちの方。それを言葉としても明確に伝えてくださるし、こちらが質問をしたときにも瞬時に、明確な回答をくださるので、実に頼もしいリーダーだなと感じていました。こちらから「こんな風にやってみたいのですが、どうでしょうか?」とご提案すると、作品にとってプラスになることであれば、まずはトライさせてくださる。そして、それを面白がってくださる。そうでないときは「こうしてほしい」とはっきりと伝えてくださるので、こちらも「極力、監督のイメージに近づけられるようにしたい!」と工夫したくなる。「監督らしい監督」とご一緒できて、とても楽しかったです。
――谷口監督は、オリジナル作品の本編収録前に主要なキャストのみなさんを集めて、キャラクターや作品の方向性のレクチャー(説明会)をするそうですね。今回も行われたのでしょうか?
梶:そうですね。今回も行われました。以前、プレスコ(セリフや演技を先行して収録し、それに映像を合わせてアニメーションを作る手法)作品を収録する際に、顔合わせと読み合わせを兼ねて、作品世界やキャラクターについてディスカッションするような場に参加したことはあったんです。でも、通常のTVアニメでこういった機会が用意されるのは珍しいことかもしれません。僕にとっても、なかなか新鮮な経験ではありました。ただ、この説明会で、『バック・アロウ』の今後のストーリー展開を教えていただける、というわけではありませんでした。
――谷口監督作品は、キャストさんにストーリーの展開を事前にお伝えせず、キャストさんは各話の収録ごとにストーリーの展開を知っていく、という現場だそうですね。
梶:はい。ただアロウに関して言えば、主人公でありつつも、彼自身も記憶を失っているわけで……と知らなくていいものは知らなくていいのかなと。でもその分、「何を軸において演じていけばいいのか?」という難しさも最初は感じていましたね。
――梶さんは何を軸に、アロウという役作りをしていったのですか?
梶:この作品では「信念」という言葉がひとつのキーワードになっているんです。その中でも、アロウは「信念がないことが信念」みたいな男なんですよ。ちょっと哲学的で、不思議なことを言っているように聞こえるかもしれませんが……でも、言いたいことは彼の中にしっかりあるし、やると決めたことには全力を注ぐ。明朗快活で、さっぱりとした男なんです。「そんな風に言ってくれるなら、この男を信じてみよう!」と、そう思わせられる人物。そんな“器の大きさ”が伝わるような芝居を目指して、自分の中でアロウ像を作っていきましたね。
――「信じてみたくなる男」を目指していらしたんですね。谷口監督は「梶さんの『陽性』な声がこの作品を引っ張ってくれている」とおっしゃっていました。
梶:そうなんですね……! 光栄です。収録中、監督と役者としてコミュニケーションをとる機会はありましたが、「なぜ僕をキャスティングしてくださったのか」とか、「僕が表現したものをどう受け止めていらしたのか」なんて、そんなことを伺う機会はなかったんですよね。仲のいい現場だったので、アフレコ後は毎週のように飲みに行っていましたし、感染症対策で収録チームが分散された後も、リモート飲み会が開催されていたりはしたのですが……そういうときにも、当たり前ですが、一対一でしゃべるわけではないので(笑)。本当は、もっともっと谷口監督と色々なことを話してみたいなと思っていました。
――最初のレクチャーのときに、谷口監督がおっしゃったことで、印象に残っていることはありますか?
梶:谷口監督からは「前半、アロウのためにはわかりやすいドラマを作っているわけではないから、あなたの声と芝居で『アロウが主役なんだ』とわからせてほしい」みたいなことを言われたんですよね。
――むちゃくちゃプレッシャーですね。ハードルが高い……。
梶:ですね(笑)。でもどちらかというと「やってやるぜ!」と思いましたね。
――すごい!
梶:……まあ、先のストーリー展開を知らなかったので、何をやればいいのかはわからなかったんですけどね(笑)。でも、今までも、そういった覚悟と責任感を持って作品に臨んできたつもりなんです。できるかどうかはさておき「やってやるぜ!」という気持ちでしかないというか。
どこから何が出てくるかわからない、良い意味で「闇鍋」的作品
――今回、自分の「信念」が具現化する巨大メカ・ブライハイトが登場します。梶さんはブライハイトにどんな印象をおもちですか。
梶:ブライハイト同士がぶつかるということは、“心と心がぶつかる”ということでもあるので、ロボットアニメ的な面白さももちろんありつつ、結局は人間同士のドラマなんだろうなと。
――第1話はバック・アロウの登場とブライハイトに機装顕現する姿が描かれます。かなりテンポの早い作品になりそうですが、梶さんはどんな印象をお持ちになっていますか。
梶:物語のテンション的にもブライハイトのデザイン的にも、良い意味でどこか懐かしさを感じるんですよね。自分が子どものころに観ていたような作品を思い出す、というか。なので、そんな幼いころに観ていた作品の主人公像を踏襲することができたらいいな、なんて思っていました。
――壁に囲まれた世界リンガリンドには、いくつかの国があって、それぞれ特徴的なキャラクターが登場します。収録をしていて、気になったキャラクターや印象に残ったキャストさんはいらっしゃいましたか?
梶:難しい質問ですね……。キャラクターもキャストも、みなさん本当に濃くて(笑)。アフレコ現場は相当な熱量でしたね。そうだな……まずは、レッカ凱帝国の天命宮大長官のシュウ・ビ。杉田(智和)さんの魅力がすごく詰まっているキャラクターになっていると思います。自分がこの役を演じることがあればこうやって読むかな? と想像していたものを、毎回覆される感じ。それがすごく面白くて。杉田さんが僕のイメージとはまったく違う角度から、独特な言い回しで表現されるシュウ・ビが、ものすごく素敵なんです。じゃあ、そんなシュウ・ビにアロウはどう返すだろうと。杉田さんが驚くような返し方ができないかなと僕も考えましたね。そういうテクニカルな楽しさが本作のアフレコにはありました。あとは“武のレッカ凱帝国”、“知のリュート卿和国”という感じなのですが、レッカ凱帝国の人たちの熱量……喉がはちきれんばかりの叫びと声量、エネルギーに関しては、声優界で指折りの役者さんが集まっています。それだけでも見応え十分ですよ! 対してリュート卿和国には、一筋縄ではいかないミステリアスさ・いやらしさを孕んだキャラクターがたくさんいます。緻密で繊細な表現をするうえで腕利きの役者の皆さんが勢揃いしている印象ですね。なので、この現場を総合すると……良い意味で「闇鍋」に近いですかね(笑)。どこから何が出てくるかわからない、その面白さとスリルが凝縮されているなと感じています。
――その「闇鍋」ぶりが、どんなかたちで描かれるかが楽しみですね。
梶:主人公のアロウだけでなく、それぞれのキャラクターにしっかりスポットが当たって、丁寧にドラマが描かれている群像劇なので、自分の好みのキャラクターを見つけながら楽しんでいただけるのではないかなと思います。
――2クールにわたって放送される『バック・アロウ』ですが、これからどんなところを楽しみにしてほしいと思っていますか。
梶:難しいことは考えず、まっさらな気持ちでご覧ください! すごく気持ちの良い作品だと思います。話数が進むうちに、どんどんドラマにのめり込んで、気づけば夢中になっているんじゃないかなと。様々なこだわりや工夫が詰まっている作品ですが、そういったテクニックだけではない熱量を、フィルムから必ず感じていただけると思います。お楽しみに!
――こちらの連載の第2回のインタビューは、アタリー・アリエル役の洲崎綾さんになります。洲崎さんと共演されていかがでしたか?
梶:実は、レギュラー作品として共演させてもらったのは初めてなんです。年下で後輩ですけど、しっかり……ちゃっかり(笑)している方だなと思いますね。収録スタジオでは隣の席だったんですが、あらゆる面で、自分にはない面白いものを持っている人だなと感じました。あ、あと……すごい結婚ラッシュだったんですよ、この作品!
――たしかに!
梶:この作品の収録中に、洲崎さん、小野賢章くん、小澤亜李さん、小松未可子さんが結婚されて。すごくめでたい作品だと思います!
――本当ですね。じゃあ、次回の洲崎さんにメッセージを!
梶:末永くお幸せに!!
『バック・アロウ』特集 第2回(洲崎綾インタビュー)は1月9日配信予定です。
取材・文=志田英邦